豊中の旧籠池邸が取り壊し。森友学園系列保育園の建物も近日中に解体へ
一昨年、6月19日の大阪地検特捜部による強制捜査、7月31日の籠池夫妻逮捕など森友学園事件報道の際、何度も現場レポートの舞台となった大阪府豊中市の旧籠池邸が取り壊された。
保釈後、5ヵ月で明け渡さざるを得なかった自宅
事件勃発時は籠池夫妻の居宅として利用されていたが、大阪拘置所に勾留されていた2017年7月20日、学校法人森友学園の管財人によって、役員の責任査定を申し立てられる。同年12月6日に大阪地裁が10億3千万円の損害請求権を認めたため、学園側は競売を申請。2018年7月11日に開札され、3千51万円で不動産会社が落札し、9月4日に代金を納付したため所有権が移転してしまう。籠池夫妻は大阪府内に新しい住居を見つけて転居したうえ、12月7日に買い主へ引き渡していた。
筆者は定期的に旧籠池邸の様子を見に行っていた。春先には確かにあった建物が忽然と姿を消していたため、近隣住民に尋ねてみると、
「しばらくは中古物件として売りに出されとったんやけど、買い手がつかんかったんやろうね。4月の半ばくらいから取り壊しが始まった。あいさつに来た業者さんの話では新しく4LDKの家を建てて6千万円くらいで売りに出すんやって」
と教えてくれた。
すでに他人の手に渡ってしまっているとはいえ、籠池泰典・森友学園前理事長にとって家族との思い出の詰まったこの家への愛着はひとしおだったようで、更地となった自宅跡の写真を見せると、
「むごい」
とだけ漏らし、絶句してしまった。
系列幼稚園も人手に渡り、保育園も風前のともしび
籠池夫妻の手から取り上げられたのは自宅だけではない。
森友学園系列の学校法人籠池学園が大阪市住之江区に所有していた土地建物は固定資産税滞納のため大阪市が公売を申し立て、2018年11月27日に売却決定。同年12月14日に引き渡しを余儀なくされた。
また高等森友学園保育園を経営していた社会福祉法人肇國舎は、所有している建物の賃借料未払いのため2018年7月13日、森友学園管財人により建物収去土地明渡請求の訴訟を起こされた。この裁判は2018年12月12日に原告の勝訴で判決が確定。2019年5月9日午前7時以降、いつでも強制執行が出来るような状態となっている。
なにもかも奪われても誇りだけは奪えない
泰典氏は静かに語る。
「すべての資産を失いました。刑事事件の裁判が進行中のため働くこともままならず、夫婦とも収入はありません。差し押さえの可能性があるため年金の受給手続きもしていない。そもそも銀行口座も作れないんですよ。家内が近所の農協窓口で普通預金の口座開設をお願いしたところ、理由も明かさず断られたんです。弁護士先生は抗議してくれましたが暖簾に腕押しでした」
「物質的なもので私から奪えるものはもうありませんからね。やられっぱなしのままでいるつもりもありません。国家がこんな状態のままでいいはずがない。お役に立つためにもう一踏ん張りしなきゃならんなと感じる今日この頃です」
諄子氏は意気軒昂だった。
「家がなくなってしまったのはそりゃ悲しいけど、失ったものをいつまでも引きずってても仕方ない。今は前を向いて生きています。お金? そりゃお財布の中はいつも寂しいもんですよ。でもお金がなくても不思議と生きていけるもの。以前は値札なんか見ることなく買い物してたけど、今はスーパーで半額セールを狙う(笑)。先日は主人が山で採ってきたタケノコが食卓に並びました。この年になってこんな経験が出来るなんて感謝感謝。絶対に負けませんからね」
不思議なほど明るく語る。
3月6日に初公判が行われた2件の詐欺事案は5月29日より大阪地裁にて審理を再開。以降、7月中旬まで週二回のペースで証人尋問が行われる予定である。