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北朝鮮の巡航ミサイル「ファサル1」「ファサル2」

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮・朝鮮中央通信より巡航ミサイル「ファサル」を正面から

 北朝鮮は3月24日、2日前の3月22日に巡航ミサイルの発射訓練を行っていたことを発表しました。地上車両から発射された巡航ミサイルは「ファサル1」×2、「ファサル2」×2で合計4発です。

 東部の咸鏡南道咸興市興南区域鵲島洞から日本海に向けて発射され、楕円および「8」字軌道を飛行して標的の無人島に対して、2種類の巡航ミサイルの各1発ずつを着弾、各1発ずつを高度600mで空中起爆(核弾頭想定)させています。

  • 飛行距離1500km・飛行時間7557~7567秒(約126分)
  • 飛行距離1800km・飛行時間9118~9129秒(約152分)

 発射訓練の目的は「超低高度飛行実験と変則的な高度調節および回避飛行能力を判定する実験」とされており、実際に朝鮮中央テレビで公開された動画からは飛行高度を変化させている様子が映っています。単純に真っ直ぐ飛行するだけでなく地形に沿った超低空飛行が出来るとするなら、巡航ミサイルの中でも高い能力を持っている事が分かります。

 平均速度は時速720~750kmと、他国の亜音速巡航ミサイルが時速800~900kmなのと比べるとやや遅い傾向があります。超低空飛行の割合が多い試験で速度が遅めになっている可能性や、あるいはそもそも発表数値は正直に話しておらず、性能を秘匿している可能性などが考えられます。もしくは燃費重視の設計なのかもしれません。

※ブースター切り離し前の小爆発はおそらくジェットエンジン始動用のスターターの火薬。

巡航ミサイル「ファサル1」(推定)

北朝鮮・朝鮮中央通信より巡航ミサイル「ファサル」
北朝鮮・朝鮮中央通信より巡航ミサイル「ファサル」

巡航ミサイル「ファサル2」(推定)

北朝鮮・朝鮮中央通信より巡航ミサイル「ファサル」
北朝鮮・朝鮮中央通信より巡航ミサイル「ファサル」

 どちらがファサル1でどちらがファサル2なのか北朝鮮からは説明が無いので、ここでは登場時期が早い黒い塗装の方をファサル1、遅れて登場した白い塗装の方をファサル2と推定します。

 2種類のミサイルの塗装以外の外観の差異は、機体下面に装備されたジェットエンジン用の空気吸入孔の部分です。ファサル2(推定)の方が空気の取り入れ口が大きく、しかも長くなっている事が分かります。

 空気吸入孔についてはどちらも固定式のように見えます。仮に空気吸入孔が収納式ではないとする場合、潜水艦の魚雷発射管の直径に収めることが難しくなる可能性があるので、もし収める気なら潜水艦魚雷管発射型が別にまた存在するかもしれません。

 他のファサルの特徴は他国の一般的な亜音速巡航ミサイルとよく似ています。3枚の尾翼はアメリカのトマホークBlockⅣ以降と似ていますし、長方形の単純な形状の真っ直ぐな主翼はロシアの3M-14カリブルに似ています。

ファサル1(推定)の主翼の角度の変遷

北朝鮮・朝鮮中央通信より巡航ミサイル「ファサル」の比較
北朝鮮・朝鮮中央通信より巡航ミサイル「ファサル」の比較

 同じファサル1でも登場時期により細かいバージョン違いがある可能性があります。初登場時は主翼に緩い後退角が付いていたのですが、最近の登場時には主翼は真っ直ぐな状態です。

ファサル1(推定)の謎のストレーキのような部品

北朝鮮・朝鮮中央通信より巡航ミサイル「ファサル」
北朝鮮・朝鮮中央通信より巡航ミサイル「ファサル」

 2023年3月24日の発表写真では、一部のファサルに主翼後方にストレーキ(strake)らしき謎の部品が装着されているものがあります。しかし装着されていないファサルの写真も同時に発表されているので、一体何なのかよく分かっていません。そもそもストレーキとしては主翼の後方に付ける意味がよく分からないので、別の用途の部品の可能性もあります。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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