人間力とは何か:文科相が「人間力判断する入試を」
■文部科学大臣「人間力を判断する入試を」
この報道を受け、ツイッターなどネット上で様々な意見が出ていますが、「人間力」は、しばらく前から使われている言葉です(この数年あまり使われていなかったようですが)。
■人間力とは(人間力の定義、意味)
そのまま読めば、人間が持っている力ですね。
経済財政諮問会議が2002年に答申した「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」に、「6つの戦略」として、1人間力戦略、2技術力戦略、3経営力戦略、4産業発掘戦略、5地域力戦略、6グローバル戦略として、「人間力」が登場しています。
内閣府では、心理学者である市川伸一先生(立派な先生です)を座長とする「人間力戦略研究会」があり、2003年に『人間力戦略研究会報告書 : 若者に夢と目標を抱かせ、意欲を高める : ~信頼と連携の社会システム~』を発表しています。
この報告書は、人間力の意味をこう説明しています。
そして、人間力をこう定義しています。
「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」
何だかよくわかりませんが、この報告書では、あえてあいまいな定義をしたようです。
「人間力という用語を導入することによって、「教育とは、何のために、どのような資質・能力を育てようとするのか」というイメージを広げ、さらにそこから具体的な教育環境の構築が始まることにこそ意義があるのである。」
■さらに詳しい人間力の定義
上記の報告書は、さらに具体的な解説をしています。
1「基礎学力(主に学校教育を通じて修得される基礎的な知的能力)」、「専門的な知識・ノウハウ」を持ち、自らそれを継続的に高めていく力。また、それらの上に応用力として構築される「論理的思考力」、「創造力」などの知的能力的要素
2 「コミュニケーションスキル」、「リーダーシップ」、「公共心」、「規範意識」や「他者を尊重し切磋琢磨しながらお互いを高め合う力」などの社会・対人関係力的要素
3これらの要素を十分に発揮するための「意欲」、「忍耐力」や「自分らしい生き方や成功を追求する力」などの自己制御的要素
そして、
「これらを総合的にバランス良く高めることが、人間力を高めることと言えよう」と述べています。
たしかに社会の中で強く生きていくためには、読み書き計算などの学力が必要だし、みんなと上手くやっていく人間関係能力が必要ですね。
■私が思った「人間力」
今回、ネットで話題になっていたので調べましたが、「人間力」とは、学力を無視したものではなかったのですね。私が「人間力」と聞いたときに思ったのは、「人間以外の動物にはない、人間の力」として人間力です。
ということで、
「抽象的概念を操作する力」
動物もとても賢く行動することはありますが、動物たちの行動は具体的です。愛とは何か、自由とは何かといった哲学的なことや、数学的なことがらなど抽象的な概念をいじくりまわして議論することはありません。目に見えない世界に散らばっている仲間たちのことを考えて、自分の生きる方向を決めたり、悩んだりはしません。
「おせっかい行動」
動物たちも援助行動(仲間を助ける行動)は行います。目の前の仲間を助ける、食べ物を分けることなどもします。しかし、援助を必要としているようには見えない仲間を助けることはできません。
これができるのが人間です。真夜中に楽しそうに笑いながら、盛り場をうろついている少年に、「早く帰ったほうがいいよ」と言えるのが人間です。「全然大丈夫です。平気です」と言っている人を、陰ながら支えられるのが人間です。
それから、
「個性」
動物にも「個体差」はあります。けれど、人間ほどバラエティーに富んではいません。ライオンはライオンだし、羊は羊です。でも、人間は様々な生き方をしています。簡単にどれがいいとは言えません。いろんな人がいて、複雑な社会を作っていて、それで人間たちは生き続けてこられています。
知力の高い人低い人、直感やフィーリングが好きな人嫌いな人、体力のある人ない人、人間関係が器用な人や不器用な人、繊細な人に大胆な人。それぞれ支えあっています。
私も、もっと人間らしくなるように、人間力を鍛えたいと思います。
(といっても、大学入試では、すでに一般入試のほかに「推薦入試」「AO入試」等いろいろ行われているますが、人を選ぶというのは難しいものですね。)