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中国の人々の一部はなぜロシアのプーチン大統領を熱烈に支持するのか?

中島恵ジャーナリスト
ロシアのプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

ロシアのウクライナ侵攻から1カ月以上が経過し、戦況は厳しさを増している。欧米を始め日本でもロシアに対する批判は高まっているが、ロシアと外交などで近い関係にある中国だけは異なる。

中国はロシア支持を明確に打ち出しているわけではないが、一般の中国人の中にはロシア、とくにプーチン大統領への支持をSNSなどで声高に叫ぶ人が少なくない。その理由は一体何なのだろうか。

中国国内にいる人と意見が合わず

3月下旬、ある在日中国人と話をした際、その人は中国国内に住む友人数人のSNSをやむを得ずブロックしたと教えてくれた。理由はSNSのグループ内でのケンカだ。

日本やアメリカなど海外に住む中国人はロシアのウクライナ侵攻を批判しているのに対し、中国国内に住む友人らの一部はロシアを擁護。SNS内での舌戦の末、考え方の違いをどうしても受け入れることができず、友だちとの関係を解消したという。

その人の話から、私は中国国内には少なからずプーチン支持派やロシア支援派がいて、しかも一部の人はかなり熱狂的にプーチン氏に好意を抱いたり、支持していることを知った。

中国の大手メディアは基本的にロシア寄りの報道を行っているため、その影響でロシア支持を表明しているという人もいるが、在日中国人の友人によれば必ずしもそうではなく、多くの人は国際政治の詳しい状況を深く理解した上で支持しているわけではないという。

ただ、これまでの経緯からロシア支持の気持ちを持ったり、プーチン氏個人のキャラクターに好意を持ったりしているという。

具体的にはどういうことなのか。中国のSNS上にあるプーチン支持者の声や、海外事情にも精通している中国国内の人に聞いてみると、彼らがプーチン氏にとくに好意を抱く理由がわかった。

反米感情がロシアへの仲間意識に

1つ目はトランプ大統領以降、中国人のアメリカへの反米感情が非常に高まっており、それが同じくアメリカと敵対関係にあるロシアへの同調や支持、仲間意識につながっているという点だ。

西側の見方とは異なり、ロシアはアメリカなどに追い詰められた結果、今回の侵攻に踏み切らざるを得なかったのだ、というように見ていて、ロシアと自分たち(中国)を「西側からいじめられている被害者同士」として重ね合わせているという。

それがプーチン氏支持、ロシア支持につながっている。

カリスマ性や強いリーダーシップが魅力

2つ目の理由はプーチン氏の外見の魅力やカリスマ性だ。中国のSNSの中にはプーチン氏を「普京大帝」(プーチン大帝)と呼んで尊敬し、熱烈に彼の個人的魅力を語っている人もかなりいる。

たとえば柔道などで鍛えあげたマッチョな身体、乗馬する姿などに(とくに女性は)魅力を感じたり、労働者階級から現在の地位まで、自分自身の力で上り詰めた経歴にも「金持ちの2代目ではない」と尊敬の念を抱いたりしているという。

さらに、「強いリーダーシップ」を魅力として挙げている人も多い。

筆者はこれまでも中国人への取材を通して、彼らが好むリーダー像を聞いたことが何度かあるが、中国人が共通して惹かれていたのは「強いリーダーシップ」がある人だった。

毛沢東のときもそうだったし、現在の習近平国家主席も強いリーダーシップがあるという点で、中国国内では人気がある。

10年以上前、日中関係が悪化して中国国内で反日デモが起きたとき、中国の若者に取材してみたことがあったが、彼らの間から「小泉純一郎首相は日本人にしては珍しく強いリーダーシップがあり、キャラが強いから好きだ」という意外な意見があり、とても驚かされた。

中国とロシアとの深い縁

これら大きく2つの理由でプーチン氏への支持が高まっている。さらに加えていえば、中国の北京や東北部などは歴史的経緯からロシアへの親近感を持っている人が以前からいたことも背景としてあるだろう。

北京にはロシア人街があり、ロシア料理の店も多いし、日露戦争の舞台となった大連市などもロシアと縁が深く、ロシア風建築物も多数ある。

ロシアのウクライナ侵攻後、中国のネット通販ではロシア製品を購入する人が続出したこともあり、「ロシア加油(がんばれ)」という中国人が一定数以上いることがわかる。

ロシア問題のあとは、中国と台湾の問題が浮上するといわれており、国際社会での中国の立ち位置に注目が集まっている。だが、国民の間からプーチン氏を支持する声が大きいことからも、彼らの国には、西側の報道から見ているだけではわからないことが多いのだ、ということがわかるだろう。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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