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健康維持には「お餅」を最後まで我慢。「野菜→おかず→炭水化物」がベストの食順

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

いよいよ正月休みが始まります。お節料理とお餅の季節ですね。

この正月料理、食べる順番によって血管への影響が異なるのはご存知ですか?

結論を先に言えば、「野菜→おかず→炭水化物」の順番で食べるのが、血管にとってはベスト。なのでお餅をいただくのは最後です。

京都女子大学・特任教授の今井佐恵子氏のチームが2021年に発表した研究をご紹介します [文末文献1] 。

食後の血糖値が過度に上がると血管が痛み、心筋梗塞などのリスクも上昇

今井氏たちが着目したのは、食事後の「血糖値」です。

食事を摂れば食べ物の中の糖が吸収され、血液中の糖濃度(血糖値)が上がります。

それ自体は正常な現象なのですが、この食後の血糖上昇が大きすぎると(食後高血糖)、血管が傷ついてしまうのです。

具体的には、血管の一番内側にある、血管を健康に保ち、また血液が固まらないよう働きかける「内皮」と呼ばれる細胞の機能が、高血糖で低下します(血管は不健康になり、血が固まりやすくなる)[文末文献2]。

その結果、食後の血糖値が高くなる人はその後、心筋梗塞や脳卒中など、血管の不調による疾患を引き起こしやすいことが明らかになっています [文末文献3] 。

であるなら、食後の血糖値は上がらない方が健康的。

でも食事の種類を限定されるのは嫌ですよね。

心配はご無用。同じ食事でも食べる順番を工夫すれば、血糖値の上昇を抑えられるのです。

臨床試験で食後血糖値の上がらない食順を探索

今井氏たちは学生ボランティア19名に、同じ栄養価の食事を日替わりで「炭水化物→肉・魚→野菜」「野菜→肉・魚→炭水化物」「肉・野菜→炭水化物→野菜」の順番で食べてもらい、食後の血糖値を測定しました。

すると食後の血糖値が最も低かったのが、「野菜→肉・魚→炭水化物」という食順でした。逆に最も高かったのは「炭水化物→肉・魚→野菜」です。

なぜ野菜から食べ始めると食後の血糖値が上がりにくいのでしょう?

今井氏たちは、食物繊維が糖の吸収を遅らせている可能性を挙げています。

食事の30分前にトマトジュースを飲むという手も

いかがでしたか?食事は野菜から食べ始め、炭水化物は最後に摂ると、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める「食後血糖の大きな上昇」を防げるという研究のご紹介でした。

正月の食事も、まずお節料理の野菜(煮物など)をいただき、次は焼き物、お餅はそのあとにした方が良さそうです。

とは言え「正月だから餅から食べたい!」という方もいらっしゃるでしょう。

そこで隠し技を一つ。

食事の30分前にコップ一杯のトマトジュースを飲んでください。そうすれば炭水化物を食べてもある程度、血糖上昇は抑えられます [文末文献4]。これも今井氏たちが見出しました。

食事と血糖値については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 野菜→肉・魚→炭水化物」の順で食べると食後の血糖上昇を抑えられる [日本語]
  2. 高血糖で血管は不健康に
  3. 摂食後血糖値上昇が大きな人は、その後、心筋梗塞や脳卒中になりやすい
  4. 炭水化物摂取30分前のトマトジュースで血糖上昇を抑制できる

本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁(含筆名)。日本医学ジャーナリスト協会会員。

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