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渡辺棋王防衛か、永瀬王座反撃か――第47期棋王戦五番勝負第3局渡辺明棋王-永瀬拓矢王座戦展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
10連覇まであと1勝としている渡辺明棋王(筆者撮影)

 渡辺明棋王(37)=名人に永瀬拓矢王座(29)が挑戦する第47期棋王戦五番勝負(共同通信社主催)は第2局まで終え、渡辺棋王が2勝0敗と10連覇まであと1勝としている。第3局は3月6日、新潟県新潟市「新潟グランドホテル」で行われる。

 勝敗と展開を、データを基に予想してみた。

<棋王戦五番勝負これまでの結果と日程>

第1局 2月6日 静岡県焼津市「焼津グランドホテル」

渡辺棋王(後手)勝ち

第2局 2月19日 石川県金沢市「北國新聞会館」

渡辺棋王(先手)勝ち

第3局 3月6日 新潟県新潟市「新潟グランドホテル」

第4局 3月20日 栃木県日光市「日光東照宮」

第5局 3月30日 東京都渋谷区「東郷神社」

復調の渡辺棋王と安定感の永瀬王座

<渡辺棋王の最近10局>

12月24日 竜王戦1組

対豊島将之九段 ○(持将棋指し直し)

1月9、10日 ALSOK杯王将戦七番勝負第1局

対藤井聡太竜王 ●

1月15日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対菅井竜也八段 ●

1月22、23日 ALSOK杯王将戦七番勝負第2局

対藤井竜王 ●

1月29、30日 ALSOK杯王将戦七番勝負第3局

対藤井竜王 ●

2月2日 竜王戦1組

対八代弥七段 ●

2月6日 棋王戦五番勝負第1局

対永瀬王座 ○

2月11、12日 ALSOK杯王将戦七番勝負第4局

対藤井竜王 ●

2月19日 棋王戦五番勝負第2局

対永瀬王座 ○

2月25日 ヒューリック杯棋聖戦本戦

対島朗九段 ○

<永瀬王座の最近10局>

1月16日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対阿久津主税八段 ○

1月16日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対藤井聡太竜王 ○

1月28日 叡王戦予選

対郷田真隆九段 ○(千日手指し直し)

1月28日 叡王戦予選

対佐藤天彦九段 ●

2月4日 順位戦A級

対羽生善治九段 ○

2月6日 棋王戦五番勝負第1局

対渡辺棋王 ●

2月19日 棋王戦五番勝負第2局

対渡辺棋王 ●

2月23日 朝日杯将棋オープン戦準決勝

対稲葉陽八段 ●

2月28日 竜王戦1組

対松尾歩八段 ○

3月3日 順位戦A級

対山崎隆之八段 ○

 開幕前の渡辺棋王は5連敗を含む黒星先行で、今回の五番勝負も苦戦が予想された。だが、星取りを見るとわかるように黒星のほとんどは藤井竜王(王位・叡王・王将・棋聖)との対戦でその点は割り引いてみなければならない。直近10局は4勝6敗の負け越しも、シリーズが始まってからは徐々に復調してきたようだ。

 永瀬王座の直近10局は6勝4敗と安定した星取り。直前の順位戦A級では5勝4敗と勝ち越して来期の順位を3つ上げ、竜王戦1組もベスト4に進出し本戦出場まであと1勝としている。また1月の朝日杯準々決勝で藤井竜王に勝っている点も高く評価できよう。

 総合すると調子の比較では永瀬王座がわずかにまさると見る。

相性の良さで渡辺棋王優位は不動か

 戦型は第1局で角換わりの出だしから後手の渡辺棋王が角道を止め雁木模様に変化した。最近のデータでは永瀬王座は先手番でよく似た進行の序盤を多く指しており、第3局も雁木含みの力戦相居飛車になる可能性は高いだろう。

 過去23局の直接対決は渡辺棋王が18勝5敗(2千日手)と圧倒しており優位は動かしがたい。ただし「負けない将棋」や「根絶やし流」のニックネームで知られる永瀬王座の勝負への執着心は棋界随一。先手番で一矢報いればガラリと風向きが変わるかもしれない。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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