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農民多数を"生き埋め"放置…金正恩「処刑部隊」の冷血行為

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

 北朝鮮の協同農場が営農資金を作るため「現金稼ぎ組」の運用に力を入れていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。動員された農場員たちは海に出て漁をしたり、金鉱で金を掘ったりしているが、その中で痛ましい事故が発生しているという。

 黄海南道(ファンヘナムド)のある住民はRFAに対し、「農場では農業に必要な資金を確保するために、各作業班から一部の農場員を選抜して金鉱や海に送って金稼ぎをさせている」と説明。さらに、「現金稼ぎ組はひとつの作業班35人の中から通常4~5人を選抜して構成する」とし、「現金稼ぎ組は肥料や農薬の購入費用、上級機関の幹部接待資金まで含め、1人当たり月平均で500中国元(1万円)を稼がなければならない」と話した。

 そして、「7月初めに擁津(オンジン)郡の協同農場で選抜された二つの現金稼ぎ組の計10人が、保衛部が運営する現地の金鉱に投入された」という。

 保衛部は、公開処刑や政治犯収容所を運営する秘密警察だが、組織の運営資金や上層部への上納金を稼ぐため、金鉱など様々な営利部門を持っているのだ。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

 だが、前出の住民によると、保衛部が所有する金鉱は金脈を探しにくく、坑道が深くて危険なため、鉱山労働者たちも入ろうとしないのだという。そして先月、とうとう坑道が崩壊して10人の農場員全員が死亡したのだ。

「しかし金鉱を所有する保衛部は、『農場員たちが自ら望んで入った』として放置し、何らの補償も行っていない」(住民)

 住民によれば、死亡した農場員の中には生まれたばかりの赤ちゃんのいる30代の男性も含まれており、周囲の涙を誘っているとのことだ。

 住民はまた、「国家が当然供給しなければならない営農資材をまったく保障してくれないので、農場では仕方なく現金稼ぎの組を組織している」とし「畑仕事が本業であるはずの農場員が、なぜ金鉱で死なねばならないのか」と語っている。

 一方、別の消息筋は「農場はどうにか営農資金を用意し、収穫を増やすために死力を尽くしているが、今年の農業生産の見通しは明るくない」とし、「農業に対する国家の支援と対策がない状況で、農場員たちは仕方なく現金稼ぎに乗り出した。苦労を重ねるだけ重ね、命の危険にまでさらされる農場員たちのため息が深まっている」と強調した。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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