国と地方の役割分担の明確化で14兆1千億円の行政経費削減を目指す(後編)~検証結果~
本記事では、国と地方の役割分担を明確にすることで、14兆1千億円の行政経費削減が目指せることを提言し、前号に続き、削減内容と検証結果を記します。
前号:
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/40d7b87cdd27664cac0eba4817deb79978347072
1.14兆1千億円の削減内容
地方自治体における全ての事務・事業を行政と個人、国と地方、都道府県と市町村の役割分担に基づいて再検証を行い、役割分担を明確化することで以下のものが削減検討できる。
(1)「都道府県と市町村」が税を投じてサービスをすべきでない事業、ようするに個人の責任であり、官の民に対するサービスとして過剰であるものとして「廃止」すべき事業(官と民の役割分担)・3兆5,518億円(行政経費削減額・個人の責務に帰するサービス)
(2)行政の関与が必要だが事業の実施は民間が担当すべき事業・5兆1,520億円(事業の民間開放)
(3)市と県の事業の重複などをなくして合理化出来る事業・3兆8,278億円
(4)補助金の廃止や補助金から地方への財源移譲による削減金額・1兆5,637億円
※前号の削減効果算定額ルール及び明確化基準(クリアーテスト基準)を参照
2.検証モデルについて
以下の理由から「埼玉県(人口707万人)」「埼玉県草加市(人口23万人)」を検証モデルとした。※記載の人口はいずれも当時
(1)各事務・事業が説明資料と共に公開されていること
(2)行政改革がなされていてスリムな行財政運営を行っている(検証モデル県・市の削減効果額を全国規模に概算するため作業結果に基づく推計数値が過大とならないよう先進的自治体をモデルとしている)
(3)自然条件などに特殊要因が少なく国への財政依存度も比較的低く、標準的な自治体と見ることが出来ること
3.役割分担明確化の推進
(1)平成18年6月の行政改革推進法は「効率的で簡素な行政体の実現を目的」としているが、このことは役割分担明確化を国として実現することを法律で明らかにしたものと捉えている
(2)役割分担の明確化は住民の受益と負担のあり方、国と地方自治体・都道府県と市町村の役割分担も明確にすることであり、国民の痛みを伴わない財政の創出でもある
(3)早期に国が地方と共同し「実務者を中心とした役割分担の明確化」に取組むことを切に願うものである
4.先送りを続ける我が国の行政システム「行政課題等における2023年(現時点)と2007年(16年前)の近似性」
(1)自治体事業における「役割分担の明確化」は16年前に行ったものだが、財政の悪化や少子高齢化など現代の問題点と余りにも似ていることに驚愕しています。言い換えると16年前に問題を提起した少子高齢化の加速や財政環境の悪化を放置したまま、現在に至っている
(2)現政府が解決を目指している「少子化対策」ひとつとってみても、16年前から現在まで解決の糸口さえつかめていない状況にある
(3)当時課題となっていた「いじめ問題」の解決も同様で、現在も解決すべき課題として続いている。20年前に訴えた「小中学校における教員派遣制度の廃止と改革」も同様に現在も解決されていない。(『教育委員会廃止論』弘文堂・穂坂邦夫著)
5.役割分担明確化は様々な問題を解決する手段として、「抜本的な解決策」に直結する。しかも実務的な作業によるものであり、結果は明確に証明されます。我が国の様々な課題を解決するためには政治がリーダーシップを発揮し、「真正面」から「抜本的改革」に取組むことが求められているのではないだろうか。
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