MLBの短縮ドラフト実施決定で全米大学体育協会が大学アスリートの救済措置を発表
【NCAAが新型コロナウイルスの影響でルール変更】
全米大学体育協会(NCAA)は現地時間の3月30日、ディビジョン1(いわゆる1部リーグ大学)評議会を開き、新型コロナウイルスの影響を受けた学生アスリートを対象に、活動期間のルール変更を決めた。
詳細はNCAAの公式サイトに掲載されている。現行ルールでは、NCAA加盟大学に所属するアスリートは、5年間の在学と4年間のアスリート活動期間(公式戦出場許可)が与えられているが、今回のルール変更で春季シーズンの競技に携わるアスリートのみ、もう1年の活動期間を与えることになった。
NCAAでは春季シーズンの競技が新型コロナウイルスの影響で相次いでキャンセルになっており、今回のルール変更はそうしたアスリートの救済措置といえるものだ。
【ドラフト漏れの選手も大学残留が可能に】
今回のルール変更で、最も救われる存在になったのが野球選手たちだ。
週末にMLBと選手会が2020年シーズンの運営方針について合意し、今年のドラフトは1ヶ月間ほど延期される可能性があり、さらに通常の40巡目指名から5巡目指名に短縮されることが決定していた。
つまりドラフト上位指名候補選手以外は、多くの選手たちも指名から漏れてしまうことになる。ドラフト以外でもMLBチームと契約することは可能だが、その場合は契約金が2万ドル(約220万円)以内という制限がかかってしまう。
高校生選手の場合は指名漏れしても、奨学金を得るなどして大学に進学したり、また無試験で入学できるコミュニティカレッジ(2年制大学)に回り、2021年以降のドラフト指名に期待することができる。
しかし活動期間4年目を迎える大学生選手たちが行き場を失う可能性が高かったため、そうした選手たちが特例としてもう1年活動期間を与えられることで、新たに大学に残留できる選択肢が加わったというわけだ。
【フットボール、バスケは対象外】
繰り返すが、今回のルール変更の対象者は、春季シーズンの競技に携わるアスリートのみだ。NCAAではほとんどの競技がシーズン制をとっており、例えばフットボールは秋シーズン、バスケットボールは冬シーズン、野球は春シーズン──に分かれている。
フットボールはシーズンが完了しているし、バスケットボールもシーズン終盤が中止に追い込まれたものの、大半のスケジュールを消化しているため対象外になっている。
【海外リーグに流出する可能性も】
だがルール変更を利用して大学に残ったとしても、MLBは2021年のドラフトも20巡目指名に留める方針を打ち出しており、彼らを待ち受けているのはやはり厳しい現実なのかもしれない。
これまでドラフト指名から漏れた大学生選手たちは、プロの道を諦めるか、独立リーグに回りそこからMLBチームとの契約を目指すかの道を選ぶしかなかった。しかし40巡までに指名を受けないということは、それだけ高い評価を受けていたわけではないので、ある意味仕方がないことだといえる。
ところが今年、来年に関しては中間クラスの評価を受ける選手たちがドラフト指名から漏れることになり、そうした選手たちがプロを目指し日本や韓国、台湾などの海外リーグに挑戦する可能性も十分にあるだろう。
今こそNPB各チームは、米国のアマチュア選手にも目を向けるべき時なのかもしれない。