レトロゲームで人気のファミコン 本当に売れてる? 一番人気のソフトは…
近年、任天堂の「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」や「スーパーファミコン」など、昔の家庭用ゲーム機「レトロゲーム」の人気が高まっているとされていますが、実際はどうなのでしょうか。さまざまなジャンルの中古販売を展開する「ブックオフ」を運営するブックオフコーポレーションに、レトロゲームについて聞きました。
◇レトロゲームの人気を受けて互換ゲーム機も
「レトロゲーム」は、昔のもの・古いものを好む……を意味する「レトロ(retrospective)」のことで、昔の家庭用ゲーム機・携帯ゲーム機を指しますが、定義はあいまいです。20年前(ぐらい)のゲームという考えもあるでしょうが、「20年前の根拠は?」というと、答えに困ったり、意見が割れたりするのではないでしょうか。
レトロゲームについてブックオフの現状の扱いは、ファミコンやスーパーファミコン、ニンテンドウ64、セガサターン、ドリームキャストなどは入っていますが、初代プレイステーションは現時点で「レトロゲーム」に含めていないそうです。カセット型のゲーム機、家庭用ゲーム機事業から撤退したゲーム機としています。これも一つの考え方ですね。
個人的には、手に取って遊ぶ人がぐっと減る二世代前より、もう一つ古い「三世代前」のゲーム機が「レトロゲーム」の線と考えていますが、皆さんはどうでしょうか。今後、誰もが一応の納得がいくレトロゲームの定義ができると良さそうです。
ブックオフがファミコンのソフトに力を入れたのは、2~3年前。一部の店舗でレトロゲームのコーナーを設置したところ売り上げが伸びたのです。今年の売り上げ点数は8月末の時点で前年に迫る勢い。売上額や点数などの数字は明かせないそうですが、扱う商品の比率はファミコンとスーパーファミコンが抜けています。ファミコンのソフトが中古市場で人気があるのは、データからも「本当」というわけです。
ファミコンとスーパーファミコン用ソフトの人気を受けて、ブックオフは、ファミコンやスーパーファミコンのソフトが遊べる互換ゲーム機(3980円、6980円)を12月から発売する予定です。
同社のブックオフ商品部ソフトグループの稲森達也さんは「他社の互換ゲーム機も販売していたが、ある程度高額な商品になる。また昔に比べて多様な互換機が出てない面もある。我々がニーズにあったと判断した製品の方が、妥当な価格で出せるのでは」と話しています。
◇レトロゲームの市場規模は
レトロゲームの定義が定まっていないこともあって、市場規模の算出は簡単ではありませんが、中古ゲームというくくりでは参考になるデータがあります。
環境省の「リユース市場規模調査(令和3年度)」によると、中古ゲームの2020年の市場規模(ゲーム・メディア)は約1045億円です。また「リユース市場データブック2023」(リサイクル通信)によると、2022年の「中古ゲームメディア」の市場規模は1074億円で、どちらも似た数字になります。
そして「ゲーム産業白書2023(メディアクリエイト)」によると、2022年の中古ゲーム市場は、ゲーム機とソフトの合計で約470億円。同データは、ファミコンやスーパーファミコンなどは含まれず、PS3やニンテンドー3DSより新しい中古ゲーム機・ソフトになります。ブックオフの中古ゲームの販売点数の比率を元に推察すると、概ね想定内の数字になりますね。
ゲーム業界団体のコンピュータエンターテインメント協会が発行する書籍「2023 CESAゲーム白書」によると、新品のゲーム機とソフトの国内市場規模(2022年)は約3770億円。比較すると中古ゲーム市場の規模も、その中にあるレトロゲームの市場もビジネスの可能性がありそうです。
◇若い世代にも需要 海外観光客にも人気
レトロゲームですが、ブックオフの実際の客層はどうでしょうか。
予想通り男が圧倒的だそうです。年齢を見ると、30~40代のファミコン世代だけでなく、Z世代などの若い層にも受け入れられているそうです。なぜファミコンをした経験のないであろう、世代にも需要があるのでしょうか。
稲森さんは「ドット絵をあまり見慣れていなくて、新鮮に受け入れられていること、現行のゲーム機にないエモさ(感傷的になる)を感じているのかもしれません。またSNSで話題になったり、YouTuber(ユーチューバー)のゲーム実況を見て、興味を持っているのではないでしょうか」と分析しています。
またレトロゲームは、「日本のお土産」として、海外の観光客の需要もあると言います。ソフトだけでなく、ゲーム機ごと買うケースもあるそうです。
近年は、高額で売買されたレトロゲームが話題になりますが、当時の流通量が少ないソフトの値段が上がる傾向にあるとのこと。逆に知名度のあるソフトは妥当な価格で取引されるといいます。もっと昔であれば、ファミコンのソフトが1つ100円で売られていた時代もあったのですが、今や昔の話。レトロゲームの価格は、昔よりも確実に上がっている……とのことでした。
◇レトロゲームの一番人気はスーパーマリオ 理由は…
ブックオフの基準では、取り扱うソフトの価格が1万円を超えると「高い」という認識になるそうです。例えば、スーパーファミコン用ソフト「レンダリング・レンジャーR2」が約8万円で取引されたそうです。ちなみに同ソフトは「箱あり」であれば、30万円になるとか。箱の状態、説明書もそうですが、当時封入していたハガキの有無も、価格に影響するそうです。
なおブックオフで最高額の取引ソフトは、ネオジオ用ソフト「ブレイジングスター」で66万円だそうです。
そしてブックオフで最も売れているレトロゲームも尋ねました。一番人気はファミコンの「スーパーマリオブラザーズ」で、頭一つ抜けているとのこと。同作はプレーするだけなら、任天堂のオンラインサービスで遊べてしまうのになぜでしょうか。稲森さんは「(現物を)手元に置いておきたい考えがあるのでは」と推測しています。さすがに国内だけで600万本以上売れた超人気ソフトだけあります。
他では「ドラゴンクエスト」シリーズも人気だそうで、一番人気は「4」。次に「3」、続いて「2」だそうです。知名度の高いソフトは、レトロゲームでも多くの人たちに人気なのです。
ブックオフは、人気のあるファミコンやスーパーファミコンのソフトを中心に、レトロゲームの売り場を充実させる考えです。ファミコンのソフトなどを店内に展示すると、通りがかった家族連れが「懐かしい」と反応することもあるそうで、来店した人の顧客満足度もアップも見込めるでしょう。レトロゲームは、今後も注目を集めそうです。