英国オックスフォード大学、人文科学研究機関設立「AIにおける倫理」注力:ブラックストーンCEOが寄付
英国オックスフォード大学は人文科学の研究機関を設立することを明らかにした。投資会社ブラックストーンのCEOスティーブン・シュワルツマン氏が1億5000万ポンド(約200億円)を寄付して設立。シュワルツマン氏はユダヤ系アメリカ人で、オックスフォード大学以外にもマサチューセッツ工科大学など多くの大学に寄付しており、個人からの寄付としては、オックスフォード大学史上最大の金額。研究センターの名前も「シュワルツマン・人文科学研究センター」と名付ける。
21世紀における喫緊の課題がAI
シュワルツマン・人文科学研究センターでは、文学、歴史、哲学、倫理、音楽、芸術など人文科学分野の幅広い領域の研究を行っていく。講堂や音楽ホールも新設。その中でも、人工知能(AI)における倫理研究に注力していく。オックスフォード大学では「人文科学の探求は21世紀の社会における根本的な課題と直面しており、社会における様々な対立の解消にも役立つ。その中でも最も喫緊の課題がAIの登場とAIが社会に与えるインパクトだ。我々の日常生活、健康、仕事などAIによって大きく変わっていく。AIにおける倫理を研究することは非常に重要。30年前に医療における倫理についての問題が登場した時に人文科学は、医療における倫理分野でのフレームワーク形成に多いに役立った。これからはAIにおける倫理の問題を探求していく必要がある」とコメント。
AIにおける倫理研究についてシュワルツマン氏は「AIについて研究していくことは、これから将来にわたって非常に重要なことである。AIの科学技術としての研究は進んでいるが、AIの導入によって失業者も増加してきて、社会が崩壊していくかもしれない。誰もそのような社会は望んでいない。AIにおける倫理の研究は我々の時代におけるもっとも重要な問題の1つだ。オックスフォード大学は約1000年にわたって、人文科学の研究を行い、西洋文明の知識の中核となってきた。その深い洞察力と研究原理を現代のダイナミックな社会にも適応してく必要がある」と語った。
文学、歴史、哲学、倫理、音楽、芸術など人文科学は人間の根幹を形成する学問であり、AIの導入による社会の変化における倫理や哲学の重要性は増してきている。最近ではAIの発展に伴い自律型殺傷兵器、キラーロボットの登場によって、人間が判断しないでロボット自身が判断して人を殺害する、つまり従来のように人間が人間を殺すのではなく、ロボットに人間が殺されるようになることを倫理と哲学の観点からの議論が進められようとしている。
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