従来型のPGからの脱皮を目指す大阪エヴェッサ・伊藤達哉の内なる変化とその覚悟
【勝利した2試合でMOGに選ばれた伊藤選手】
昨シーズンは26勝15敗の成績を残しながら、新型コロナウイルスの影響でシーズンが中断し、チーム初のチャンピオンシップ進出を逃していた大阪エヴェッサ。昨シーズンの中心選手6人を残し大幅入れ替えを断行して臨んだ2020-21シーズンだが、シーズン第3節を終え2勝4敗とスタートにつまずいている。
ただここまでのチーム状態は、決して盤石ではなかった。まずシーズン開幕前に、天日謙作HCが病気療養のため当面はチームから離脱することが明らかになった。
さらに新加入の角野亮伍選手、エリエット・ドンリー選手、駒水大雅ジャック選手はBリーグ初参戦で経験不足の若手選手で、さらにDJ・ニュービル選手とギャレット・スタツ選手の外国籍選手も新型コロナウイルスでチーム合流が遅れ、チームとしての準備がままならない中で開幕を迎えていた。
そんなチームにあって、勝利した2試合でマン・オブ・ザ・ゲーム(MOG)に選出されたのが、伊藤達哉選手だ。いずれの試合も伊藤選手が、日本人選手最多の得点を記録している。
【シュート数が昨シーズンの45%増】
今シーズンの伊藤選手は、開幕から明らかにプレースタイルが変化している。スピード感溢れるドリブルと激しいディフェンスはこれまで通りだが、積極的にシュートを狙いにいく姿勢が際立っている。
昨シーズンは30試合で10本以上シュートを放ったのは7試合に止まっていたが、今シーズンはすでに3試合を数える。特に今シーズン2勝目を挙げた10月18日の京都ハンナリーズ戦では、チーム最多の16本のシュートを放っている。
その変化はデータの上でも明らかだ。昨シーズンの1試合平均のシュート数は6.77本だったの対し、今シーズンはここまで9.83本。約45%も増加しているのだ。
シーズン開幕戦となった広島ドラゴンフライズ戦で17得点を記録した伊藤選手は、試合後に以下のような発言をしている。
「自分の持ち味はドライブと周りを生かすプレーというのが一番なので、そこはぶらさずに…。ただ自分のシュートが入ることによって強いチームになれるし、勝てる可能性も上がってくると思うので、今シーズンは積極的に狙っていきたいなというのがあります」
【典型的な日本人PGからの脱皮】
洛南高校から東海大学とバスケットの強豪校で鍛え上げられた伊藤選手は、ある意味典型的な日本人PG(ポイントガード)といえるだろう。
本人も語っているように、コート中を縦横無尽に走り回り、周りの選手を生かすことがPGとしての最大の役割だという意識が強く、これまで得点へのこだわりが強かったわけでない。
そんな伊藤選手が今シーズン見せている姿勢は、従来のプレースタイルから脱皮し、選手としての幅を広げようとしているからに他ならない。そして若手選手が増えたチームの中で、率先して牽引していく立場になったという自覚でもあるのだろう。
だが長年懸けて築き上げたプレースタイルを変えるのは容易なものではないし、ただ闇雲にシュートを打ち続ければいいというものでもない。試合の流れを考えながら、絶好のシュート機会を見極める能力も養っていかねばならない。
【チームに加わった素晴らしい教材】
そんな伊藤選手の思いに呼応するかのように、彼にとって素晴らしい教材となり得る、攻撃型PGのニュービル選手がチームに加わった。デビュー戦となったシーズン第3節の京都戦2試合で43得点を記録し、素晴らしい得点能力を披露している。
ニュービル選手のような攻撃型PGは、チャンスがあれば積極的にシュートを狙い続け、相手ディフェンスを自分に引き寄せると、今度は周りの選手を生かし始める。まさに伊藤選手が目指すプレースタイルといえるだろう。
今シーズンはそんなニュービル選手のプレーを間近で観察し、しかも練習では実際にマッチアップしながら肌で体感することもできる伊藤選手。今シーズンの更なる飛躍に期待したいところだ。