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シーホース三河新加入のカイル・コリンズワースはNCAAのトリプルダブル通算記録保持者だった!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
シーホース三河に新加入したカイル・コリンズワース選手(右・筆者撮影)

【ようやく戦力が揃ったBリーグ各チーム】

 リーグ創設から5年目を迎えたBリーグ。新型コロナウイルスの影響で様々な制限を受ける中でのシーズン開幕となったが、ここまでシーズン第4節が終了し、すべての試合がトラブル無く実施されている。

 ただ新型コロナウイルスの影響はチーム編成にも大きく影響し、隔離措置等で外国籍選手のチーム合流が遅れるなど、多くのチームが、予定戦力が揃わない状態で開幕を迎えることになった。

 現在は各チームともに外国籍選手が合流しており、ようやく本来の戦いができるようになった。ここから本格的に各チームの実力を確認できそうだ。

 ここまで西地区で唯一1敗を守り、開幕ダッシュに成功したシーホース三河にしても、新加入の外国籍選手2人が出場できたのはシーズン第3節からで、チームとして本領を発揮するのはまだまだこれからだといっていい。

【ガード選手を加えた三河・鈴木HCの意図】

 すでに本欄で報告しているように、今シーズンから外国籍選手(帰化選手とアジア枠選手は別枠)3人を試合にエントリーできるようになったことから、これまで主流だったC(センター)やPF(パワーフォワード)に留まらず、PG(ポイントガード)登録の外国籍選手を加えるチームが現れ始めた。

 三河もそんなチームの1つで、今シーズンからPG登録で身長198センチのカイル・コリンズワース選手を獲得している。

 コリンズワース選手のリクルートについて鈴木貴美一HCは、以下のように説明している。

 「我々のガード陣はすごく成長していますけど、まだ若く経験が浅いので、とにかく周りの選手を生かしてくれるガードの選手が欲しかったんです。

 そうした選手を獲得したことによって、練習中も(他の選手たちが)合わせのプレーとかがだんだん上手くなってきましたし、彼とマッチアップすることで小さい日本の選手たちも成長できます。

 我々が目指そうとするバスケットは、ここ4、5年やってきたものは全然違うので、それを理解しててやってくれていますので、このまま慣れてきて(チームと)噛み合ってくれば、恐ろしい活躍をしてくれるんじゃないかなと思っています」

 鈴木HCが標榜するバスケットを実現するために、コリンズワース選手は重要なピースとして迎え入れられたのだ。

【大学時代はトリプルダブルの通算記録を樹立】

 コリンズワース選手は彼のキャリアをチェックしてみると、京都に加入したレイヴォンテ・ライス選手や大阪入りしたDJ・ニュービル選手のような攻撃型PGとは違う、万能型PGだというのが理解できる。

 その顕著な例が、ブリガムヤング大時代に樹立したトリプルダブル記録だ。コリンズワース選手は大学3年時にトリプルダブルを6回記録し、NCAAのシーズン記録を塗り替えることに成功。また大学4年間で計12回のトリプルダブルを記録しており、こちらもNCAA通算記録として現在も破られていない。

 コリンズワース選手自身も、プレースタイルが多岐にわたることを説明している。

 「自分の最大の特長は、多くのリバウンドを獲得し、自ら積極的にファーストブレイクを仕掛け、ペイントエリアまでいって自らシュートを決めることもできれば、フリーのチームメイトを見つけてボールを供給することもできる。自分の身長と身体能力を最大限に生かすことを武器にしている」

【NBAにも計32試合に出場経験】

 プロとしての実績も十分だ。ドラフト指名されなかったものの、大学卒業後はNBAマーベリックス傘下のテキサス・レジェンズ(昨シーズン馬場雄大選手が所属)入り。翌シーズンにはマーベリックスと2ウェイ契約を勝ち取り、NBAデビューを果たし、計32試合(うち2試合に先発出場)に出場している。

 昨シーズンはジャズ傘下のソルトレイクシティ・スターズに在籍しており、これまでずっと米国を本拠にしてきたため、今シーズンがコリンズワース選手にとって初の海外リーグ挑戦になる。

 未知のリーグにやってきたコリンズワース選手だが、非常に前向きに捉えている。

 「かつて父が教会のミッションを受け日本に来たことがあり、自分も日本の文化に慣れ親しんでいるし、日本の食べ物も大好きだ。それと自分のエージェントはライアン・ロシターも担当しており、彼がBリーグに精通していたこともある。

 すごく良いオファーだったし、三河が素晴らしいチームだというのも聞いていたので、挑戦してみたいと思ったんだ。初めての国を訪れるのは素晴らしいことだし、日本の人たちはいい人ばかりだ。バスケットを仕事にできていることに感謝している」

【次節で富山・マブンガ選手との万能型対決が実現】

 来日後は2週間の隔離措置を経て、10月8日にチームに合流。たった3日間の練習を経てBリーグデビューを飾っている。

 ここまで3試合に出場しているが、まだBリーグやチームシステムに慣れていないだけでなく、隔離中はまったく身体を動かせなかったこともあり、体調面も万全ではないままプレーを続けている状態だ。

 「バスケット選手にとって14日間何もできなかったのは大きい。(チーム合流後の)3日間の練習はかなりキツかった。まだ体調面は完全ではないけれど、試合をする度に状態は上がってきている」

 鈴木HCが期待するように、コリンズワース選手がチームとの連携ができるようになれば、彼の能力を最大限に発揮できるようになるはずだ。そうすればBリーグでもトリプルダブルを連発する可能性十分だ。

 三河は次節で富山グラウジーズと対戦する予定だが、富山には現在のBリーグの“トリプルダブル・キング”ともいえるジュリアン・マブンガ選手が在籍している。コリンズワース選手との直接対決が今から楽しみだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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