高校生3人処刑の北朝鮮、家族全員「見せしめ」も
「韓流ドラマ、映画を見るな」
「韓国風の言葉遣いをするな」
北朝鮮は、若者文化が韓流コンテンツの影響を受けて「韓国化」することに危機感を覚え、その阻止に躍起になっている。先日の最高人民会議(国会に相当)第14期第8回会議では、韓国風の言葉遣いを禁じ、文化語(北朝鮮の標準語)を広めるための「平壌文化語保護法」が採択された。
あまり効果は期待できないと見られているが、それでも当局は、様々な締め付けを強化している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、徳川(トクチョン)市内の各人民班(町内会)に2月20日、朝鮮労働党徳川市委員会(市党)の幹部が直接出向き、若者が韓国映画を見たり、韓国式の言葉遣いを真似したりして摘発されれば、その親にも責任を取らせるとの内容を伝えた。
RFAによれば、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市では昨年10月、韓流ドラマや映画などを視聴し、拡散させたとして摘発された高校生ら3人が見せしめのため公開処刑されたというが、そうした厳罰が家族にまで及びかねない事態となった。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
今までは、2回摘発されれば、親も処罰するという連座制が取られていたが、これからは「初犯」でも適用するというものだ。
また、韓流コンテンツの視聴で摘発された場合、本人は労働強化刑(懲役)5年、親は労働鍛錬刑(軽犯罪者を収容する刑務所に収容)6カ月以上、資本主義風のダンスや歌、韓国式言葉遣いで摘発された場合、本人、親ともに1カ月から3カ月の労働鍛錬刑に処される。
これは、若者の間での反動思想文化が未だに根絶されていないが、それを剔抉(てっけつ=取り除け)せよという中央からの指示に基づくものだという。
「子どものしつけは家庭から始まる。親が子どものしつけをできなければ、子どもは資本主義遊び人風踊りを踊り、歌を歌い、反社会主義的行為者になる」(市党幹部)
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、龍川(リョンチョン)郡の人民班でも同様の内容が伝えられた。
英語の書かれた服を着たり、ギターを引きながらお尻を振って踊ったりしたり、女子生徒が化粧をしたりする行為すべてが反動思想文化に含まれ、本人のみならず、親も処罰を受ける。
当局は、親が市場での商売にかかりっきりになり、子どものしつけをなおざりにすると、子どもが不良になることに気づいていないとし、そうなれば社会への見せしめとして家族全員が監獄に行くことになると警告した。
しかし、住民からは不満の声が上がっている。
そもそも市場で商売をするのは、国からの食糧配給のない中、生きていくにはそれ以外に方法がないからだ。若者を反動思想文化排撃法でがんじがらめにするだけではあきたらず、親にまで連帯責任を押し付け、若者の感情と思考を押さえつけようとする当局のやり方に開いた口が塞がらないと批判している。
そんなことをする暇があれば、餓死の危機に瀕している国民に食糧配給を行うなどの生活対策を取るべきだということだが、国内の状況が厳しい時ほど締め付けを強化するという今までのやり方にこだわっている当局は、聞く耳を持っていないようだ。