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仙台と鹿児島の桜開花 逆転した理由、しなかった理由

平野貴久気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属
開花した鹿児島地方気象台のソメイヨシノ(撮影:大平真理子 気象予報士)

 きのう3月17日、鹿児島でソメイヨシノが開花しました。平年より9日早く、去年より15日も早い開花です(平年:3月26日、去年:4月1日)。

 なぜ、遠く離れた仙台にいる私が鹿児島の話をしているかというと、去年、観測史上初めて、仙台のソメイヨシノが鹿児島よりも早く咲き(3月28日開花、観測史上最早)、少なからず衝撃を受けたからです(「桜の開花で史上初の珍事? 仙台が鹿児島を逆転」)。

 ただ今年は、現時点で仙台は開花しておらず、去年のような逆転現象は起きませんでした。

去年の逆転は「大暖冬」の影響

鹿児島の平均気温(気象庁のデータをもとに筆者作成)
鹿児島の平均気温(気象庁のデータをもとに筆者作成)

 上のグラフは、鹿児島の11月上旬~3月上旬にかけての旬ごとの平均気温を、平年、昨季(2019-20)、今季(2020-21)で比較したものです。

 まず昨季は暖かすぎました。ほぼすべての期間で平年より高く、中には4度以上高い時もありました。ソメイヨシノは、秋の終わり~冬にかけて、ある程度の寒さにさらされないと、休眠打破(目覚め)が鈍くなり、開花が遅れる傾向があります。もともと温暖な鹿児島で、昨季のような大暖冬になれば、休眠打破は順調にはいかないのでしょう。春先にいくら気温が上がっても、その遅れは取り戻せず、4月1日という遅い開花になったわけです。

今年は「寒冬のち気温上昇」で早咲きに 

仙台の平均気温(気象庁のデータをもとに筆者作成)
仙台の平均気温(気象庁のデータをもとに筆者作成)

 続いて仙台の気温も見てみます。グラフの形は、鹿児島とあまり変わりません。昨季は大暖冬、今季ははじめ寒冬→その後気温上昇という流れは一緒です。

 ただ、気温の絶対値がまるで違います。仙台はもともと気温が低いため、暖冬であっても休眠打破に十分な寒さはあり、気温が高ければ高いほど開花が早まる。ゆえに去年は鹿児島を逆転した。今季は鹿児島も十分に寒く、その後は気温が高いという早咲きの条件が揃い、逆転現象は起きなかったというのが私の推察です。

 鹿児島に限らず、今年は、西日本の早咲きが顕著です。平年より10日以上早い地点が多く、3月17日の時点で、西日本では、広島(3/11)、福岡(3/12)、長崎、松江(3/14)、高松(3/15)、下関、京都(3/16)、佐賀(3/17)で、観測史上最も早い開花となっています(タイ記録含む)。今季は早咲きには好都合な気象条件だったといえるでしょう。

 今後、地球温暖化も相まって、冬の気温が下がりにくくなれば、仙台はどんどん開花が早くなり、鹿児島はどんどん遅くなる、もしくは咲かないという年が出てきてもおかしくありません。桜前線は南から北へという常識は、もはや通用しなくなっているのかもしれません。

気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属

1980年愛知県生まれ。大学では気象学を専攻。卒業後は番組制作会社でリサーチャーとして活動。メディアを通じて自ら気象情報を発信したいという思いから、2009年に気象予報士の資格を取得。2012年から宮城県の仙台放送にて気象キャスターを務める。現在「仙台放送 Live News it!」出演中。予報はもちろんのこと、これまで宮城県内さまざまな場所を取材した経験から見えてくることなども発信できたらと思います。

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