「ここには、優しいところがあるねん」大切なもの、なくしたくないものがあるからこそ【神戸市・元町夜市】
ついに待望の開催!「元町夜市」が先日、3年ぶりに開催されました。コロナ禍で規模縮小をしつつも、始まる前から1番街の入り口にはすごい人だかりが。
告知を控えていたので、これでも例年より二割ほど人出が減っているといいます。以前は5万人(警察発表)の人で溢れ、身動きが取りづらいほどだったとか。
今年で39回目となる元町夜市。歴史ある大規模な夜市なのですが、きっかけは商店街の片隅で、青年部が酒とつまみを持ち寄った「夜市ごっこ」から始まったといいます。
数人の小さな遊びの集まり。それを地域の活性化に繋げてはどうかという話になり、「元町夜市」へと発展していったそうです。そこから今まで、脈々と続いてきた歴史がありました。
ところが。2年連続の開催中止、再び忍び寄るコロナの影…だけど、今年こそは開催したい。そこには店主たちの強い意志と、日々の細かなやり取り、時間をかけた積み重ねからの「信頼関係」がありました。
そこからの当日。顔を付き合わせてコミュニケーションを取ってきたことが、容易には崩せない形となって、ずっしりと腰を据えた「元町夜市」の開催となったのです。
「昔はモトブラって言って、元町をブラブラ歩きする意味やけど、ハイカラで個性的なお店が多くてね。デートは元町商店街を歩く、みたいな場所やったんよ」
そう教えてくれたのは一番街理事長の蓮池さん。この日は「迷子案内」の小さなスペースに座って、夜市全体の様子を見ながら、ここにやってくる人々の対応をされていました。
さっきから次々とここに人が訪れるのですが、顔馴染みの人たちが蓮池さんに話しかけてきては、親しみを込めて会話を交わしていきます。
「あの人はあそこのお店の従業員さん。さっきの人はウチのお客さんで…」そう言っているうちに、また男女が一組やって来て、笑顔で会話をして去っていきました。
「今の人は私服警察さんでね…しっかりと協力体制を作りながら、どうにかして安全に皆んなが楽しめるように、2ヶ月前からずっと話しを続けてきたんです」
規模縮小や、真ん中の通路を5メートル開けるなどのルールを守りつつ行われた今回。開催の日を無事に迎えることができたのも、過去39回で事故も一切なく元町夜市が行われてきた信頼あってのこと。
「ここは特に地域の協力が強い場所。何かを強引にやることもなく、いろんな決め事をするにも持ち帰って話し合ってみんなで決めてますよ」と、蓮池さん。
元町の5つの商店街では、月一で集まる連合会役員会があり、普段からも交流が続いていると言います。
この地域一帯では生田神社の祭り当番が持ち回りで、来年の4月の開催時には元町商店街がやる事になっているのだとか。
「神輿が商店街を練り歩くんやけど、担ぎ手も(交代で)170人おるだけにいろんな事しよるから、始末書を書かされたりもしながらやってますよ」と、蓮池さんは笑いながら懐かしそうに過去を振り返ります。
そんなお話を聞いていて、ここを商売をする為だけの場所にするのではなく、元町商店街に遊びに来るみんなの為に何かできたらという思いがあるのを感じました。
「ここにはね、古い商店街だからこそのいいもんがあるよ。道で体調悪そうな人を見かけたら、店の人が椅子出してきて『ちょっとこっち座って涼んで帰り』とか。
優しいんよね。何かあった時に、手をさしのべてくれる。23年間ここの理事長してるけどね、なかなかこういう商店街はないと思う」
商店街のお店(国際楽器)の2階で生まれたという蓮池さん。生まれてから今までずっと、長い長い間この商店街を見つめてきました。それだけに愛情もひとしおです。
時代も変わり、入れ替わりはあるけれども、これからも「さすが元町やね」と言われるような個性豊かな商店街であり続けられたら…そんな願いが込められています。
なくしたくない大切なものがある場所、元町商店街。来年の夜市では40回目の節目を迎えます。どんな風に行われるのかも楽しみですね。
皆さんもぜひこの機会に、レトロモダンな商店街をモトブラしながら、ひとつひとつのお店をゆっくり覗いてみてはいかがでしょうか。
「元町夜市」フォトギャラリー
神戸元町商店街
神戸元町商店街ホームページ (外部リンク)
※「元町夜市」は、毎年7月最終週、火曜日の夜
Google マップ (外部リンク)
※20歳未満の者の飲酒は法律で禁じられています