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スコットランド代表に、日本代表はどうやって勝つの? 協会が方針発表【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
2016年もリーチがキャプテン?(写真:ロイター/アフロ)

日本ラグビー協会は3月9日、都内で会見し、今春の男子15人制日本代表の活動方針を発表。指揮官不在もヘッドコーチ代行を立て、スコットランド代表などとテストマッチ(国際間の真剣勝負)をおこなう。

同代表は昨秋、イングランドであった4年に1度のワールドカップでは、現イングランド代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ体制のもと躍進。過去優勝2回の南アフリカ代表から大会24年ぶりの白星を奪うなど、歴史的な3勝を挙げた。副キャプテンだった五郎丸歩がテレビコマーシャルに引っ張りだことなるなど、国内での競技認知度を高めた。

2016年以降はジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチがチームを先導も、現在務めるスーパーラグビー(世界最高クラスの国際リーグ)のハイランダーズとの契約上、着任は秋以降となっている。一方、日本協会は指揮官決定を前後して春先のマッチメイクを発表。4~6月に韓国代表や香港代表とのアジアラグビーチャンピオンシップ2016(神奈川、香港など。ホーム&アウェー形式で計4試合。以下ARC)、6月11日(日本時間12日)にカナダ代表戦(バンクーバー)、18、25日にはスコットランド代表戦(愛知、東京で計2試合)を指揮官不在のままおこなうこととなった。

ヘッドコーチ代行は、アジアラグビーチャンピオンシップでは、現在ジュニア・ジャパンや20歳以下日本代表を率いる中竹竜二・コーチングディレクターが、カナダ代表戦以降は、日本を拠点とするスーパーラグビーのサンウルブズを率いるマーク・ハメットヘッドコーチがそれぞれ務める。

例年、大勝を重ねているアジアの戦いでは、20歳以下日本代表(U20)に数名の年長者を加えて臨み、カナダ代表戦以降のツアーでは、イングランド大会出場組を軸とする。プレースキッカーでファンへの訴求力もある五郎丸などには、水面下で交渉を開始。もっとも参加するか否かは流動的だ。

ジャパンは2013年6月のウェールズ代表戦、2014年6月のイタリア代表戦と、高温多湿なホームグラウンドで欧州勢を破った実績を持つ。

スコットランド代表も欧州6強の一角だが、昨秋のイングランド大会の予選プールで日本代表が唯一、敗れた相手でもある(9月23日、グロスター・キングスホルムスタジアムで10―45と屈した)。

以下、会見中の薫田真広・男子15人制ラグビー・オブ・ディレクターの発言要旨(編集済み)。

「強化・技術委員会(新設)担当理事の土田雅人さん、岩渕健輔ゼネラルマネージャー、私でしっかり連携をしながら、ジェイミー・ジョセフの意見を反映させ、代行の中竹、ハメットと強化を図りたい。

本来ならARCもサンウルブズのスタッフにやってもらうのが理想だが、日程的にサンウルブズのシーズンと重なるため叶わない。そこで若い世代の強化を担っている中竹ヘッドコーチとそのスタッフに、ARCを任せたいと思っています。6月の試合はハメット以下、サンウルブズのスタッフ全員に担ってもらいたい。

U20は、6月にワールドラグビーU20チャンピオンシップを控えていて、そちらの強化も同時進行でやらないといけない。現在、ジュニア・ジャパン(U20に6名のオーバーエイジ=年長者を加えたチーム)でパシフィックラグビーカップをおこなっていますが、その内容を観ながらARCのメンバーを決めたい。キャップ対象試合(国際間の真剣勝負)なので、しっかりした結果を残さなければいけない。オーバーエイジ枠を増やしながら、しっかりとした若手の育成と発掘を目指します。オーバーエイジはトップリーグで戦っている選手などを中心に約15名前後を選び、そこへU20のコアメンバーをミックスさせたいと思っています。ARCは、6月の試合に向けたセレクションも含めた位置づけでもあります。

6月は2015年のメンバーを中心に、19年のことも見据えながら…。2015年組には次のことを考えられないという選手もいますので、それをジョセフと個別に対応しながら、現状を把握していきたいです。

それぞれのセレクションですが、私が中心にスコッドを作成しながら、ジョセフ、ハメット、中竹と最終的なセレクションをしたい。ARCのメンバーは4月11日前後をリリースのタイミングとして考えています。6月に関しては、スコッドを多めに選びたい。そのスコッドを4月の中旬、最終的なツアーメンバーを5月の中旬に発表します。

全てのカテゴリーのコーチには、我々の強化の現場として、『世界で最もペナルティーの少ないチームを作って欲しい』という大方針は掲げています。

6月の戦いに関しては、現在、ジョセフもハメットもスーパーラグビーのチームを持っています。彼らが6月のことを考える余裕が出たタイミングで、スカイプで土田、私が入りながら戦術略を詰めていきたい。詳細は詰めていないのが現状です。

6月、11月以降の方針に関して、ジョセフの来日時に会見を開きたい。6月の来日を交渉していますが、ニュージーランド協会の許可が下りていない。いまのところスコットランド戦の観戦もできないのが現状です。ただ8月末までニュージーランド協会と契約が残っている。8月末、もしくは9月初旬に来日できるのではないかと思います」

――スーパーラグビーでプレーする日本人は何人ぐらい国内に招集するのか、などスケジューリングをお伝えください。

「6月に関しては40~50名のスコッド最終メンバーを4月中旬、最終的なメンバーは5月中旬。サンウルブズは5月28日にブリスベンで試合をする。帰国30日の朝なんじゃないかなと。当然、他の海外でプレーする選手もそれくらいで帰国する。彼らには数日間のオフを入れ、集合をかけたい。現時点での私の案ですが、彼らのコンディションチェックをしたいので、まず日本で軽くトレーニングをして、カナダへ向かう…という予定です。

5月中旬のタイミングでメンバーを絞ります。2015年のメンバーのうち、U20日本代表、ジュニア・ジャパン、サンウルブズのどこにも所属していない選手からも何名か、2015年までの実績を加味してセレクションする。ツアーメンバーを25名にするか30名にするかで迷っていますが、国内は30名がいいというのが私の案です」

――ARCはU20の強化を加味して戦うのか。

「6月のセレクションへの位置づけはあります。オーバーエイジを増やしたのは、そういったところからです。現在、ARCには40名ほどメンバーできる。現時点では、オーバーエイジ以外の25名はU20の選手にしようかなと。1、2戦目のホーム&アウェーの試合内容によっては、3戦目のアウェーの韓国代表戦はU20の単独チームで戦おうかと考えています」

――ハメットの来季以降の立ち位置は。

「コーチ自体、ヘッドコーチに向いているのか、アシスタントコーチに向いているのかもある。ハメットがスクラムコーチをすることもあると思うのですが、強みを把握した後にしたい。色んな可能性がある」

――(当方質問)改めて、今度のセレクションに責任を持つのは誰なのでしょうか。

「先ほども申し上げましたが、土田、岩渕、薫田、スコッドの原案を考えます。当然、ハメットもジョセフもそこまで細かいデータを持っていないので。スカイプ等々で、試合を通じながらセレクションをすると。いまのところ、ARCに関しては2度ほどセレクションをする必要がある。6月に関しては、原案を送ったなかで絞り込みをしていく。ARCの香港代表戦(大会第2試合)の試合が終わった後、最初の絞り込みをしていく。5月中旬にメンバーを発表したいということです」

――(当方質問)ファンはスコットランド代表戦の勝利を期待しています。一方、前回の代表がワールドカップで惨敗するなど、そう簡単に勝てる相手ではありません。どのように臨むつもりか、協会としての見解をお願いします。

「2015年のベース、例えばゲーム中の言葉、シャーク、ブルとか決めごとの言葉は現在も継続されています。それを検証しながらチームを作っていく。ジョセフは、2015のメンバーがどれくらい2019年にどれくらい行けるのかを確認したい、と。詳細につきましては、先ほども申し上げましたが、彼ら2人(ジョセフとハメット)が落ち着いてから詰めたい。ただ、過去の日本の指導者全てがやってきたことは、ハードワークをして数の多い、速いラグビーをする、ということ」

――海外組は収集できるのか。

「基本的には呼びたいと考えています。現在、軽く探りを入れている段階です。彼らも各チームで溶け込みだしたばかりなので、余裕があるかどうかも含めて探りを入れている段階です。軽く触った段階で、あまりいい回答を得られない選手には、ジェイミーに個別で連絡をしてもらいたいと思います」

――4月中旬の「6月に向けた40~50人のメンバー」は、本人の意思確認し手発表するのか。

「します。呼べる可能性のある、呼びたい選手はリストアップする。6月のテストマッチに関しては、ワールドラグビーのレギュレーション上、唯一呼べない理由は怪我等になる」

――6月、2015年組は全員呼びたいと考えているか。

「ワールドラグビーのレギュレーション上、怪我以外で代表招集を辞退した選手は、代表を引退するという厳しいものだと理解しています。それを押し出すわけではないですが。

呼びたいのは間違いない。ただ彼らが何を考えているかは、日本人的な感覚で考えています。それぞれ状況も違うと思うので、コミュニケーションを取って把握していきたいです」

――ハメットやジョセフとどんな連携を取っているのか。

「3月初旬に私がリストを送っています。現時点での、我々の原案を送っています。ジェイミーとしては、ワールドカップの選手以外の情報は掴んでいない。ハメットはサンウルブズの選手しかわかっていない。こちらが主導権を持って情報を与えて、絞り込みをしていく」

――映像を送っているのか。

「いまは世界中の映像を観られる時代。DVDを送らなくても観られる。もちろんトップリーグの映像も渡しています」

――「こんな選手を」というリクエストはあるか。

「きのう、ジェイミーが言っていたのは、『大野均(37歳のロックで、国内歴代最多の96キャップを保持)はどう考えているの』と。『年齢的なことはあるが、グラウンド内外の姿勢は新しいチームには必要』。昨日の段階では興味があるという言い方をしていました。今回、代表引退を表明した選手や引退に近い選手は、省きながら説明しています。

また、2019年に可能性のある新しい外国人をどう発掘して、どう育成するか。そのプランニングもしています。これも2019年に向けて大事なこと」

――代表のキャプテンはどうやって決める?

「これは確定ではないけど、ジェイミーと話をしているなかでは、6月はこちらの要望はマイケルリーチがベストでしょうと」

――6月のヘッドコーチ代行をハメットに決めた理由は。

「正直、もう少しサンウルブズのスタッフの評価はしたかった。色々な協会の事情がありまして、このタイミングで発表せざるを得なかった。ただ、初戦はよかった。スタッフだけでなく選手の頑張りもあったと思いますが、評価はしています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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