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日本選手権見据えるパナソニック堀江翔太キャプテンの「リーダーサポート論」?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
今年で31歳。跳ねるようなランと正確なパススキルは圧巻。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

昨季まで日本最高峰のラグビートップリーグで3連覇していたパナソニックは、1月29日、シーズンを締めくくる日本選手権の決勝戦に挑む(東京・秩父宮ラグビー場)。今季初のタイトル奪還に向け、堀江翔太キャプテンが意気込みを明かす。

今シーズンのサントリーは攻守のバランスに長け、トップリーグでは全勝優勝。かたやパナソニックはシーズン中に2敗も、調子は右肩上がり。好勝負が期待される。

堀江の同学年にあたる31歳の林泰基によれば、こんな様子だという。

「連覇をしていた時はほぼ固定だった出場メンバーが、今季は試合ごとに入れ替わっていた。(序盤戦では)それに対応できなかったりもしたのですが、ここにきてそのスタンスに慣れてきた。(頻繁な入れ替わりのなかで)1人ひとりがどんな役割を果たすかを考えている」

2016年は日本代表でもキャプテンを務めていた堀江は、トップリーグの終盤戦、選手権準決勝と、8試合連続でゲームキャプテンの座を退いている。ロビー・ディーンズ監督に「自分のプレーに集中したい」と申し出たためのようだが、いまの本人の実感やいかに。

話題は、リーダーが「リーダーのサポート役」に回る際のあり方にも及んだ。

以下、一問一答の一部(編集箇所あり)。

――まずは決勝戦への意気込みを伺えますか。

「いつも相手に対してどんな準備をするか(を考える)。ヤマハ(準決勝の相手)の時と同じ戦い方をしていてもだめだと思う。いい準備をしていきたいです」

――相手には、接点のボールへ絡むジョージ・スミス選手がいます。

「嫌なプレーヤーだと思う。そういう選手がブレイクダウン(接点)にいたら、しっかりと排除することが大切」

――今季は大忙しでした。国内シーズン開幕前にスーパーラグビー(国際リーグ)のサンウルブズのキャプテンを務め、11月のリーグ戦中断期間中も日本代表のキャプテンとして活動。トップリーグではディーンズ監督の判断もあり出場機会を制限されていましたが、体調はいかがでしょうか。

「大分、よくなっていると思っています。試合をやっている時、特に違うように感じますね。考えも、自分にフォーカスできる」

――確かにここまで、トップリーグでは8戦連続でゲームキャプテンの座から離れています。堀江選手がゲームキャプテンを務めたのはトップリーグの全15戦中計5試合。それ以外のゲームでは、33歳の北川智規選手や新人の坂手淳史選手、最近では2年目の布巻峻介選手が重責を担っています。

「そのことでも、負担は減っているかな、と。助かっています」

――ゲームキャプテンをする試合と、そうではない試合。両者の負荷の違いを、改めて教えていただけますか。

「ゲームキャプテンはチームのこと(試合中の仲間の様子など)を考えなくてはいけない。ゲームキャプテンをやらない時の方が、自分(のパフォーマンス)にフォーカスがしやすい。…(その質問は)峻に聞いた方がいいんじゃないですか」

ここまで5戦連続でゲームキャプテンを務める「峻」こと、24歳の布巻峻介もこの件に触れた。

「チームのためにプレーをするのは変わらないですけど、自分だけがやりやすい環境を作るのではなく、皆のモチベーションを上げることも大事」

周りへの目配りについてかように語りながら、最後は「行動で示す」と続けた。

「僕自身、もっとプレーの質を高めたい。行動で示す…ではないですけど、そういうシンプルな形で引っ張っていきたいとも考えています。喋る人は、他にもいっぱいいる。そこで僕は、皆のモチベーションを上げることと、自分のプレーが良くなることを考えていきたい」

プレーの合間に軌道修正をおこなうなどの「喋る」行為へは、堀江らキャリアの豊富な選手が力を注いでくれる。そんななか自分はまず「速く動き出す、最初にタックルへ行く」といった「行動」で、「皆のモチベーション」に火をつけたい…。それが現時点での、リーダー布巻の気持ちだろう。

「より、そう意識するようになりました」

どんな組織にも、「後進への引継ぎ」はある。布巻ら若きリーダー候補の揃うチームにあっては、今後、堀江が船頭役から距離を置くこともあり得る。自分より若い人が先頭に立つ集団にあって、どんな振る舞いをしてゆくのだろうか。

――あくまで仮の話ですが、堀江選手がこれからキャリアを重ねるなか、リーダーの座から離れることだってあるかもしれません。そうなった時、「リーダーを経験したいち選手」として仲間にどう関わってゆきたいですか。

「サポートはしていきたいですよね。リーダーとしての経験は無意識のうちに生かされると思いますし、アドバイス的なこともしていければいい。『どうしたらいいですか』と聞かれたらそれに答えたり。…あまり出しゃばろうとは思わないですが」

――「あまり出しゃばろうとは思わない」。自身の経験値から何かを発するのは、質問された際に答えるなどの「無意識のうち…」という程度に止めておきたいのですね。

「そうですね。キャプテンそれぞれのやり方はあるので、そのやり方に沿っていきたい。僕のやり方が絶対の正解ではないと思うし、僕が『ちゃうなぁ』と感じたやり方が正解になることもある。だから、僕はその時のキャプテンのやり方を尊重していきたいです」

サントリーとの決勝戦。現キャプテンでありいち選手でもある31歳が、持ち前のスキルと激しさを示す。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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