【今シーズン注目を集めた本塁打と盗塁のコンビ記録】

　今シーズンのMLBで注目を集めてきた記録の1つが、本塁打と盗塁のコンビネーション記録ではなかっただろうか。

　中でもこの記録に関してシーズン前半戦から脚光を浴び続けてきたのが、ブレーブスのロナルド・アクーニャJr.選手だった。結局彼はMLB史上5人目の「40－40クラブ（同一シーズンに40本塁打＆40盗塁をクリアすること）」を達成しただけでなく、史上初めて40本塁打と60盗塁を同時にクリアするという快挙を成し遂げている。

　アクーニャJr.選手は現在盗塁数を68まで伸ばしているので、シーズン終了後までに40本塁打＆70盗塁という更に異次元の領域に足を踏み入れそうだ。

　また最近になってドジャースのフレディー・フリーマン選手が、一塁手としては史上11人目の「20－20クラブ」を達成したことで米国では大きなニュースになっている。

　ちなみにフリーマン選手はその後自身初の年間200安打も達成しており、一塁手としてMLB史上初の200安打＆25本塁打＆20盗塁という金字塔を打ち立てている。

【大谷選手があと一歩に迫っていた史上4人目の金字塔】

　本塁打と盗塁のコンビ記録に関しては、これまでオールラウンド選手の指標として「30－30クラブ」や「40－40クラブ」のように同数の本塁打と盗塁を記録することに関心が集まっていたが、アクーニャJr.選手の活躍で違った数字の組み合わせによる希有な記録も注目されるようになったように思う。

　そうした観点から見ていくと、実は今シーズンの大谷選手も二刀流とは別に打者のオールラウンド選手としてMLB史上でも数少ない金字塔にあと一歩のところまで迫っていたのをご存知だろうか。

　その金字塔こそ、同一シーズンでの50本塁打＆20盗塁の達成だ。これまでMLBでこの快挙を達成しているのは、わずか3人しか存在していないのだ。

　9月15日に右脇腹痛により故障者リスト入りし残りシーズンの欠場が決まった時点で、大谷選手はすでに20盗塁をクリアしており、あと6本塁打で史上4人目の快挙を達成できていたわけだ。

【過去の達成者はMLBを代表するオールラウンド選手ばかり】

　ちなみに過去に50本塁打＆20本塁打を達成したのは、1955年のウィリー・メイズ選手（51本塁打＆24盗塁）、1998年のケン・グリフィーJr.選手（56本塁打＆20盗塁）、2007年のアレックス・ロドリゲス選手（54盗塁＆24盗塁）──の3選手だ。

　ロドリゲス選手は薬物問題で殿堂入りする可能性が低いとはいえ、3人ともMLBを代表するオールラウンド選手として一時代を築いた選手ばかりだ。

　仮に大谷選手が彼らの仲間入りができれば、打者単体でもMLB屈指のオールラウンド選手として認知されることになるだろう。

【50本塁打＆30盗塁なら史上初の快挙】

　今月19日に右ヒジの手術を受けた大谷選手は、順調に回復すれば来シーズンの開幕から打者として出場できることが期待されている。しかも打者に専念できるため、二刀流としての負担がない状態でシーズンを過ごすことができる。

　今オフの大谷選手は、FAとして他チームに移籍する可能性があるわけだが、たとえ本拠地球場が変わったとしても、今シーズンの打撃さえ維持できれば極端に本塁打数が減るのは考えにくい。

　というのも、今シーズンの大谷選手が放った44本塁打の平均飛距離は422フィートで、複数本塁打を記録している選手の中ではアクーニャJr.選手と並びMLBトップにランクしており、球場の大きさの影響を受けにくい本塁打を放っているからだ。

　また大谷選手は2021年には自己最多となる26盗塁を記録しており、ケガなくシーズンを乗り切れるようならば、史上初の50本塁打＆30盗塁という金字塔をも期待できるかもしれない。

　二刀流を封印し打者に専念する来シーズンでさえ、大谷選手への期待が薄まることはなさそうだ。