【K-POP論】9月に来日決定のLovelyz。5月の「楽曲を最も語った機会」をリビュー【ほぼ全文】
”もういっぺん、スタート地点での彼女たちの言葉を掘り起こしてみよう”
これが今回の原稿の主旨だ。
K-POP8人組ガールズグループLOVELYZの9月の来日が発表になった。
9月15日と19日に日本でコンサートを開催。これと前後して日本に12日から23日までの日程でやってくる。コンサートのほかに、福岡、大阪、千葉、東京でミニライブを展開。いわゆる「リリースイベント」だ。
目玉の一つは、韓国で、5月末から6月にかけて活動した「Beautifull Days」の日本初披露に違いない。アルバム「ONCE UPON A TIME」のタイトル曲(リードトラック)だ。
「Beautiful Days」事務所公式。
この楽曲を紐解いてみよう。
”スタートライン”というのは、今年5月20日に行われた同曲の新曲発表会(ショーケース)だ。
筆者自身、K-POPの取材ではこの機会を非常に重要視している。
なぜかと言うと、そこが活動の「原点」だからだ。制作者の意図が語られる機会。事務所からはアルバム全体に関する説明資料も配布される。
さらに、ここで本人たちの言葉が多く聞ける。ふだんはパフォーマンスで魅せるメンバーが、言葉でじっくりと楽曲を説明するのだ。
もう一つ言うと、記者との質疑応答でのやりとりは「台本なし」。ライブ感のある言葉が出てくる。
今回の9月のLOVELYZの来日で、特にこのときの言葉が重要な理由がふたつある。
ひとつは、(これはLOVELYZの魅力なのだが)楽曲の読解が少し必要なこと。決してシンプルではない。前回の原稿では、彼女たちの成長は「文学的に進むこと」と考察してみた。
もう一つは、韓国での活動期間から、来日までの時間が少し空くということだ。およそ6月末まで現地で活動したのち、9月中旬に来る。2ヶ月半のタイムラグがある。
じっくり待てるのだ。この間何をする? YouTubeを観る。その際に「あれこれと想像していただく」ことがこの連載の根幹でもある。
韓国のファンのように実物を見る機会は少ない。だからこそ動画を観て、観て、観まくって妄想を高める。そして本人たちの来日を待つ。これもまた、日本での自分たちのK-POPライフではないか。
この原稿が、YouTube鑑賞のプラスとなれば幸いだ。
Beautiful Daysは「過去の恋愛の思い出を表現」(ジス)
2019年5月20日、ソウル市漢南洞のブルースクエア・アイマーケットホール。
夜のファン対象のステージに先立ち、夕方からメディア対象の発表会が行われた。
男性MCとともにステージに上ったLOVELYZ。
冒頭の挨拶シーン
MCから「6ヶ月ぶり(昨年11月の「チャジャガセヨ」以来)のカムバック(新曲発表)」だと切り出された。さらにその間、韓国でのコンサートのほか日本、台湾、シンガポールなどアジアを回った活動ぶりについて質問が飛んだ。Keiが答える。
各国のラブリナス(LOVELYZファンの愛称)にお会いする機会となり、最初のアジアツアーも意義深かったと思います
(Kei)
話はすぐに「Beautiful Days」が収録されるアルバム「ONCE UPON A TIME」の説明へと続く。
――ではまず、今回のアルバムの紹介をしていただきましょう。
ミジュがこう話を切り出した。
私が代表して、お話します。今回のアルバム「ONCE UPON A TIME」のコンセプトは「一番美しかった時期」です。ジャケット撮影ではこれをテーマに8人の美しい姿を撮っていきました。
――ご本人もそう思われるのですね!
ひとりでアルバムを眺めながら、メンバーたちがかなり美しかったので感嘆してしまいました。
続いて、スジョンがアルバム全体のコンセプトについて語る。
今回のアルバムのテーマは、愛です。過去の恋愛、別れ、ふたたび始まる愛、初恋などに対する思い出をLOVELYZだけのカラーで解き明かしてみました。誰にとっても愛に関する大切な思い出があるでしょう。多くの方にアルバムを聞いていただき、いちばん輝いた時を思い浮かべていただきたいという気持ちです。
――今回のアルバム「ONCE UPON A TIME」はホント、すべての曲がタイトル曲でもいいんじゃないかと思うくらい完成度が高いです。ジスさん、構成をお話ください(MC)。
今回のアルバムは全6曲のトラックで構成されているんですが、1曲めの「ONCE UPON A TIME」(インストゥルメンタル)からタイトル曲の「Beautiful Days」にかけては、過去の恋愛に対しての思い出を表現しました。続いての収録曲では別れ、ふたたび始まる愛、そしてかなり昔を振り返って、初恋を思い出す楽曲も含まれています。
――では、ジエさん、アルバムの2曲めでもある「Beautiful Days」についての説明を改めて。
清涼感溢れる爽やかなサウンドと、私達の歌声を通じて、一番美しかった時期の恋愛を綴る歌です。鑑賞ポイントは、単語ひとつひとつを注意深く聴いていいただくことにあります。より深く感じ取っていただけると思います
MVでは「遠い未来に立ち、現在を思い浮かべて涙」(ジス)
ステージではその後、MCからの質問に答える形式で、アルバム全体に関する説明が続いた。
――ミュージックビデオでの演出について。
ミュージックビデオの後半に私が泣く演技があります。監督が「ずっと先、かなり先にLOVELYZがLOVELYZでなくなった時にLOVELYZを思い浮かべたらどんな気持ちになる?」とおっしゃって。その言葉を聞いて泣きました。続いてのパーティーのシーンには、その時になってLOVELYZのみんなと楽しく過ごした時期を思い出すという意味が込められています(ジス)
――(原語で)「ク シジョル ウリガ サランヘットン ウリ(あの頃、ふたりが愛したふたり)」と長いタイトルについて。
タイトルが途中(制作過程)でたくさん変わりました。そうしているうちに、曲の雰囲気を表現できる長いタイトルが採用されました(スジョン)
――歌詞のなかで、好きなフレーズは?
”心配しないで 二人が失った季節が悲しくならないように あなたをピースごとに集めて強い思いに浸るわ”という部分が特に詩的だと思います。二人が失った季節。そういった表現はあまり使わないものだと思います。私たちLOVELYZの感性とよく会っていると思います(イェイン)
――ダンスについて。前回の「チャジャガセヨ」より速いテンポのため、苦労したと聞きましたが。
ホントに息をつく間もないくらい、皆様に良い姿をお見せしようとレッスンを頑張りました。ポイントとなる振付は「タイム・リフ」ダンスです。時間が戻る、という意味です(ミジュ)
ダンスの説明をするミジュ
――アルバム「ONCE UPON A TIME」全体のうち、好きな曲は?
個人的に一番好きな曲は「シークレットストーリー」です。レコーディングをしながら、デビューした頃に発表した曲「昨日のようにGood night」を思い出しました(JIN)。
ショーケース(このステージ)に来る途中で「ラブゲーム」を聞いたのですが、すごく爽やかな感じがしました。私も元々は「シークレットストーリー」が好きだったんですが、今日は「ラブゲーム」をご推薦したいです(イェイン)。
”SECRET STORY” KBS出演時
アルバムの中から”Close to you"も音楽番組で披露された
筆者のちょっとした考察を。今回の「Beautiful Days」、かなり考えて、作り込まれた作品だと感じる。公式MVではジスの言う通り、楽曲の最後、サビ部分のリズムを変化させながらぐっと「追憶」の感情を駆り立てる部分で、パーティーの明るい場面に切り替わる。
かなりこの点に気をかけたのではないかと見た。
”内容が重くなりすぎないように”
「最も美しかった頃」を振り返る歌。歌詞を読む限り、ややもすれば「女性の未練」といった重いトーンになりかねない内容。これを軽快に、かつ「仕方がないことは仕方がない。受け入れましょう」というタッチで見せるといった制作者の意図が想像できる。
余談になるが、イェインが歌詞のなかで「一番好きだ」といった部分、「あなたをピースごとに」の「ピースごと」は、韓国語で「チョガク チョガク」という。ここをベイビーソウルが歌うのだが、彼女は4月に「チョガクタル(片割れ月)」というデジタルシングルを発表している。このパート振り分けは、ちょっとした遊び心にも見えるのだが、どうだろう。
レコーディングをしながら、よりメンバーがまとまっていくのを感じた(ベイビーソウル)
続いてメンバーは、ステージ上で「Beutiful Days」を初披露。
世界初&生公開 ショーケースでの「Beautiful Days」
その後、記者との質疑応答に移った。
――以前の「That day」の活動時には青い服を着てショーケースをやられたと思うのですが、今回は鮮やかな赤です。コンセプトを大きく変えた理由はどこにあるのでしょうか?
私達は、赤も青も似合うと思っています(笑う)。「That Day」の時には”治癒”というイメージが伝わる淡い青だったと思うのですが、今回は濃い感情を表す楽曲なので、衣装の色もここから……(途中で横にいたミジュの方を向き)”強烈な女神”となっていくと言ってほしいようです……いずれにせよここからも濃い感情を表していく衣装の色が多く準備されていますので、関心をどうぞよろしくお願いいたします。(スジョン)
"ギャップクラッシュ”。スーツからジャージまで。多様な衣装での動画も。
――4 月にベイビーソウルさんが「チョガクタル(片割れ月)」というソロ曲を発表されましたが、その感想を。また他のメンバーもソロ活動をしてみたいという意欲がありましたらぜひ。
「チョガクタル」は、今年2月のコンサートの時に初めて披露した自作曲です。私自身が休んでいる時、疲れていた時の心情です。歌詞にそのまま私の気持ちが描かれています。他のメンバーも、全員が個性がありますので、ソロ曲をやれるのではと思っています。(ベイビーソウル)
ベイビーソウル「チョガクタル」
――レコーディングをしながら、思い浮かんだ「あの頃の私」が存在するのでしょうか。
私はデビューの頃を思い出しますね。何も知らなかったデビューの頃を。カメラの前に立ったこともない、あの頃です。だからこそ、この曲を発表しながら感慨深かったのだと思います。このショーケースもまた感激です。私達が、これほどまでに成長したんだな、という思いが頭をよぎります。(ミジュ)
――では、ベイビーソウルさん。今回のアルバム「ONCE UPON A TIME」がLOVELYZにとっての新しい感情を沸き起こすものだとしたら、それは何でしょう。
新しいスタート、でしょうか。今回のアルバムをレコーディングしながら、以前もそうでしたが「グループがよりまとまっている」という感じがしました。
――前回の「チャジャガセヨ」でも、「女神」というコンセプトがありましたよね。今回もビジュアルを強調されているようです。少しコンセプトがビジュアル寄りに移っていっているような印象もあります。そのきっかけがありましたら、教えてください。
(MCがメンバー指名前に「すでにLOVELYZの音楽性というのは多くの方に認めていただいているところです。だからこそ、今度はビジュアルにという考えもあるように思うのですがいかがでしょうか」とフォロー。その後Keiに話を回答を求める)
美貌もしっかり揃っています(笑)。私達がビジュアルの方にシフトした、とはお話しにくい部分があります。そういう風に感じ取ってくださったということでしょう。いずれにせよ、可愛らしいと見てくださいましてありがとうございます。
――合わせて、LOVELYZはいまや事務所を代表するグループでもあります。今回の活動には他ならぬ意気込みがあると思うのですが、いかがでしょうか。
1位になりたいです。今回は1位に。(スジョン)
――(MC)お? 前回は「成績にはこだわらない」というお話でしたが。
ねえ、1位になりたいでしょ? ジエオンニ?(同)
記者の皆様、1位にしてください! そうでしょミジュ?(ジエ)
記者の皆さんは、責任者です!(ミジュ)
記者の皆さん、LOVELYZ、1位になりたいです(Kei/”愛嬌”風に)
かわいく、見てください~(ジス/完全に愛嬌風に)
SNS投票、よろしくお願いいたします(イェイン)
記者の皆様、音源ダウンロードを忘れずに、そしてSNS投票をよろしくお願いいたします(JIN)
この流れで、ベイビーソウルは質問した記者のメディア名と名前を口にし、「(1位アピールさせてくださり)ありがとうございました」と答えた。さすがリーダー。素晴らしい話のまとめっぷりだった。
「1位アピール」のシーン
――他のグループの新曲発表も相次いでいます。どんな思いでいるのでしょうか?
確かにカムバックするチームが多いです。先週も多くのグループが新曲を発表しました。同じ時期に活動できる先輩、後輩のみなさんも多いということですよね。そういったなかで私達はデビュー後5年間、ずっとファンの皆様に愛されてきたからこそ、アイドルの代表格が出演できる音楽番組で機会が与えられるのです。そういった感謝を感じます。今回も一生懸命準備したからこそ、他の歌手の皆さんと一生懸命活動していきたいと考えています。(イェイン)
――「通勤時(音楽番組活動時、早朝から収録のためにテレビ局入りする際、ファンと触れ合えること)」のパフォーマンスが有名ですよね。今回の活動時には、これをベイビーソウルさんに伝承したいというお話もされていたようですが、いかがでしょうか。
そうですね。前回の活動時に、ソウルオンニが約束を守ってくれたんですよ。最初の週に派手な格好で出勤してくれました。今回は……(ベイビーソウルに次いで)2番めのお姉さん、ジエオンニにお願いしようかと思います。カバのように口を開けて、ひげをつけて”出勤”するのはどうでしょう。
私がカバのように登場するのなら、ミジュはフクロウみたいに出てくるのはどうでしょう?? (ジエ)
――あのパフォーマンスは、大変じゃないんですか?(MC)
いえいえ。本当に、本当に私自身楽しんでいるんですよ。多くの人が楽しんで下さっているので。私も楽しいんですよ!
ステージでのフォトタイムの様子
以上……ほぼ全文だ。
過去の恋愛の思い出に浸る時間。多くの場合は忘れて、前に進むべきだ。でも、どうしても振り返りたくなる時間というのは訪れる。LOVELYZの「Beautiful Days」は「浸るときは浸ってもいいんだよ」と教えてくれる。そういったなかでも曲全体の清涼感、MVの後半のパーティーのシーンのような明るい場面を通じて「やるせなさ」といった感情を代弁する。そういった楽曲だと理解した。悲しい。でも明るく。
9月、夏を過ぎた時に日本で聴いたら、どんな印象を受けるだろうか。YouTubeで”Lovelz Beautiful Days”、”Lovelyz Close to you" そして”Lovelyz Secret Story"と検索すれば、ふんだんに「研究材料」が出てくる。その時を待とう。
筆者の一番お気に入りは、この白い衣装を着て登場した時です。”爽や悲しい”(さわやかなしい)。