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北朝鮮で最悪の食糧難「ジャガイモの皮」が生命線

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の兵士(デイリーNK)

 北朝鮮の深刻な食糧難。人々は、食べられるものを手当たりしだいにかき集め、飢えをしのいできた。秋の収穫を迎え、例年なら食糧事情は多少なりとも好転するものだが、大不作に襲われた今年は、未だに人々は飢えに苦しんでいるようだ。

 米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、農民が水草を食べて命をつないでいると報じたが、北部の両江道(リャンガンド)からは、ジャガイモの皮を食べているとの情報が伝わってきた。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

 道内最大都市の恵山(ヘサン)では、今月に入ってジャガイモの皮を集める人が増えた。両江道と言えばジャガイモで有名で、コメの代わりにジャガイモを主食としている人が多い。

 本来ならかなりの量のジャガイモの配給を受け取り、それを越冬用の食糧とするが、今年は深刻な不作となり、配給を受け取れなかった人も少なくない。道内では豊かな地域と言える恵山市内でも、郊外では深刻な状況となっている。

 郊外の恵炭洞(ヘタンドン)、馬山洞(マサンドン)、蓮峯洞(リョンボンドン)などで、住民がジャガイモの皮を集める現象が多く見られるという。一部の人は、秋から親戚や知人の家を回り「ジャガイモの皮を捨てずに取っておいてほしい」と頼んでいるとのことだ。

 ある馬山洞の住民は次のように語った。

「いくら貧しいと言っても、今のように苦しかったことはなかったという。現状では、家族全員が餓死しかねず、冬が到来してしまい毎日夜も眠れない。何でも胃の中に入れれば最低限、死ぬことはないだろうから、ジャガイモの皮や乾燥させた大根の葉など、市内に住む知人を訪ね歩いてかき集めている」

(参考記事:「禁断の味」我慢できず食べた北朝鮮男性を処刑

 これら地域の住民は、市場での商売で生計を立ててきたが、度重なるロックダウンと市場閉鎖、深刻な不景気、市場への締め付け強化で食べていけなくなり、ジャガイモの皮で食べつないでいるのだ。ここまでの深刻な状況は、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」以降で初めてだという。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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