日本に定着せず?「サイバーマンデー」はどこへいったのか
11月27日、米国ではブラックフライデーに続くオンラインのセールとして「サイバーマンデー」が始まっています。
しかし日本では、サイバーマンデーはあまり定着していないようです。なぜそうなっているのか、これまでの経緯を踏まえて考えてみます。
日本で先行したのはサイバーマンデーだった
近年、日本にも定着しつつあるブラックフライデーは、米国で年末商戦が始まる日として知られており、お店が黒字(ブラック)になるとされています。
これは11月第4木曜日の感謝祭(サンクスギビング)に集まった家族が買い物に出かけるためで、コロナ前は深夜営業をする店舗や、押し寄せた客が特売品を奪い合う場面が話題になることもありました。
その連休明けの月曜日がサイバーマンデーとなり、米国のECサイトでは一斉にセールが始まっています。
一方、日本はどうかというと、ブラックフライデーの盛り上がりに対して、サイバーマンデーのセールはあまり実施されていないようです。
ただ、ここで不思議なのは、日本に「上陸」したのはブラックフライデーよりもサイバーマンデーのほうが先だったという点です。
2012年、アマゾンジャパンは12月の第2月曜日をサイバーマンデーとして日本記念日協会に登録。これ以降、冬のボーナス商戦にあわせて毎年のようにセールを開催していました。
なぜブラックフライデーではなくサイバーマンデーなのか、とアマゾンに聞いてみたところ、当時は「日本でブラックフライデーは一般的ではないから」と説明されていました。
日本には感謝祭の習慣がないこと、音の響きから「ブラックマンデー」を連想させるなどの理由から、筆者は日本でブラックフライデーが普及することはないだろうと考えていました。
しかし2016年にはイオン、2019年にはアマゾンが参入するなど、ブラックフライデーはここ数年の間にすっかり日本で広まりました。「黒いもの」が目玉商品になるといった独自解釈が広まっているのも面白い点です。
その後のアマゾンは、2020年に「Amazonブラックフライデー&サイバーマンデー」という連続した2つのセールになり、2021年には「Amazonブラックフライデー」と、サイバーマンデーの名前はなくなりました。その代わり、ブラックフライデーのセール期間は米国より長くなっています。
今後、何かのきっかけでサイバーマンデーが流行る可能性もないとは言い切れないものの、言葉の由来を考えると、すでに形骸化している印象は否めません。
サイバーマンデーの由来について、米ニューヨーク・タイムズは2005年の記事で「感謝祭の週末にウィンドウショッピングを楽しんだ消費者が職場に戻り、高速インターネット回線で買い物をすることから」と説明しています。
しかしスマホやブロードバンドが普及したことで、オンラインの買い物に月曜を待つ必要はなくなりました。会社のパソコンで個人の買い物をするという行為にも、違和感を覚える人のほうが多いでしょう。
別の視点として、かつて小売業界では実店舗とオンラインの店舗が対立していた時期もありましたが、その後は「クリック・アンド・モルタル」といった言葉が生まれたように、両者は融合する方向に進んでいます。
米国では過去の商習慣からサイバーマンデーは続いているものの、実店舗のブラックフライデーに対するオンラインのサイバーマンデーという意味合いはすっかり薄れてしまったといえるでしょう。
海外のセール事例は
海外におけるほかのセール事例としては、中国では11月11日が「独身の日」として知られており、毎年大規模なセールが開催されています。
2015年から2019年まで、ヤフーやソフトバンクなどが11月11日を「いい買物の日」としてセールを実施していたものの、コロナ禍が始まった2020年からは「超PayPay祭」に移行しています。
英国などでは12月26日が「ボクシングデー」(ボクシングは箱に入れた贈り物のイメージ)として知られており、セールが開催されています。
12月25日はクリスマスで商業施設や交通機関が一斉に休みになるため、翌26日のセールが盛り上がるわけです。日本では新年の「初売り」がこれに近いものといえそうです。