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42年ぶりの快挙! 今年ドラフト1位指名の163キロ左腕投手がいきなりMLBデビューへ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLB公式サイトで公開されたクロチェット投手の特集記事(MLB公式サイトより)

【ホワイトソックスがドラフト1位指名投手を昇格】

 ア・リーグ中地区で1位を走り、すでにポストシーズン進出を決めているホワイトソックスが現地時間の9月18日、出場ロースターの入れ替えを行い、今年6月のドラフトで1巡目指名した、ギャレット・クロチェット投手のロースター入りを発表した。

 すでにMLB公式サイトでも大きく報じられており、シーズン残り10試合でMLBデビューを飾ることになれば、2009年にレッズからドラフト指名を受けたマイク・リーク投手(現ダイヤモンドバックス)以来となる、マイナーリーグを経ずにMLBデビューする選手が誕生する。

 ドラフトがシーズンオフに実施されるNPBではドラフト指名を受けたその年に1軍デビューすることは絶対に不可能だが、シーズン中にドラフトが実施されるMLBならではの快挙といえる。

【プロ未経験でのMLBデビューする投手は42年ぶり】

 実に11年ぶりの快挙だが、MLB公式サイトによれば、リーク投手はドラフト指名を受けた後で契約交渉に時間がかかり、契約合意はマイナーリーグが終了間近の8月中旬だった。

 そのためマイナーリーグには所属していないが、オフにはアリゾナ秋季リーグに参戦し、MLBデビューを飾ったのは2010年シーズンだった。つまりリーク選手はマイナーリーグには在籍していないものの、プロ経験を有していたことになる。

 リーク選手のようにドラフト指名後、マイナーリーグには所属していなくても翌年シーズンにMLBデビューを飾るケースが少なくなく、プロ経験がまったくないままMLBデビューを飾る投手は、1978年のマイク・モーガン投手、ティム・コンロイ投手以来、実に42年ぶりだという。

【最速163キロの速球派左腕】

 クロチェット投手はテネシー大学に在籍する3年生左腕投手だった。身長198センチ、体重98キロの恵まれた体格を駆使して、速球を武器にする本格派として知られてきた。

 2年生シーズンでの平均球速は91~95マイル(約146~153キロ)で、最速も97マイル(約156キロ)に留まっていたが、オフシーズンとなる昨年秋には平均球速は96~101マイル(約154~163キロ)まで上がり、野球専門サイトで全米優秀チームに選出されるなど、今年のドラフトの注目選手の1人だった。

 そして6月10、11日に実施されたドラフトで、ホワイトソックスから1巡目、全体の11番目に指名を受け、454万7500ドル(約4億8000万円)の契約金でホワイトソックスに入団した。

 今シーズンは新型コロナウイルスの影響でマイナーリーグがすべて活動を休止しているため、契約合意後はホワイトソックスの予備ロースターに招聘され、調整を続けながらMLB昇格の機会を窺っていた。

 もし今シーズンが通常通りに実施されていたら、クロチェット投手はマイナーリーグに回る可能性が高く、42年ぶりの快挙もなかったはずだ。これも1つの運命の巡り合わせというしかないだろう。

【クリス・セール式エース育成術で当面は中継ぎ起用か】

 今回クロチェット投手の出場ロースター入りは、中継ぎ投手の故障者リスト入りに伴う補充措置が目的で、MLB公式サイトも当面は中継ぎ投手として起用される見通しだとしている。

 もちろんホワイトソックスとしては将来のエース候補として期待しており、同じくホワイトソックスから2010年にドラフト1巡目指名を受け、チームの大黒柱に成長したクリス・セール投手(現レッドソックス)のように、当面はリリーフとして経験を積ませ(セール投手の場合は2シーズン)、先発に転向させるプランを踏襲していくことになりそうだ。

 MLBデビュー戦の内容次第では、ポストシーズンでホワイトソックスの大きな戦力になりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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