MLBと選手会の確執が再燃?! FA市場が滞っている最大のワケとは?
【MLBは来シーズンも短縮シーズンを希望】
『USAトゥデイ紙』のボブ・ナイチンゲール記者が現地時間の12月15日に配信した記事によると、MLBのオーナーや経営陣は、2021年シーズンの開幕を5月にずらし、140試合以下の短縮シーズンで実施したい方針で選手会と交渉を続けているようだ。
MLB側としてはスプリングトレーニング開始にあたり、選手、コーチを含めた全チーム関係者が新型コロナウイルスのワクチン接種を済ませた上でキャンプ地入りすることを希望している。そのためにはスプリングトレーニングの開始を遅らせる必要があり、シーズン開幕も自動的にずれ込むことになる。
それに伴い、過密日程のMLBでは162試合を消化するのは困難になることから、140試合もしくはそれ以下の短縮シーズンで実施することを模索しているという。
【是が非でも162試合実施を主張する選手会】
もちろん選手会は、MLB側の考えに真っ向から反対し、来シーズンこそ162試合を実施し、選手が年俸全額を受け取れることを切望している。
同記事によれば、選手会は、仮にスプリングトレーニング、シーズン開幕が遅れたとしても、短縮シーズンではなく終了時期をずらしても162試合実施を目指しているようだ。
だがMLB側は、ワールドシリーズを11月下旬や12月上旬に実施することに否定的で、両者の間に深い溝がある中で交渉が続いているわけだ。
今回のMLBと選手会の食い違いは、2020年シーズン実施にあたり交渉決裂した構図とまったく変わっておらず、合意するのは困難な様相を呈している。ただ両者が合意しなければ、来シーズンの実施要項は不透明な状況が続き、結局シーズン開幕が遅れることになってしまう。
【交渉難航の影響を受けるFA市場】
このMLBと選手会の交渉が難航していることで、もろに影響を受けているのが今オフのFA市場だ。もう停滞という言葉で片づけられない状態にある。
米国時間の12月15日時点で、FA選手とメジャー契約を結んだ数は全30チームでたった24件に留まっている(データ元は『the Score』)。
この状況を説明する上で、クリーブランド(本欄では今後同チームの新ニックネームが決まるまで本拠地名を使用する)のクリス・アントネッティ球団社長がメディア向けオンライン会見で発言した内容を引用しておきたい。
「(今オフのチーム編成予算は)具体的な額が決まっているわけではない。現時点では情報が少な過ぎる。我々は様々な状況に対応するため、いろいろなオプションについて検討しているところだ。状況を見極めるためにも、もうしばらくは情報を収集していくことになるだろう」
アントネッティ球団社長の発言は、今回のUSAトゥデイ紙の報道が出る前のことだ。つまり多くのチームが来シーズンの実施要項が決まらない中で予算も組めず、本格的にチーム編成に着手できないでいるのだ。
【サンタナ選手は58%減でロイヤルズ入り】
そこで、ここまでメジャー契約に至った24件の契約内容をチェックしてみたい。
年俸総額が1000万ドルを超えているのは、24人中7選手しかいない。逆に100万ドル未満の契約(年俸調停権を得る前の年俸並み)で合意した選手が、8人もいるのだ。
さらに平均年俸が1000万ドルを超えた契約を得ているのは、ブレーブスと契約したチャーリー・モートン投手(1500万ドル)、ドリュー・スマイリー投手(1100万ドル)、メッツと契約したジェームス・マッキャン捕手(4年4060万ドル)の3選手しかいない。
言うまでもなく、ここまで平均年俸2000万ドルを超える大型契約を結べたFA選手は誰もいない。逆に大幅減額を受け入れた選手は、ロイヤルズと契約合意したカルロス・サンタナ選手だ。
サンタナ選手の2020年シーズンの年俸は、2083万3334ドル(実際の支払額は60試合分の37%)だったが、今回ロイヤルズと2年1750万ドルで合意しており、平均年俸は875万ドルと約58%の減額を受け入れている。
【MLB入り目指す日本人4選手にも影響】
米メディアが報じたところでは、選手会はこうした状況を受け、FA選手に対し希望金額を下回るオファーで契約しないよう通知しているようだ。これもFA市場を停滞させる要因になっていると考えられる。
今オフにMLB入りを目指している、菅野智之投手、有原航平投手、西川遥輝選手、澤村拓一投手の4人も、現状を考えると例年の評価通りの契約オファーを受けられそうになさそうだ。
しかもこのままではシーズン開幕が遅れ、再び短縮シーズンになれば額面通りの年俸を受け取ることもできなくなる。
残念ながら今オフにMLB挑戦を目指すことになった不運を呪うしかない。