首都ワシントンがアマゾンを反トラスト法違反で提訴、テスラは中国内に車両データ保管の施設設置
筆者が注目した海外発最新テクノロジーニュース2本をダイジェストで
[1]首都ワシントンがアマゾンを反トラスト法違反で提訴 価格拘束を問題視
米アマゾン・ドット・コムの電子商取引(EC)商慣行を巡り、米首都ワシントンの司法長官が反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで同社を提訴した。外部の業者が出品するマーケットプレイスで他のサイトよりも安く売るよう指示し、価格を拘束したという。米ウォール・ストリート・ジャーナルなどの米メディアが5月25日に報じた。
訴状によると、アマゾンは2019年まで、米国の業者に対しアマゾンのサイトでの価格よりも安く他のサイトで売ることなどを禁じていた。その後この規定を撤廃し、新たな「公正価格規定」を設けた。だが、それは事実上旧規定と同じ内容だという。
新たな規定では、出品業者は価格を自由に決めることができる。一方でアマゾンは他のウェブサイトをモニターし、業者がもしアマゾンのサイトでの価格よりも安く販売していた場合、アマゾンでその業者の同じ商品を大々的に表示しない。
司法長官は、「アマゾンが結ばせている契約によって、業者は他のサイトでより安価に販売できなくなり、消費者に不利益をもたらしている」と指摘した。
これに対しアマゾンは、「当社は他の小売業者と同様に、割高なものを目玉商品として扱うことはしない。司法長官の主張は、割高な商品を消費者に売り込むよう求めるもので、反トラスト法の本来の目的と逆行する」と反論した。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、今回の提訴は首都ワシントンの法律に違反したとするもので、提訴先は1審にあたるD.C.上級裁判所。連邦法に違反したとして米政府や複数の州政府が連邦裁判所に提訴した米グーグルや米フェイスブックの事例と比較し、訴訟の影響は限定的だという。
[2]テスラ、中国内に車両データ保管の施設設置、国外持ち出し禁止の新規制に対応
米テスラが、電気自動車(EV)から収集したデータを保管するための施設を中国内に設置したと、ロイターやNikkei Asiaが5月26日までに報じた。
車載カメラ・レーダーで集めた情報の取り扱いを巡り、当局の監視が厳しくなっている。同国の新たな規制に対応するという。
中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」への投稿で「データセンターを段階的に拡大し、中国本土で販売された車から発生するすべてのデータを現地で保管する」と述べた。
中国政府は21年5月、インターネット安全法に基づく自動車データ安全規制の草案を発表した。交通量や車両位置情報、車載カメラ映像などのデータを国外に持ち出すことを厳しく制限するもの。中国EV市場に本格参入した米企業であるテスラを念頭に策定されたという。同社はウェイボでこれに言及し「業界標準の導入を強く支持する」と述べた。
米メディアなどは21年3月、中国政府が政府・軍・国営企業の幹部らによるテスラ車の利用を制限していると報じた。車載カメラで周囲の映像を常に録画できるほか、車の利用時間や位置情報、スマートフォンに保存されている連絡先情報なども入手できることが分かったとする。ロイターによると、政府職員の一部は21年5月、テスラ車を政府施設敷地内に駐車しないようにと指示されたという。
テスラは現在、中国人オーナーが車両データにアクセスできるようにするシステムを開発中。また、当局との交渉担当部門を拡大するなど、中国政府との関係強化に力を入れている。