伸びるタブレット、落ち込む電子書籍リーダー…米国デジタル端末の実情
電子書籍リーダーはタブレット型端末の半分にも及ばず
スマートフォンと並びモバイル系デジタル端末として注目を集めているタブレット型端末、そして書籍の新たな革命とも評される電子書籍・雑誌の読み込み専用機として展開する電子書籍リーダー。米国における普及の実情を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2015年10月に発表した、同国内デジタル機器に関する所有・普及状況の現状と推移を調査した結果報告書「Technology Device Ownership: 2015」から探る。
まずは直近におけるタブレット型端末の所有状況。具体的にはiPadやGalaxy、Google Nexus、Kindle Fireが例示されている。Kindleは含まないが、Kindle Fireは該当する。
全体所有率は45%。男女別では女性の方がわずかだが所有率は高い。世代別では中堅層が一番高く6割近くだが、30歳未満でも5割に届く高率を示している。ただし65歳以上でも32%、ほぼ3人に1人が保有している点は注目に値する。
世帯年収別ではきれいな形で高年収ほど高所有率を示し、2倍以上の差が出ている。同様の差異は学歴別でも生じているが、これは世帯年収と学歴との間に連動性があるからと見て良い。
他方、電子書籍リーダー(NookやKindleなど)はタブレット型端末よりもかなり低い値に留まっている。
全体値では19%、女性に限れば22%だが、それでもタブレット型端末の半分に届かない。興味深いのは年齢階層別で、属性による差異がほとんど出ていない。極めて廉価であることから、欲しいと考えている人の手には大よそ届いてしまったのだろうか。年収・学歴別ではタブレット型端末同様の差が出ているだけに、この年齢別の平坦化は電子書籍リーダー特有の動きとして、大いに注目したいところ。本好き≒電子書籍好きはどの年齢層にも一定率存在している、のかもしれない。
有意な下落を示す電子書籍リーダー
電子書籍リーダーの所有率動向は注目に値する。次のグラフは過去の調査結果も含めた所有率推移を示したものだが、タブレット型端末がやや歩みを遅くしたもののなお成長を続けているのに対し、電子書籍リーダーは急速な落ち込みを見せてしまっている。
直近の落ち込みを示した調査結果のひとつ前の調査は1年近く前のもので、期間が開いているから中期的な落ち込み傾向に見えるだけ、実際には調査一回分の下落でしかないと考えることもできる。しかしその前の調査結果24%よりもさらに値は低く、同等値を示したのは2年以上前の2012年11月。単なる誤差としては大きすぎ、そもそも下落に転じるぶれ方は、トレンドが変わった可能性が多分にある。
報告書ではこの減退に関して「電子書籍リーダーの人気は落ちた」と評しているものの、その具体的理由に関する説明は無い。恐らくはタブレット型端末の廉価化で、電子書籍リーダーをわざわざ別途購入する必要が無くなったのが主要因だと考えられる。何らかの形で次の調査機会があった際に、この値がどちらに向けて動くのか、大いに注目したいところだ。あるいは日本でも、同じような現象が起きるかもしれない。
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