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動画、コミュニケーション、検索…パソコンとスマホで大きく異なるネットの使い道

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 得手不得手はあれどスマホもツールの一つ。何をするかは利用者次第。(写真:アフロ)

パソコンは情報検索、スマホは音楽に動画にゲームに対話

スマホもケータイもパソコンも道具の一つでしかなく、それで何をするか、何ができるのかが要であることは言うまでもない。それぞれで子供たちは何をしているのか、その実情を内閣府が2017年3月に確定報を発表した「平成28年度青少年のインターネット利用環境実態調査結果」(※)の報告書データをもとに探る。

次に示すのはデスクトップパソコン、ノートパソコン、従来型携帯電話、スマートフォンそれぞれでインターネットを利用している人における、その端末による利用内容を示したもの。普段からその目的で利用していると認識した項目に答えてもらっている。「コミュニケーション」とは電子メールやメッセンジャー、ソーシャルメディアなど、他人との意思疎通ができるサービス全般を指す。

↑ インターネットで何をしているか(該当機種で、小中高校生全体・該当機種でネット利用者限定、2016年)
↑ インターネットで何をしているか(該当機種で、小中高校生全体・該当機種でネット利用者限定、2016年)

パソコンではデスクトップやノートのような形状による違いはあまり生じておらず、従来型携帯電話・スマートフォンとは大きく使われ方が異なる状況が確認できる。また従来型とスマートフォンでは差異が大きな項目がほとんどで、機種の性能による利用目的の違いが明確化している(ほぼ同数なのはコミュニケーションぐらい)。

パソコンでは情報検索や動画視聴がメイン、ゲームなどがほとんど。コミュニケーションやニュースなどはあまり行われていない。一方で従来型携帯電話はコミュニケーションが多分で、他項目は押し並べて低め。機能そのものがスマートフォンと比べて低く限定されており、現在のサービスが対応していない場合が多いことから、子供達の間では電子メールなどのコミュニケーションに限ったツールとして使われている実情が分かる。あるいはそれこそが、端末を提供する保護者側の思惑なのかもしれない。

他方スマートフォンはコミュニケーションをはじめ、ゲームや動画・音楽視聴、情報検索など利用方法は多種多様。ニュースの取得や地図・ナビゲーションの活用面でも大いに利用されている。さらに電子書籍も15.1%と高めな値(パソコン以上)が出ているのは注目に値する。

これを全体比で算出したのが次のグラフ。上記が「その端末でインターネットを利用する人における利用性向」であるのに対し、こちらは全体に占める割合。それぞれその端末でインターネットを利用する人の割合から逆算している。例えばスマートフォンではコミュニケーションの項目は40.1%とあるので、小中高校生全体の4割は、スマートフォンでコミュニケーションをしている形となる。子供達の実態を全体的に見る時に役立つ値といえる。

↑ インターネットで何をしているか(該当機種で、小中高校生全体、2016年)
↑ インターネットで何をしているか(該当機種で、小中高校生全体、2016年)

コミュニケーション以外でも3割強がゲームや動画・音楽視聴、情報検索をスマートフォンで実施している。「小中高校生全体の3割から4割は、スマートフォンを使って情報のやり取りをしたり検索したり、動画や音楽を楽しんだり、さらにはゲームをしている」との現状は、数年前には到底想像も出来なかったに違いない。さらに2割近くがスマートフォンで地図・ナビゲーションを活用したり、ニュースを取得している。ノートパソコンによる利用状況も動画視聴や情報検索などでそれなりの値が出ているが、スマートフォンの利用状況の前にはかすんでしまう。

高校生限定値を算出

今件を高校生に限定して確認したのが次のグラフ。まずは各端末でインターネットを利用している人限定による値。

↑ インターネットで何をしているか(該当機種で、高校生全体・該当機種でネット利用者限定、2016年)
↑ インターネットで何をしているか(該当機種で、高校生全体・該当機種でネット利用者限定、2016年)

小中高校生全体と比べ、各項目の回答率が高く、それぞれの機種を使いこなしていることがうかがえる。自分自身の端末を所有していたり、保護者から許諾された事例も多いことが予想されるが、特にパソコンで情報検索や動画視聴、ニュースの取得など積極的なアクセスが求められる項目で、パソコンの利用率の高さが確認できる。ただしゲームの項目は低めで、パソコンのゲームへの興味は高校生では鎮静化しているように見える。

これを高校生全体比で見たのが次のグラフ。元々スマートフォンの所有率は高く、パソコンは低めなため、当然全体比ではスマートフォンの値が高く出ることになる。端末自身を利用していない、利用していてもインターネットへアクセスしていなければ、「該当端末を用いてインターネットで何をしているか」の設問では回答のしようが無い。

↑ インターネットで何をしているか(該当機種で、高校生全体、2016年)
↑ インターネットで何をしているか(該当機種で、高校生全体、2016年)

高校生全体の8割強はスマートフォンでコミュニケーションを取り合い、7割強は音楽や動画視聴をし、6割強はゲームや情報検索をし、4割強はニュースの取得をしている。電子書籍の閲読やショッピングも2割前後が実施している。パソコンは精々情報検索や動画視聴で1割強程度。そのまま社会人となり、あるいは大学に進学する、成人間近な高校生たちが、少なくとも現状ではこのような状況にあることを、再認識させられる次第ではある。

パソコンとスマートフォンで利用性向が大きく異なるのは、画面の大きさや操作性、機動力の違いによる得手不得手から生じるもの。見方を変えればスマートフォンでメインとなるような機能でインターネットの利用は十分だと考えているからこそ、今の子供たちはパソコンの必要性を見いだせない、距離を置いているのかもしれない。

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※青少年のインターネット利用環境実態調査

直近年分は2016年11月5日から12月11日にかけ満10歳から満17歳までの青少年とその同居保護者それぞれ5000人に対し、調査員による個別面接聴取法(保護者は訪問配布訪問回収法)で行われたもの。時間の調整ができない場合のみウェブ調査法(保護者は加えて郵送回収法)を併用している。有効回答数は青少年が3284人(うちウェブ経由は108人)、保護者は3541人(うちウェブ経由は55人、郵送回収法は34人)。過去の調査もほぼ同様の様式で実施されている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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