金正恩の軍隊が中学生を殺害…背景に「学校の上納金」問題
北朝鮮が強調する「軍民関係」。これは朝鮮人民軍(北朝鮮軍)と民間人の良好な関係を指し、それを毀損する行為は処罰の対象となっている。
しかし最近では、まともに配給を得られない軍の兵士らが、食べ物欲しさに民家や農場に押し入って集団で盗みを働くなどして「馬賊」呼ばわりされる始末。その反面、自分たちのものが盗まれそうになったら、相手を殴り殺してしまうのだという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
両江道(リャンガンド)の情報筋によると、事件が起きたのは今月4日昼のこと。三池淵(サムジヨン)市の通南里(トンナムリ)に8総局(軍需動員総局)の車両が停められていた。市内の胞胎洞(ポテドン)にある部隊の副業地(畑)に食糧を届けた後、恵山(ヘサン)市劔山洞(コムサンドン)の部隊に丸太を積んで戻る途中、乗っていた兵士たちは、酒と食事を販売している通南里の店で食事をしながら酒を飲んでいた。
地元の中学生4人は、その車からガソリンを盗み出そうとしたが、5人の兵士に見つかってしまった。中学生のうち1人が逃げ遅れ、兵士たちから激しい暴行にあった。結局、この中学生は亡くなってしまい、兵士たちは現場から逃走した。
別の情報筋によると、逃げおおせた3人の中学生は安全部(警察署)に逮捕され、取り調べを受けた。犯行動機として彼らが語ったのは、学校に支払うカネを調達するのが目的だったということ。
新学期を迎え三池淵市教育部の検閲(監査)を控えた通南里中学校は、生徒にペンキとニスを供出するか、4000北朝鮮ウォン(約64円)を納めることを要求した。
「田舎の中学生が、一体どこでペンキとニスを手に入れられるというのか」(情報筋)
ペンキもニスもカネもなかった中学生らは、ちょうど停まっていた車からガソリンを盗んで売り払い、そのカネを学校に納めようとしたというわけだ。
金正恩総書記が強く諌めたこのような「税金外の負担」であるが、全くと言っていいほど守られておらず、市民は地元当局、勤め先、学校など自分の所属するところから、様々な名目で金品を要求される。その中には、「軍民関係を良好に保つ」ために兵士たちに食べ物を差し入れるというものも含まれている。
中学生を死なせた兵士5人は、恵山市警務部(憲兵隊)で取り調べを受けた。軍民関係を毀損する行為とされたら、厳罰に処される可能性もあるが、今のところ、どのような処分が下されたかはわかっていない。