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ラグビー日本代表リーチ マイケル主将が国際試合86試合目にして、初めて「4」番を背負った理由

斉藤健仁スポーツライター
テストマッチで初めて4番を背負って先発したリーチ主将(撮影:斉藤健仁)

7月13日、宮城・ユアテックスタジアム仙台で、エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)の率いるラグビー日本代表(世界ランキング12位)は、再任後2戦目となるテストマッチ「リポビタンDチャレンジカップ2024」でジョージア代表(同14位)と対戦した。

日本代表は前半3分に先制トライを挙げたが20分、FWの選手が危険なプレーで退場となり、数的不利に。それでも後半持ち直して、後半24分に23-18と逆転に成功。しかし、もう一人、イエローカードでFWが退場した影響もあり、FWの強いジョージア代表に23-25で逆転負け。新生日本代表としてテストマッチでの初白星はおあずけとなった。

キャプテンのLOリーチ マイケルは「若い日本代表にとってイングランド代表戦、ジョージア代表戦の2戦はとても財産になった。自分たちの強みである部分と弱点の部分がこの2試合でわかって良かったと思います」と前を向いた。

慣れ親しんだ6番ではなく4番を背負ったリーチ(撮影:斉藤健仁)
慣れ親しんだ6番ではなく4番を背負ったリーチ(撮影:斉藤健仁)

◇東海大学時代以来となるLOとしての先発だった

実はリーチキャプテンは日本代表として86試合目で、初めて6番(左フランカー)や8番(ナンバーエイト)ではなく、4番、つまり左ロックとして初先発した。リーチはLOとして先発するのは東海大学以来のことで、東芝ブレイブルーパス東京、チーフス(ニュージーランド)でもなかったことだ。

ジョーンズHCは「(リーチは)今週に関してはベストな4番です。最高のキャプテンですし、彼がチームにいてくれることは大変喜ばしく思っています。選手として、その姿勢や練習のやり方も含めて、4番としてスクラムを組んでもらいます。第4のバックロー(FL/NO8の総称)のようなプレーを期待しています」と送り出していた。

指揮官の言葉通り、リーチは攻守にわたりフランカーのようなプレーでチームを鼓舞し、スクラムもテストマッチでは初めてのロックの割には無難に組んでいたように見えた。逆転負けしてしまったがLOリーチは初めて「4」番を背負って、80分戦った試合をこう振り返った。

「(LOとしてのプレーは)良かったと思います。80分、通してできたかな。スクラムはプロップ陣に話すと悪くないとフィードバックをもらった。練習では日本代表同士で組むので、ジョージア代表と組んで学びになった。スクラムはどんどん対策しないといけない。バインドのタイミングなど駆け引きを将来的にものにしたい

ジョージア戦のスクラム、前半は優勢だったが、後半はプレッシャーを受けた(撮影:斉藤健仁)
ジョージア戦のスクラム、前半は優勢だったが、後半はプレッシャーを受けた(撮影:斉藤健仁)

◇「自分の引き出しは少し増やせるんじゃないかな」

最多タイとなる4度のラグビーワールドカップ(W杯)に出場しているリーチ。リーグワンの決勝でも出色の出来を見せたが、現在35歳。2027年W杯は38歳で迎える。

2月の福岡でのトレーニングキャンプでもジョーンズHCはリーチに関して「リーチとはちゃんと話をしています。彼には『あなた10番だよ、6+4は10だよ』と言いました。ブラインドサイドフランカー(6番)とあと左のロック(4番)でプレーができる選手を私たちも求めています」と話していた。

ロックへの挑戦を示唆されたリーチは「エディーからはこれから4番、6番(をやると言われた)。自分の引き出しは、少し増やせるんじゃないかなと思います。(エディーには)テストマッチにバックローが多くいた方が勝てるということを話されました。(その方が)よりいいラグビーができる。

問題はスクラムですね。スクラムを組める自信はないですが、スクラムを組めるようになれば自分の武器になると思います。歳を取って、長くやっていくにはいろんなポジションができたら一番いいですね」と前向きに捉えていた。

そして迎えた6月上旬、宮崎合宿が始まると、ロックに入ってスクラムを組んでいるリーチの姿があった。まだまだリーチが入った側のスクラムが押されているように見えた。

それでも35歳の〝新人〟ロックは「(ロックでスクラムを組んでみて)あらためてフロントロー、ロックってすごいなと思います。別のポジションなので感覚を掴むまであと100回くらい組まないとわからないと思います。ただ初日に比べたら成長しています」と笑顔を見せていた。

ロックでのプレーも磨き、5度目のW杯出場を目指すリーチ(撮影:斉藤健仁)
ロックでのプレーも磨き、5度目のW杯出場を目指すリーチ(撮影:斉藤健仁)

◇前人未踏、5度目のワールドカップ出場を目指す!

その後の宮崎合宿でもリーチはフランカーだけでなく、ロックとしてスクラム練習を積んでジョージア代表戦を迎えた。

リーチはイングランド代表戦の前に、再びジョーンズHCに日本代表のキャプテンに指名されて「もちろんやりたいと思ったし、新しい超速ラグビーと、ラグビーの革命を起こすエディーさんと(キャプテンとして)やりたいと思った。今まで通りのプロセスだと結果が出なかったので、自分の中でよりよくするためにやってきてキャプテンになったので、キャプテンをやることにワクワクはあります。もちろん(またキャプテンになって)責任を感じていますし、光栄に思います」と意気込んでいた。

その一方で、この会見でリーチは「20番をやります」と少し弱気とも思える発言もしていた。20番とは控えのFWの背番号である。

ベテランであり経験豊富なリーチはチームにとって精神的な支柱で、必要不可欠な存在である。ただジョーンズHCは2027年W杯で38歳になる選手を考慮すると、バックローだけでなく、ロックとしてもテストマッチレベルでプレーできた方がいい、試合によってはフランカーとロックの両方でプレー可能な控えFWとしての起用を考えているというわけだ。

日本では主に6番、ニュージーランドでは主に8番としてプレーしてきたリーチ。新生エディー・ジャパンでロックという新たなポジションに挑み、日本代表として前人未踏の5度目のワールドカップ出場を目指す。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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