相次ぐ新型コロナワクチン重複予約、苦しむクリニック
ドタキャンが横行
高齢者への新型コロナワクチン接種がスピーディにすすみ、若い世代に対してもワクチン接種の予約が開始されつつあります。
高齢者の予約に際して、少し片鱗がありましたが、現在クリニックが苦慮しているのは「重複予約」です。接種を受ける側が予約を複数おさえておいて、都合がよい会場にだけ行くという作戦なのですが、これは絶対にやめていただきたい行為です。
現在、接種希望数に対してワクチン供給量が追い付いておらず、今後一時的に予約が中止される可能性があります。そうなると、予約枠の争奪戦が起こるかもしれません。
クリニックの個別接種で用いられるワクチンは、ファイザー社製です。方法は自治体によって異なりますが、たとえば2週間に1回程度、必要な瓶の数を発注して、シリンジや注射針とともにワクチンが納入されます。ワクチン1瓶あたり6人分が含まれています。
当初、ファイザー社製のワクチンはマイナス60~90度という特殊な冷凍庫を用いて保管する必要がありましたが、その後安定性試験などを経て、現在は通常の冷凍庫の温度でも保管できるようになりました。そのため、クリニックがその日に使用し始めない限り、基本的にワクチンが無駄になることはありません。
しかし、使用日にワクチンを調整した場合、6人分を使い切る必要があります。つまり、誰か1人でも突然キャンセルするとワクチンが破棄される可能性があるのです。
このドタキャンが横行しているのが現在の問題です。
「他の病院で接種できたので、今日のワクチン予約は無しで」「集団接種にしたので、キャンセルで」と直前に電話しても、残りの5人はすでに来院予定になっているわけですから、残り1人をどうにかして探さないといけません。
悪質なケースでは、予約を取り消さない人たちもいます。ワクチン接種日に来院しないので電話したところ、「もう別の病院で接種しました」との返答があるパターンも。
クリニックのスタッフの負担
接種予約枠が多いクリニックほど必然的にキャンセル数が増えます。そうなると、クリニックのスタッフが予約希望者に個別に連絡をして、前倒しで接種できるかどうか確認していく、というアナログな作業を行う必要があります。
クリニックのスタッフは、当然それ以外の業務も並行します。外来患者さんの会計や、通常診療の予約など、やることはいっぱいです。その合間を縫って、足りない接種者を確保するために電話をかけないといけません。
重複予約ができてしまう原因として、ワクチン接種の予約システム自体が一元化していないことが挙げられますが、こればかりはクリニックに非はありません。
周辺のクリニック同士で連携して、接種者を6の倍数にするという案もありますが、新型コロナワクチン事業は協力金が発生するので、そう簡単に他院と協力できる仕組みにはなっていません。
重複予約および連絡なしのドタキャン。レストランの予約をしておいて、何も連絡なしにキャンセルする行為と何ら変わりありません。一人ひとりのモラルが問われます。