武豊騎手も参戦するサウジアラビアだが、最も期待出来るのはディアドラだ!!
第1回サウジカップには北米から一流馬が参戦
現在サウジアラビアでこの原稿を執筆している。現地29日、キングアブドゥルアズィズ競馬場で行われるサウジカップを取材するためにこの地に滞在しているのだ。
サウジカップは今回が第1回目。ダート1800メートルの舞台に総賞金2000万アメリカドル。1着賞金は1000万アメリカドルだから約11億円か。破格の賞金設定であり、日本からはクリソベリル(牡4歳、栗東・音無秀孝厩舎)とゴールドドリーム(牡7歳、栗東・平田修厩舎)の2頭が出走をする。すでに現地入りしている両頭だが、正直、厳しい戦いになりそうだ。と、言うのも“お金のあるところに良い馬が集まる”のは道理であり、このレースにもダート王国アメリカのトップホース達が名を連ねて来た。
昨年のケンタッキーダービーでは1位に入線しながらも降着となってしまったマキシマムセキュリティ(牡4歳)。その後、疝痛で休養を余儀なくされるなど紆余曲折があったが、シガーマイルH(G1)ではBCダートマイル(G1)の勝ち馬スパントゥランに3馬身半差をつける圧勝劇。復活ののろしをあげてここに臨んできた。
伯楽ボブ・バファートはマッキンジー(牡5歳)とムーチョグスト(牡4歳)の2頭を送り込んで来た。前者はBCクラシック(G1)こそ2着に敗れたが、1800メートルではG1を2勝、後者はペガサスワールドC招待S(G1)の覇者だ。他にも昨年の最優秀ダート古馬牝馬のタイトルを持つミッドナイトビズー(牝5歳)に芝のG1ホースであるベンバトル(牡5歳)が前走でダートを使って勝利。ここに駒を進めて来た。
同じく芝のG1馬であるマジックワンド(牝5歳)はさすがにダートでは苦戦と思われるが、それでも他の出走馬の層が厚いのは疑いようがない。国内では6戦全勝でG1・チャンピオンズCも制しているクリソベリルをしても、勝つのは容易ではないだろう。
武豊は森厩舎の2頭で参戦
また、森秀行厩舎は昨秋のブリーダーズC同様マテラスカイ(牡6歳)とフルフラット(牡3歳)を現地入りさせている。前者がサウジアスプリント(ダート1200メートル)、後者はサンバサウジダービーC(ダート1600メートル)に出走するが、ここも層こそ厚くはないものの、実績に優る馬がいて、簡単なレースにはなりそうにない。昨年のドバイゴールデンシャヒーン(G1)でマテラスカイを2着に好走させた武豊騎手の天才的な手綱捌きに期待したい。
ディアドラには負けて欲しくない相手関係
これに対し、かなりの確率で好走必至と予想出来るのがネオムターフカップ(芝2100メートル)に出走する日本馬ディアドラ(牝6歳、栗東・橋田満厩舎)だ。何が起こるか分からないのが競馬なので、もちろん楽観視は禁物だが、正直、他の出走メンバーを見渡す限り、負けて欲しくない相手関係と言える。9頭立て、つまり8頭の相手の中にはG1馬のインテロジャント(牡5歳)などもいるが、この馬の持つビッグタイトルは2018年のジャンプラ賞であり、その後は不振といってよい競馬が続いている。アイルランドの伯楽A・オブライエンが送り込んできたマウントエヴェレスト(牡4歳)はグローリーヴェイズが優勝した昨年の香港ヴァーズで最下位14着に敗れた馬だ。他の出走馬もいわゆる“昔の名前で出ています”というタイプだったり、完全に格下だったり……。ポートライオンズ(牡5歳)こそ近走は1着続きだが、いずれもバーレーンでのローカルG1やローカルG2。バーレーン移籍前のアイルランド時代の成績は褒められたものではなく、正直、日本の女王とはかなりの力差があると見て良いだろう。
肝心のディアドラ自身の状態に関しては管理する橋田満調教師が次のように語る。
「イギリスのニューマーケットをベースにして遠征する形が完全に板について、今回も良い状態を保てていますね。寒い時期は走らない点がどうかですが、追い切りの動き自体は良かったので、力を発揮してくれると思います」
1か月後のドバイに関してはすでにお断りを入れており、まずはここに全力投球となる模様。先にも記したように競馬なので何が起きるか分からない怖さはあるものの、是非、昨夏のナッソーS(G1)の時のように優勝、いや、それ以上の楽勝をして今年の初戦を飾っていただきたい。
(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)