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大谷翔平が受賞した『AP通信年間最優秀男性アスリート』とはどのくらい権威がある賞なのか?

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
AP通信年間最優秀男性アスリートに選ばれた大谷翔平(写真:三尾圭)

 10年総額7億ドル(約1015億円)の超大型契約でロサンゼルス・ドジャースに加入した大谷翔平が、2023年度の『AP通信年間最優秀男性アスリート(AP Male Athlete of the Year)に選ばれたと12月21日(日本時間22日)に発表された。

 大谷は2021年にも同賞に選出されているが、この賞はどんな賞で、どれほどの権威があるのだろうか? 過去の受賞者や歴史を紐解きながら、同賞の価値を深掘りしていきたい。

AP通信とは?

 まず、同賞を与えているAP通信だが、正式名称は「Associated Press」と言う非営利の通信社で、世界最大の通信社。AP通信はメジャーリーグの全試合に記者とフォトグラファーを派遣して、全試合の記事と写真を世界中の加盟社に配信している。

初代受賞者

 『AP年間最優秀アスリート賞」は1931年に創設された歴史ある賞で、ユニークなのは創設時から男性アスリートと女性アスリートを分けて表彰していた点。1931年の第1回受賞者は、男性がワールドシリーズで打率5割を記録してセントルイス・カージナルスの世界一に貢献したペッパー・マーティン、女性は同年に100m、400m、1500mの自由形3種目で世界新記録を樹立したヘレン・マディソンが選ばれた。

全ての競技から受賞者を選出

 男女別に賞を分けている点以外に、もう一つユニークな点が、異なった競技の中から受賞者を選出していること。同じような賞として、アメリカで最も権威があるスポーツ雑誌と呼ばれる『スポーツイラストレイテッド』誌が選出する『スポーツイラストレイテッド・スポーツパーソン・オブ・ザ・イヤー』賞があるが、こちらは男女の区別はなく、始まったのも1954年とAP通信よりも20年以上も遅い。
 AP通信もスポーツイラストレイテッド誌もアメリカに拠点を置くので、アメリカ国内のスポーツ界に大きなインパクトを与えた選手か、オリンピックなどの国際舞台で大活躍したアメリカ人選手が選出される。

 多くのスポーツを現場で取材しているAP通信のスポーツ記者が選ぶ同賞は、アメリカ国内での権威は高く、選手にとってこの賞を手にするのは大きなステータスでもある。

大谷の受賞は日本人初?アジア人初?

 大谷は2021年にも同賞を受賞しており、今回が2度目の受賞になるが、日本人初の受賞者は大谷ではない。

 大谷が1度目の同賞に選ばれる前年の2020年に、自身2度目となるUSオープンテニスを制した大坂なおみが女性部門で選出されており、彼女が日本人初の受賞者である。

 アジア人初の同賞受賞者は、台湾出身の陸上選手、紀政(チ・チェン)で、1970年の女性部門で選ばれている。カリフォルニア州立工科大学ポモナ校に留学していた。1970年には5つの短距離種目で世界記録を樹立して、アジア競技大会では100m走で金メダルを手にした。

 アジア人選手としては他にも、女子ゴルフの朴セリが全米女子プロ選手権と全米女子オープンの二冠に輝いた1998年に同賞を受賞している。

 大谷は日本人初、アジア人初ではないが、男性部門に限れば、日本人初、アジア人初の受賞者であり、同賞に2度選ばれた日本人選手、アジア人選手も大谷だけである。

最多受賞選手は?

 過去の受賞者を見てみると、その年のアメリカンスポーツ界で最も活躍した選手が選ばれており、アメリカンスポーツ界の顔となる選手ばかりである。野球界だけでなく、他のスポーツ界で活躍する選手と比較しながら選ばれるが、この賞の価値を高めている一因である。

 大谷は2度目の受賞となったが、最多受賞者は女子ゴルフと陸上の二刀流選手として活躍したベーブ・ディドリクソンの6度。五輪の陸上競技で金メダルを2つ、女子ゴルフのメジャー・トーナメントで通算10勝を記録したディドリクソンの同賞初受賞は1932年で、1954年に6度目の賞に選ばれた。

 今世紀に入ってからはテニスのセリーナ・ウィリアムズが女子部門で5度受賞している。

 男性部門での最多は、自転車競技のランス・アームストロング、ゴルフのタイガー・ウッズ、バスケットボールのレブロン・ジェームズの4度が最多。

 史上最高のバスケットボール選手と呼ばれるマイケル・ジョーダンは意外にも3度しか受賞していない。

 野球界での複数受賞者は、大谷以外だと、ドジャースの大先輩である伝説の左腕投手、サンディー・コーファックスが2回。

 ドジャースと10年契約を結んだ大谷は、今後も同賞に選ばれる可能性は高く、タイガーやレブロンに肩を並べ、追い越すかもしれない。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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