財務省幹部に直撃!「安倍首相答弁が改ざんに関係」との発言巡る一問一答
森友学園への国有地8億円値引き売却を巡る、安倍首相の「私や妻が(学校の認可や国有地取引に)関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」という答弁。これがその後の公文書の改ざんに関係があったと、内部調査の取りまとめ役だった当時の財務省秘書課長が発言し、答弁が改ざんを引き起こしたと事実上認めていたことが、9日発売の週刊文春と大阪日日新聞で明らかになった。
安倍首相の答弁はやはり改ざんの引き金になったのだ。改ざんに関わった誰かが内部調査の過程でそのように話したに違いない。それは誰か?
真っ先に思い浮かぶのは、改ざんを強要され命を絶った財務省近畿財務局の上席国有財産管理官 赤木俊夫さんの手記で「すべては佐川氏の指示」と名指しされた佐川宣寿元財務省理財局長。さらに佐川氏の指示で現場に改ざんを押しつけたとされる中村稔理財局総務課長(当時)や田村嘉啓国有財産審理室長(当時)の名前も浮かぶ。
私はこのことを調査の責任者だった伊藤豊 財務省秘書課長(当時・今は金融庁監督局審議官)に聞くため、自宅のそばで待ち構えた。
春爛漫の4月3日(金)朝、そして6日(月)の朝。菜の花が咲き誇る江戸川の川縁からほど近い住宅街。伊藤氏の自宅のそばで、出てくるのを待ったが出てこなかった。もっと早く出たのだろうか? 2度続けて空振りした私は、その夜、最寄り駅で帰宅を待ち受けることにした。
財務省幹部に直撃取材 一問一答詳細
6日夜11時54分。伊藤氏が駅の改札を出てきた。ついに姿を捉えた。直撃取材だ。駅から少し離れた路上で近づき声をかけた。その一問一答をここにご紹介する。
相澤)伊藤さん、すみません、夜遅くまで。はじめまして。私、相澤と申します。大阪日日新聞の記者で、この前、週刊文春で赤木俊夫さんの手記を…
伊藤氏)ええっ、こんなとこまで?私のとこまで来られたんですか?
相澤)調査報告書をまとめた責任者の方ですから、ぜひお会いしたいと思いまして。
伊藤氏)いやいや、役目も離れてますから。
相澤)当然、2年前に調査された時に、俊夫さんの手記はお読みになっていると思いますけども、今、赤木昌子さん(俊夫さんの妻・仮名)があの手記を公表されて、そのことをどういう風に受けとめていらっしゃいますか?
伊藤氏)いやもうちょっと、今、財務省の人に迷惑かかるといかんので。
相澤)当時、佐川さんにですね、当然調査をされてると思うんですけどね。
伊藤氏)いやちょっと、勘弁してください。
相澤)いやいや、佐川さんに調査をしないっていうことはありえないじゃないですか?
伊藤氏)いやいや、私に対するインタビューは勘弁してください。答えなくてもいいですか?
相澤)もちろん、取材をお断りする自由はありますので。
伊藤氏)じゃあ、そうさせてください。
相澤)ええ。ただ私もお聞きする自由はありますので。
伊藤氏)だからもう答えないので。
相澤)佐川さんのような立場の方になると、おそらく伊藤さんご自身がお話をお聞きになったんじゃないかなと思うんですけども。
伊藤氏)…答えなくていいですか?
相澤)答えないのはもちろんご自由です。
伊藤氏)聞かれるのも困るので。ずっと一方的にしゃべってるのも困るでしょ?
相澤)いやいやいや、取材に答えない自由はもちろんあるんです。
伊藤氏)それじゃずっと一方的に話すんですか、私に?
相澤)そうです。
伊藤氏)(立ち止まってこちらを振り向きながら)やめてくださいよ、そんなの~。
相澤)それでね、あの年の10月28日に赤木さんの所にお伺いして…
伊藤氏)どうやって断ればいいんですか?
相澤)だから、取材を受けませんと言うのはもちろん権利ですから自由なんです。ただ私には逆に取材をする権利はあるわけです。
伊藤氏)でも、受けないって言ってるところに一方的に話すというのはどうして?
相澤)ですからどう振る舞うかはもちろん伊藤さんのご自由ですけども。
伊藤氏)じゃあ、一応私も立場を離れているので、今家に帰ろうとしてるので、家までついてきてくれるのやめてくれますか?
相澤)ここで全部お話しして頂けるんだったらやめます。
伊藤氏)ああ~。だから僕も相澤さんにとっては取材対象でしょうから断る自由があるでしょ?
相澤)だから断ることは自由です。
伊藤氏)断ってるのにずっと話しかけるのはおかしくないですか?
相澤)いや、おかしくありません。私も取材する自由があるから。
伊藤氏)じゃあ、無言でずっと家まで入ったらどうするんですか?
相澤)いや、家の中まで押しかけるなんてしませんから。
伊藤氏)わかりました。
(足早に家へ向かい始めた伊藤氏に、横を歩きながら話しかける)
相澤)10月28日に赤木昌子さんの家に訪れた時に、伊藤さんは「安倍首相の、私や妻が関与していたら辞めるという答弁が改ざんと関係あった」とおっしゃっていますけれども、それは当然、佐川さんなり、改ざんに深く関わった方が話をしているからそういう風に言うわけですよね?
伊藤氏)(無言で歩く)
相澤)答えないということは、否定をしないということです。否定をしないということは、この場面では、認めたということになるんですよ。これは認めたということで解釈してよろしいですね?
伊藤氏)いやいや、こんなとこでけんかする必要まったくないんで、僕は紳士的に振る舞いたいと思ってるんです。だけど僕が相澤さんの取材に答えると、後輩に、今一生懸命対応しようとしている財務省の人間に迷惑がかかるといけないので、イエスもノーも言いたくないし、認めたくもないし、何もしたくないので。
相澤)今、伊藤さんがおっしゃった気持ちはわかります。財務省の後輩に迷惑をかけてはいけないと。でも赤木昌子さんには迷惑かけてもいいんですか?赤木昌子さんはそれを知りたいとおっしゃってます。わたしはこれを赤木昌子さんに成り代わって聞きに来ています。
伊藤氏)それは相澤さんが今ここでおっしゃってるだけで、僕はそれを確かめるすべがない。
相澤)ありますよ。赤木昌子さんのとこに行けばいいじゃないですか。行って「あなた本当にこれ知りたいんですか?」って聞いたらすぐわかります。
伊藤氏)ナンセンスでしょう。
相澤)ナンセンスじゃない。だって実際行ってるじゃないですか。
ここからしばし、答えたくない、否定しないのをもって認めたと捉えるのは変だ、あなたの勝手な質問に答える気はない、という応酬があって…
相澤)じゃああなたは赤木昌子さんの質問を拒否するということですね?
伊藤氏)そんなことも言ってなくて、僕はあなたの質問に答えたくないので。
相澤)でも赤木さんのところに行って確認する気はないと。
伊藤氏)あなた勝手に私が答えないことについて勝手な解釈をするのもやめてください。
相澤)勝手な解釈じゃなくて、さっき赤木昌子さんのところに行けばわかりますと言ったら「ナンセンス」と言いましたよね。
伊藤氏)失言です。あなたの質問に答えたくないので言ってるだけで、言葉尻を捉えるのもやめてください。
相澤)じゃあ行く気があるんですか?赤木さんのところに行って説明するんですか?もう一度。
伊藤氏)あなたに対して答えないと言ってるだけなので。
相澤)あなたは赤木さんのところに行ったときに報告書を持っていかなかったそうですね。報告書を持っていかずに報告書の説明に行ったそうですね。
伊藤氏)(足を止めてこちらに向き直って)警察を呼びますよ。
相澤)どうぞ、呼んで下さい。
伊藤氏)(携帯電話を取り出しながら)呼びましょう。
相澤)何の違法行為があるんですか?
伊藤氏)つきまとわれてるので。
相澤)これはつきまといじゃない。取材です。
伊藤氏)(しばし黙り込む)
相澤)警察呼んでもいいですよ。警察署で話しましょうか?警察の人の目の前で。
伊藤氏)(警察を呼ぶことなく、黙って自宅へと歩み始める)
相澤)(背後から)伊藤さん、あなたは不沈空母に乗っていると思ってらっしゃるようですけど、その空母は沈みかけていませんか?それに気づいた人は逃げ始めてますよ。
伊藤氏)(自宅の前で)家には来ないんでしょ?
相澤)家の中には行きません。では、おやすみなさい。
伊藤氏)どうも。
相澤)どうもお疲れ様でした。夜遅くまで。
伊藤氏)(自宅に入る)
翌朝 再び接触
翌朝、私は始発電車が出る5時前から伊藤氏の自宅のそばで待った。昨夜はいきなりの直撃でとげとげしい雰囲気のまま終わり、初対面なのに名刺もお渡ししていなかった。改めてきちんとあいさつするためだ。
朝6時20分ごろ、伊藤氏が自宅から出てきた。家のすぐ前では接触せず、少し離れた路上で近づいた。
相澤)おはようございます。
伊藤氏)え~、泊まったんですか?
相澤)いえいえいえ。早いですねえ、でも。いつもこんなに早いんですか?
伊藤氏)いや、いろいろです。
相澤)まあ、きょうは緊急事態宣言の日ですから、特別だと思いますけど。
伊藤氏)いろいろ、早かったり遅かったり。え、泊まったんじゃなくて?
相澤)え~東京から、戻ってきてますけど。あのですね、財務省の方、ほかにも何人か知ってますけども、大体の方は、割と都心の近くに住んでらっしゃっる方が多くてですね。
伊藤氏)ええ。
相澤)ご出身は●●高校ですよね。てことは、このあたりがご実家だったんですか?
伊藤氏)まあ、実家も…
以下、個人的な話になるので割愛するが、こういう形でプライベートな話を重ねることで相手との距離感は縮まる。改めてお互いに名刺を交換し、駅から電車に一緒に乗って、隣り合って座りながらさらに話を続けた。途中、乗換駅で別れたが、この朝は終始、和やかな会話が続いた。私も昨夜のようにネタの話を突っ込んだりはしなかった。
伊藤氏も現状に不本意な思いを抱えているのだろう。それが赤木さんの前ではからずも示されたということではないかと思う。
白黒だった桜の色がよみがえった
赤木俊夫さんの「手記」を妻の昌子さんが公表し、国と佐川氏を提訴してから、昌子さんへの共感が大きな広がりを見せている。改ざんについて再調査を求めるキャンペーンサイトでの賛同者は29万人を突破し、30万人に迫る勢いだ。サイトの運営者によると、日本での最多最速の記録だという。
賛同者の募集は引き続き、以下のサイトで行っている。
励ましのメッセージも相次いでいる。
「多くの国民が権力と不正に対する昌子さんの勇気に注目しています」
「絶対に許せない!お辛いでしょうが、とことん頑張っていきましょう。国民の大半が応援しています」
そんなある日、昌子さんからLINEが届いた。
「住民票が必要なので区役所に行ってきました。2年前の3月30日、区役所に手続きに行き、横にある公園の桜が満開でしたが、不思議なことに桜が白黒に見えたんですよ!何回見直しても。花見をしている小さい子供もみんな白黒で。そうとう弱ってました。
今日は同じ桜見てきましたが、雨空だけどちゃんと桜色に見えました。プレッシャーは大きいけど援護射撃もあって強くなりました」
夫が亡くなった真相を知りたい。昌子さんの思いに大勢の人が共感している。それが今の昌子さんを支え、強くしている。
安倍首相、麻生大臣。それでも「再調査しない」という考えは変わりませんか?
#赤木さんを忘れない
【執筆・相澤冬樹】