Yahoo!ニュース

北朝鮮が中距離弾道ミサイルをロフテッド軌道で発射か

JSF軍事/生き物ライター
KCNAより2020年10月10日のパレードに登場した火星12中距離弾道ミサイル

 1月30日午前7時52分ごろ、北朝鮮がミサイル1発を日本海に向けて発射しました。韓国軍合同参謀本部の発表では北朝鮮の北部中央の慈江道(チャガン道)から発射されています。そして日本防衛省の発表によると最大高度2000kmまで上昇し、水平距離800kmを30分掛けて飛行、日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下しています。

 これは2017年5月14日に中距離弾道ミサイル「火星12」をロフテッド軌道(高く打ち上げる山なりの弾道)で発射試験した時の飛行性能の数値とほぼ一致します。今回も火星12の可能性が高いでしょう。

  • 2022年1月30日・・・高度2000km、距離800km、約30分 不明
  • 2017年5月14日・・・高度2111km、距離787km、約30分 火星12

 火星12は2017年9月15日の3回目の発射試験で最大高度800km水平距離3700kmを通常軌道で飛行した実績を持ち、グアムを射程に収めています。

 北朝鮮の今回の発射の意図はまだ分かりませんが、堂々と中距離弾道ミサイル(IRBM)を発射したことになるので、次は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射へとエスカレートする可能性が高まったと言えます。それはアメリカとの決定的な関係悪化に繋がる恐れがあります。

 今年に入って北朝鮮は7回合計11発のミサイルを発射し、うち弾道ミサイル相当が6回9発(極超音速ミサイル含む)、巡航ミサイルが1回2発となっています。

  • 1月05日朝 距離700km・高度50km 「極超音速ミサイル」
  • 1月11日朝 距離1000km・高度60km 「極超音速ミサイル」
  • 1月14日夕 距離430km・高度36km 「鉄道型イスカンデル」 ※2発
  • 1月17日朝 距離380km・高度42km 「北朝鮮版ATACMS」 ※2発
  • 1月25日朝 距離1800km 「新型長距離巡航ミサイル」 ※2発
  • 1月27日朝 距離190km・高度20km 「車両型イスカンデル」 ※2発
  • 1月30日朝 距離800km・高度2000km 種類不明 ※ロフテッド軌道

※巡航ミサイルについて国連安保理は北朝鮮の発射を禁止していない。

※短距離弾道ミサイルの射程を1000km以下とした場合、「極超音速ミサイル」の試験飛行はぎりぎり範囲内。

※水平距離800km・最大高度2000kmのロフテッド軌道の場合、通常軌道で飛ばすと仮定すると水平距離5000km級の能力を持つ、正真正銘の中距離弾道ミサイル。

(ク)中距離弾道ミサイル(IRBM)級弾道ミサイル

北朝鮮は、液体燃料方式のIRBM級弾道ミサイル(北朝鮮の呼称によれば「火星12」型)をこれまでに3発発射している。2017年5月14日には、飛翔形態から、当該弾道ミサイルは、ロフテッド軌道で発射されたと推定されるが、仮に通常の軌道で発射されたとすれば、その射程は、最大で約5,000kmに達するとみられる。また、北朝鮮が発射翌日に公表した画像には、液体燃料推進方式のエンジンの特徴である直線状の炎が確認できることから、当該弾道ミサイルは液体燃料を使用しているとみられる。

出典:令和3年版防衛白書 | 第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 > 第2章 諸外国の防衛政策など > 第4節 朝鮮半島 | 日本防衛省

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

JSFの最近の記事