【2022年シーズンの新人王が決定】

　現地時間の11月14日から全米野球記者協会（BBWAA）の記者投票による個人タイトルの発表が始まり、まず先陣を切って両リーグの新人王が発表された。

　ナ・リーグはブレーブスのマイケル・ハリス2世選手、ア・リーグはマリナーズのフリオ・ロドリゲス選手が受賞している。

　ハリス2世選手は全30人の投票者のうち22人から1位票を得て、2位に入った同じブレーブスのスペンサー・ストライダー投手に31ポイント差をつけて受賞した。

　ロドリゲス選手は30人中29人から1位票を獲得し、満票受賞は逃したものの2位に入ったオリオールズのアドレイ・ラッチマン選手に大差（80ポイント）をつけて受賞している。

　なお今回投票を担当した記者名や投票状況についは、BBWAAの公式サイトで詳細を公開しているのでそちらを参考にしてほしい。

【今シーズンから導入された特別ボーナス制度】

　今シーズンから新人王というタイトルが、選手たちにとってより深い意味を持つようになったのをご存知だろうか。

　今年3月にMLBと選手会で合意された新しい統一労使協約に盛り込まれた、年俸調停権取得前の選手を対象にした特別ボーナス制度により、MLBから多額のボーナスが支払われるようになったためだ。

　もちろん新人王対象選手は言うまでもなく年俸調停権取得前の選手なので、全員が特別ボーナス制度の対象者になっている。

　この制度により、新人王を受賞したハリス2世選手とロドリゲス選手に75万ドル、2位に入ったストライダー投手とラッチマン選手に50万ドルのボーナスが支払われることになった。

　ちなみに今シーズンの最低年俸額は70万ドルだったので（基本新人選手は最低年俸で契約している）、彼らは年俸に匹敵するかそれを上回る額のボーナスを手にすることになったわけだ。すでにチームと大型契約を結んでいるロドリゲス選手、ハリス2世選手、ストライダー投手にしても、今シーズンの年俸は70万ドルだった。

【途中昇格のハリス2世選手とラッチマン選手は1年間のMLB在籍日数も獲得】

　3位以下の選手も多少なりともボーナスを受け取れる可能性があるのだが（それについては後述）、2位までに入るのと3位以下では雲泥の差が生じてしまう。ボーナスのみならず更なる特典が用意されているからだ。

　それは新人王投票で2位以内に入った選手は、自動的に1年間のMLB在籍日数が付与されるというものだ。

　ロドリゲス選手とストライダー投手の場合は開幕メジャー入りを果たし、シーズンを通して26人枠に入り続け、自らの力で1年間のMLB在籍日数を獲得しているのでこの特典を得ることができない。

　だがハリス2世選手とラッチマン選手はシーズン途中でMLBに昇格しており、ハリス2世選手が得たMLB在籍日数は131日、ラッチマン選手は138日だったのだが、この特典により1年間のMLB在籍日数を得ることに成功している。

【マリナーズとガーディアンズは新たなドラフト指名権を獲得】

　特典はそれだけに止まらない。

　ロドリゲス選手は前述した通り、今シーズン初めて開幕メジャー入りを果たし、シーズンを通して26人枠に入り続けた。こうした選手が新人王投票で3位以内に入ると、所属チームにドラフト指名権（米メディアによると1位指名権に準ずる権利）が与えられるようになったのだ。

　またガーディアンズのスティーブン・クワン選手も、ロドリゲス選手同様に開幕メジャー入りから最後まで26人枠に残り、新人王投票で3位に入っているので、同じくガーディアンズもドラフト指名権を獲得している。

　つまり新人選手の起用の仕方次第で、今後はチームも恩恵を受けられるようになったというわけだ。

【MVPもしくはサイヤング賞受賞なら250万ドルのボーナス】

　繰り返しになるが、この特別ボーナス制度はすべての年俸調停権取得前の選手を対象にしており、MLB在籍日数が3年未満なら誰もがボーナスを獲得できるチャンスがある。

　最高額はMVPもしくはサイヤング賞受賞者に支払われる250万ドルだ。またMVPもしくはサイヤング賞投票で2位に入れば175万ドル、3位に入っても150万ドル、さらに4位、5位でも50万ドルのボーナスが用意されている。

　ちなみにMLBでは特別ボーナス制度のために5000万ドルのプール金を用意しており、個人タイトル関連で支払われたボーナスを除いた残り金額を、そのシーズンで活躍した上位100選手（MLB在籍日数やWAR指標で算出）に分配されることになっている。ただし個人タイトル関連でボーナスを受け取った選手は除外される。

　これまで年俸調停権取得前の選手たちはほぼ最低年俸で耐えなくてはならなかったが、シーズンの活躍次第で年俸額以上のボーナスを得られるようになったのだ。