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ローランギャロス(全仏テニス)2回戦で見せた、強い錦織圭が戻りつつある証左とは!?

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
ローランギャロス2回戦でツォンガを4セットで破って、3回戦に進出した錦織(写真/神 仁司)
ローランギャロス2回戦でツォンガを4セットで破って、3回戦に進出した錦織(写真/神 仁司)

 ローランギャロス(全仏テニス)2回戦で、第7シードの錦織圭(ATPランキング7位、5月20日付)は、2回戦で、ジョ ウィルフィールド・ツォンガ(82位・フランス)を、4-6、6-4、6-4、6-4で破り、5年連続で3回戦進出を決めた。

 錦織は、「打ち切れなかった」のが第1セットを落とした要因ととらえ、第2セット以降ツォンガのバックにボールを集めすぎないようにすることを心がけた。

「自分から伸びるボールを意識しました」

 また、この意識づけによって、2回戦では錦織の思い切りのいいショットが随所で決まるようになり、とりわけ錦織の最大の武器であるフォアハンドストロークで、安定した良いボールを打ち込めていた。

 それを象徴するシーンが、第3セット第3ゲーム30-40の場面だ。

 ツォンガは、主審から2回目のタイムバイオレーション(ポイントとポイントの間では、25秒以内にサーブのモーションを開始しなければならない)を受け、ツォンガはペナルティーによってセカンドサーブから始めなければならなくなった。

 すでに第3セット第2ゲームでブレークされていた錦織にとっては、ブレークバックをする好機。この重要な局面で、錦織はフォアハンドに回り込んで、ダウンザラインへのリターンを叩き込み、ウィナーを決めてブレークバックに成功した。

「(ツォンガの)ファーストサーブが強烈なので。大きなポイントでしたし、このチャンスを絶対生かそうという気持ちはあった。リスクはとりましたけど、思い切りいった結果が、ポジティブな結果につながったのかな」

 こう振り返った錦織のフォアハンドリターンは、“これぞ錦織のフォア”といったショットで、スピード、コース、深さ、ボールの回転量、どれも申し分なかった。

 かつてツォンガは、2012年2月に世界5位まで登り詰めたが、2018年4月にひざの手術をしたため7カ月以上戦列を離れた。そのため昨年11月にツォンガはATPランキングを262位まで落としたが、現在はトップ100にカムバックしてきている。

 錦織に対して、ウィナーを33本決めたツォンガだったが、ミスを50本犯し、さらにセカンドサーブでのポイント獲得率は45%にとどまった。復帰の過程にある今のツォンガからすれば、今持てる力は出し切ったといえる。

「ハイレベルな試合でした。僕は長い間こんないいプレーができなかった。僕からすれば上出来だった。今日は圭が、僕にとっては良過ぎたんだ」

「ファーストサーブの確率が低かった」と振り返ったツォンガだが、試合をとおしてのファーストサーブの確率は61%で、本人が言うほど悪くはなかった。

 だが、第1、2セットのファーストサーブのポイント確率が70%後半だったのに、第3、4セットでは60%前後に落ちてしまった。これは錦織のリターンの精度が試合後半になっていくにしたがって上がっていったといえる。

 結局、錦織は、少し多めの39本のミスをしたが、ツォンガ相手に攻撃的なプレーをしなければならなかったため許容範囲だろう。フォアのウィナー20本とバックのウィナー11本を含む合計35本のウィナーを決め、そして、ファーストサーブでのポイント確率は70%で高かった。

 力強いフォアハンドストロークが決まるようになってきたのは、強い錦織圭が戻りつつある証左だが、錦織自身がさらに貪欲になって、もっとレベルの高いテニスを見据える姿勢は好材料だ。

「まぁまぁですね。今の実力というか、その日の調子のテニスで、その日を戦わなければいけないですが、いい試合はできたのかなと思います。練習も、今週はいい感じでできていますし、あんまり大きな反省点というか、気になるところはないので。そういう意味では充実したというか、自信をもってどのショットも打てているのは比較的あるかなと思います」

 3回戦で、錦織は、第31シードのラスロ・ジェレ(32位、セルビア)と初対戦する。

 ラスロは、今年2月にATPリオデジャネイロ大会でツアー初優勝を果たし、4月には自己最高ランキング29位を記録した成長中の23歳だ。

「大きな武器は無いけど、しぶとそうなイメージはあります。サーブもいいですし、ストロークもしっかりしているかな」

 錦織の3回戦は、5月31日金曜日に行われる予定だ。初対戦の相手と戦う難しさは当然あるだろうが、今の錦織なら、ラウンドが上がるたびにもっといいテニスをみせてくれるかもしれないという期待感が持てる。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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