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IBFタイトルを失ったカネロ・アルバレス

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:ロイター/アフロ)

 サウル・”カネロ”・アルバレスの次戦が、9月14日に決まった。相手は、22戦全勝17KOのエドガー・ベルランガ。生まれも育ちもニューヨークという27歳のプエルトリカンだ。会場はネバダ州ラスベガス。

 ベルランガは、幼い頃から同胞のフェリックス・TITO・トリニダードに憧れていたそうだ。このプエルトリコの秘宝が、バルセロナ五輪の金メダリストとしてプロ入りし、スター街道を驀進していたオスカー・デラホーヤを下して一躍ボクシング界の顔となったのも四半世紀前の9月だった。

写真:ロイター/アフロ

 Septemberは、毎年ボクシング界でビッグマッチが催される。PPVでの放送があり、ファンも風物詩のようにメガファイトを心待ちにする。

 カネロ自身も、2013年のフロイド・メイウェザー・ジュニア戦、GGGとの第1戦が2017年、2戦目が翌2018年、第3戦が2022年、ジャーメル・チャーロ戦が昨年、そして今回と晩夏にファンを魅了してきた。

 目下、61勝(39KO)2敗2分アルバレスは、御存知のようにスーパーウエルター級、ミドル級、スーパーミドル級、ライトヘビー級と4階級を制し、2021年11月以降は、スーパーミドルの4冠王者として君臨していた。

写真:ロイター/アフロ

 しかし7月25日、IBFがカネロの王座を剥奪すると発表。同級1位のウィリアム・スカルと2位のウラディミール・シスキンに空位決定戦を設けるとした。同ファイトも9月にドイツで開催される予定である。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 IBFは、他の主要団体(WBA、WBC、WBO)よりも、王座を剥奪するケースが目立つ。去る5月18日にヘビー級で4本のベルトを統一したオレクサンドル・ウシクに対しても、指名挑戦者との戦いに応じないなら剥奪すると迫り、ウクライナ人チャンプは返上することを決めた。これを受け、9月21日にアンソニー・ジョシュアvs.ダニエル・デュボがIBF最重量級の空位決定戦となる。

 IBFは、昨年7月に注目を集めたウエルター級統一王者のテレンス・クロフォードからも11月にタイトルを剥奪し、暫定王者だったジャロン・エニスを正規王者とした。エニスは、クロフォードとの統一戦を望んでいるので、本末転倒といった感もある。

写真:ロイター/アフロ

 9月14日、カネロは、WBA/WBC/WBOスーパーミドル級タイトルを王者として、エドガー・ベルランガを迎える。ボクシング界はSeptemberに盛り上がる。もう少し、柔軟に統一王者を扱っても良いと思うが…。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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