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教員の超過勤務時間の削減を管理職研修で実現するという発想が、ちょっと危険だ

前屋毅フリージャーナリスト
(提供:イメージマート)

『南日本新聞』(9月21日付Web版)は、鹿児島市の原之園哲哉・教育長が「超過勤務時間の削減に向け、管理職研修会などで教職員の働き方改革への意識をさらに高める」と述べたと報じた。管理職研修で教員の超過勤務時間(残業)を削減するというのだ。

■教育委員会が把握しても超多忙の学校現場

 鹿児島市教育委員会(市教委)は、2020~23年度に残業が年360時間を超えた教員が小学校と中学校で、いずれも4割以上いたことを明らかにしている。この残業時間の多さを、20日の鹿児島市議会本会議で、3人の議員が質問した。

 教員の残業時間について、「月45時間、年360時間以内」とすることが、202年1月の改正給特法で「教員の業務量の適切な管理に関する指針」とされている。その「年360時間」を超す教員が、小中学校で4割以上もいたというのだから問題だ。

 ちなみに「月45時間」を超えて働いていた教員は、小学校で2割弱、中学校で2割強もいたという。「指針」を超えた残業が行われているのが実態なのだ。

 教員の残業時間については、教員らの校務用パソコンの起動と終了時刻で各学校が把握し、市教委に報告されているという。つまり、校務用パソコンを使用していない残業はカウントされていないことになる。教員の業務ではパソコンを使用しない場合も多いことから、実際の残業時間はもっと多いと考えられる。

 この多すぎる教員の残業時間が、市議会本会議で問題にされた。それに対する原之園教育長の発言が、冒頭のようなものだったというわけだ。「管理職研修会をつうじて残業時間を削減する」というのだが、ここには危険な要素がふくまれている。

 残業をしているのは教員なのだが、その教員への研修ではなく、管理職、つまり校長や副校長・教頭を対象とした研修で解消するとしている。残業時間を削減するために、管理職が「早く帰れ」とうるさく命じたり、仕事ができないように職員室の照明を管理職が消してしまう、残業時間の多い教員には個別に管理職が指導(説教)するといった話が数多く聞かれる。

 残業時間を減らすには根本的に業務量を減らすしかないのだが、「足し算ばかり」で教員の業務量は増えるばかりの現状では、管理職に解決を求めるのも無理でしかない。少しばかりの効率化をはかるための研修はできるかもしれないが、根本的に残業を減らす研修など難しい。結局のところ、早く帰らせるプレッシャーを研修によって管理職に強いるだけになりかねない。

 学校現場では、「早く帰れ」圧力ばかりが強まる。そうしたなかで教員の肉体的、精神的負担は、さらに重くなるばかりだろう。学校現場が「荒れる」だけで、子どもたちにも好ましくない環境が加速される。教育長の発言で、そういう動きが鹿児島市の学校現場で強まっていくことが懸念される。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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