「めちゃイケ」の素人三ちゃんこと三中元克さんは犠牲者か:芸人はいじめても良いが素人はダメと感じる心理
芸人と素人の違いのポイントは、「自己決定」。では、三ちゃんは?
■フジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!(めちゃイケ)」と三ちゃん
三ちゃんこと三中元克さん(25)は、素人として5年間も「めちゃイケ」に出演し続けている人気者です。前回のめちゃイケは、三ちゃん特集でした。そして以前から芸人にあこがれていた三ちゃんは、ついに吉本に入り、芸人になろうとしてます。
次回の番組では、三ちゃんがプロとして芸を披露し、番組に残れるかどうかは、視聴者の投票によって決まる!ということで、番組は盛り上がっています。
ただ三ちゃんは、その素朴さとドジっぷりで人気なのであり、彼が器用に漫才やコントができるとは、多くの人が思っていないでしょう。
バラエティー番組の中で、いつもイジられ、しごかれ、ドッキリを仕掛けられ続けてきた三ちゃん。これって、ひどいことでしょうか。
■みんなの意見
「なぜ「めちゃイケ」は素人・三中元克を5年間も使い翻弄し続けるのか?」と、弁護士の高橋維新さんはおっしゃっています。番組の中で、不当に彼の人格をおとしめ、才能もない人間を5年間も翻弄してきたのは問題だとおっしゃっています。ごもっともなことです(でも、才能がないと公言してしまうのもまた失礼かとも)。
ただまあ、そんなに難しいことを言わなくても、テレビのバラエティーなのだからという声も聞こえてきそうですが、テレビ関係者の方も発言しています。
高橋秀樹さん(日本放送作家協会・常務理事)のご意見です。「<バラエティ制作の倫理>素人・三中元克を追い詰める「めちゃイケ」は公開イジメか?」。このご意見も批判的ご意見ですね。テレビのバラエティーだからといって許されない、これは「公開いじめ」だと。
ネット上には、様々な意見があります。三ちゃん、大好き面白いという意見もあれば、大嫌いとか、面白くないと言う意見もあります。次回の番組で行う投票についても、「めちゃイケメンバーの“三中元克公開リストラ”に批判殺到」というニュースにもなっています。
賛成反対応援アンチ、どちらにせよこうして話題になって視聴率が上がれば、番組としては大成功でしょう。
■芸人はいじめてもいいけど素人はだめ?
以前、あるバラエティー番組のゲームで、動物が罰ゲームを受けるシーンがあって、視聴者の不評をかったことがありました。人間であるお笑い芸人は、もっとひどい罰ゲームを受けているのに、なぜ動物だと視聴者は不快に思うのでしょうか。
それは、動物が「自己決定」していないからだと思います。自己決定は基本的人権だと思いますが、心理学的にも大切な考え方です。自己決定感を持つことが、人間の幸福につながります。
芸人さんたちは、その職業を自分で選んでいます。イジられることをとても喜びます。芸人さんにとっては、正解して少ししかテレビに映らないよりも、不正解の罰ゲームでみんなに大笑いしてもらったほうが、「オイシイ」でしょう。
視聴者である私たちも、それがわかっていて、安心して笑います。本当に人が困っている姿を見て笑うのは、非人間的でしょう。素人のアクシデントビデオを見て笑えるのも、大した怪我はしなかったとか、本人も放送されることを了解して、それをユーモアとして受け入れているからです。
昔あったテレビ番組「ドッキリカメラ」は、素人をだましますが、素人が受け入れてくれる範囲内のことを行います。素人さんたちは、そのときはびっくりしますが、放映を許可し、良い思い出となる出来事になります。
では、三ちゃんこと三中元克さんは、どうなのでしょうか
■三ちゃんと自己決定
三ちゃんは、おもしろいです。さすが「めちゃイケ」関係者のみなさん、すごい素人を見つけました。並みの芸人や、ただの出たがりの素人では、こんなに笑いは取れないでしょう。三ちゃん自身の芸で笑わせているわけではありませんが、笑いを作り出す素材としてはすばらしいでしょう。
テレビ番組で有名になった素人はたくさんいます。素人としてテレビでトークしたり、恋をしたり、評論したり、鑑定したり、解説したり。有名になって、芸人になったり、ブロガーになったり、本を出したり、政治家になってしまった人もいます。本業の方がますます繁盛している人もいるでしょう。
有名になることは大きなリスクを伴いますが、上手く活用している素人もたくさんいます。中には、テレビに出たことを後悔している人もいるでしょう。でも、世間はテレビ局や番組を非難はしません。
三ちゃんは、何が違うのででしょう。
テレビにレギュラー出演する素人の多くは、器用な人が多いでしょう。または、まだ学生だったり、本業ですでにかせいでいる人たちが多いでしょう。けれど、三ちゃんは現在学生でもなく、他の仕事も持っていません。そして、器用どころか、とても不器用に思えます。番組内でも、からかわれる役まわりです。
三ちゃんは、ただ利用されているだけではないか、一生を棒に振るだけではないか、そう感じれば、三ちゃんかわいそう、テレビ局と番組はひどいことをしているとなるでしょう。
素朴な素人で人気が出た人としては、古い話ですが、フジテレビ「欽ちゃんのドンとやってみよう!」の「気仙沼ちゃん」がいます。方言で話す、気仙沼出身の女の子でした。この方は、現在では結婚され地元で民宿経営をされています。
三ちゃんも、女性で、素朴だけれどしっかりしたところがあり、家業を継ぐことになっていたりすれば、世間も心配はしなかったかもしれません。
それでも、三ちゃんも大人です。子どもでもないし、奴隷でもないし、詐欺でだまされているのでもありません。三ちゃんは自己決定していると思います。
三ちゃんを心配するのは、優しさからでしょうが、三ちゃんには三ちゃんの人生があるでしょう。番組の作り方や演出がひどいというのは、また別の問題ですが。
■自己決定と芸能界
自己決定とは、単純に自分が決めることではありません。金を出すか殺されるか、どっちがいいか、自分で決めろ。こんな風に言われてお金を出すのは、自己決定ではありません。
難しくて理解できない説明をされて、わからないまま、手術するかどうかを決めてくださいと言われても、そんなのはインフォームドコンセントの自己決定になりません。
自己決定できるだけの、心の落ち着きや理解できる情報が必要です。
自分が望み、出場者募集のオーディションに申し込んだのですから、自己決定でしょう。その後の活動で、番組に利用されているだけかどうかは、微妙です。
番組関係者が、彼の将来のことをまったく考えず、利用するだけなら、番組は道義的に非難されるべきだと思います。そうなのかどうかはわかりませんが、私は関係者一同がそんなに冷酷だとはあまり想像できません。
ある中学生アイドルと話したとき、彼女は芸能人がよく行く高校に進学したいと言っていたのですが、親やマネージャーは普通の高校へ行けと言っているそうで、勉強が大変だと語っていました。大人は、考えていますね。
AKB48のような活動も、ずっと芸能界でやっていける人は少数で、他の子達にとっては、部活動のような思い出作りや人生の経験の一つと考えている関係者もいます。
数年の芸能活動が、プラスになるかマイナスになるかは、本人や家族の考え方次第です。三ちゃんも、この先どうなるかは、誰にもわかりません。才能のある人が失敗し、才能のなさそうな人が成功することもあります。これからのことは、本人が親や芸能関係者のみなさんと相談しながら、決めていくことでしょう。
たしかに見ていると、危なっかしくて不安になりますが、がんばっている三ちゃんを応援したくもなります。
次回2月27日放送「めちゃイケ」は、「真冬にあせをかきまくれ 国民投票だよ全員集合 全力の生スペシャル」というとで、視聴者の投票によって、三ちゃんの番組出演が続くかどうかが決まります。
番組としては、投票がどちらになっても、それを笑いとし、視聴率アップにつなげていく準備と工夫をしているのでしょうが。三中元克さんも、器用に貪欲に番組を活用して、幸せな人生を歩んでほしいと願っています。
☆結論:三ちゃんの人生は三ちゃんが決める。三ちゃんは、自己決定しているから、OK。
*追記:視聴者投票の結果、なんと三ちゃんは不合格でした!