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藤井竜王「五冠挑戦」決めるか――第71期ALSOK杯王将戦リーグ藤井聡太竜王-近藤誠也七段戦展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
四冠を獲得し棋界序列トップになった藤井聡太竜王(筆者撮影)

 渡辺明王将(37)への挑戦権を争う第71期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社主催)は11月19日、東京都渋谷区「将棋会館」で挑戦者決定リーグ藤井聡太竜王(19)-近藤誠也七段(25)戦が行われる。

 王将戦リーグは定員7人、ここまで4連勝で首位を走る藤井竜王(王位・叡王・棋聖)は勝つと11月24日のリーグ最終局を待たずに五冠挑戦が決まる。近藤七段も3勝1敗の2番手と好調で、勝てば永瀬拓矢王座(29)、羽生善治九段(51)の3勝2敗グループにもチャンスが生じ、挑戦権の行方は混沌となる。勝敗と展開を、データを基に予想してみた。

データでは藤井竜王が圧倒

<藤井竜王の最近10局>(相手の肩書は対局当時)

10月8、9日 竜王戦七番勝負第1局

対豊島将之竜王 ○

10月11日 NHK杯

対深浦康市九段 ●

10月19日 順位戦B級1組

対郷田真隆九段 ○

10月22、23日 竜王戦七番勝負第2局

対豊島竜王 ○

10月30、31日 竜王戦七番勝負第3局

対豊島竜王 ○

11月3日 将棋日本シリーズ準決勝

対永瀬拓矢王座 ○

11月5日 ALSOK杯王将戦リーグ

対豊島竜王 ○

11月9日 ALSOK杯王将戦リーグ

対羽生善治九段 ○

11月12、13日 竜王戦七番勝負第4局

対豊島竜王 ○

11月16日 順位戦B級1組

対松尾歩八段 ○

<近藤七段の最近10局>

9月22日 ヒューリック杯棋聖戦2次予選

対松尾歩八段 ●

9月27日 NHK杯

対八代弥七段 ○

9月30日 順位戦B級1組

対稲葉陽八段 ○

10月5日 ALSOK杯王将戦リーグ

対羽生善治九段 ●

10月14日 ALSOK杯王将戦リーグ

対糸谷哲郎八段 ○

10月21日 順位戦B級1組

対久保利明九段 ●

10月29日 お~いお茶杯王位戦予選

対佐々木勇気七段 ○

11月2日 ALSOK杯王将戦リーグ

対広瀬章人八段 ○

11月11日 順位戦B級1組

対千田翔太七段 ●

11月15日 ALSOK杯王将戦リーグ

対永瀬拓矢王座 ○

 藤井竜王の直近10局は9勝1敗、敗れたのは持ち時間の短いテレビ棋戦のNHK杯1局のみだ。直近の竜王戦七番勝負も4勝0敗のストレートで奪取し最年少四冠の記録を更新、持ち時間各4時間の王将リーグではつけ入るスキはないように見える。

 調子を崩す要因があるとすれば、過密スケジュールによる疲労だが、19歳の若さなのであまり問題にならないかもしれない。

 対する近藤七段の直近10局は6勝4敗。永瀬王座ら難敵に勝っていてまずまずの調子だが、藤井竜王の数字と比べるとどうしても見劣りする。

 「勝負に絶対という言葉はない」と言われるが、データ上では本局で藤井竜王の五冠チャレンジが決まる可能性が高そうだ。

戦型は相居飛車角換わりが本命

 直接対決は5局あって藤井竜王が4勝1敗と勝ち越している。王将リーグは抽選時に先後が決定しており、本局は藤井竜王の先手だ。

 近藤七段が勝ったのは2019年2月5日の順位戦C級1組で、この時は後手の近藤五段(当時)が角換わりから研究を生かして藤井七段(当時)の攻めを受け止め制勝している。

 過去5局中4局が角換わりのため本局でも同様の戦型になる可能性は高く、先手番藤井竜王の選択で相掛かりに進むこともあるかもしれない。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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