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レブロン・ジェームスが声を上げ続ける理由とは? ダブルスタンダード発言をした女性キャスターへの思い

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
自分の意見を発信しつけるレブロン・ジェームス選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【声を上げ続ける米国人アスリートたち】

 4月下旬のことだが、本田圭佑選手がツイッター上で、日本のアスリートや芸能人に向け、政治や経済について自分の意見を発信して欲しいとう内容のメッセージを投稿し、注目を集めた。

 本田選手が「日本ほどアーティストや俳優(女優)やアスリートなどが政治のことを話さない国はない」と主張するように、米国では芸能人やアスリートたちが自分の意見を発信するのが当たり前の世の中になっている。

 彼らは普段から地域社会の慈善活動などに積極的に取り組み、社会に密着した存在になっており、下手な政治家よりも影響力を持っている。

 現在米国では白人警察官による黒人男性暴行死事件に端を発し、全国規模の抗議活動(中には暴動にまで発展)が巻き起こっているが、今もアスリートたちは声を上げ、時には抗議活動に参加する選手も現れている。

【その代表的存在はレブロン・ジェームス】

 その声を上げ続けるアスリートの象徴的な存在といえるのが、レブロン・ジェームス選手だろう。

 先日本欄でも報告しているが、NFL屈指の人気QBのドリュー・ブリーズ選手が、人種差別への抗議としてNFL選手らが続けていた国歌斉唱時に片膝をつく行為を疑問視する発言をし、彼のチームメイトを含め各所から反発を受けてしまった。

 もちろんジェームス選手も反発の声を上げた1人で、彼はツイッター上に、ブリーズ選手が片膝付き行為を始めたコリン・キャパニック選手の真意を理解していないとのメッセージを投稿している。

 こうした声に耳を傾けたブリーズ選手はすぐに謝罪を表明するとともに、インスタグラム上に「自分は完全に間違っていた。チームメイトや友人、ファンを失望させてしまった。今後はより良い行動をする。そして問題解決に向け一緒になって取り組んでいく」とのビデオメッセージを投稿している。

【ダブルスタンダードなメディアを批難】

 このブリーズ選手の件については、さらにジェームス選手を憤らせる出来事が起こってしまった。

 FOXニュースの女性キャスター、ローラ・イングラハム氏がブリーズ選手の発言に対し、「誰でも意見を持つ権利がある」と擁護する発言を行ったのだ。

 実はこのキャスターこそ、2018年にネット配信番組に主演し、トランプ大統領の政権批判を行ったジェームス選手とケビン・デュラント選手に対し、「政治的な発言は控えた方がいい。人によっては黙ってドリブルしていればいい(Shut up and dribble)と言いたい気持ちだ」と、アスリートが政治的な発言をすることを批判していた人物なのだ。

 この彼女のダブルスタンダードな姿勢に、ジェームス選手も即座に反応し、ツイッター上に以下のようなメッセージを投稿している。

 「あなたが今も抗議活動が続いている理由を理解できていないかもしれないので。自分たちがこうした行動をとっているのは、我々に対する扱いに心底辟易しているからだ。これ以上シンプルに説明する方法はないだろう。自分を信じてくれる人々へ、心配しないでほしい。変化が確認できるまで自分は止まることはない」

【インスタグラムに強烈なメッセージを投稿】

 さらにジェームス選手は、イングラハム氏から受けた非難発言である「Shut up and dribble」から始める、すべて文字だけで構成されたビデオメッセージをインスタグラムに投稿した。

 ドリブル音にともに上記のメッセージが映し出されると、その後「dribble」の部分が入れ替わり、「tackle(タックルしてればいい)」、「stand(立っていればいい)」、「get paid(金だけ受け取っていればいい)」、「just do your job(仕事だけしてればいい)などの言葉が続き、そして最後に「lay still(今も状況は同じ)」という言葉が点滅しながらドリブル音が終わる。

 その後テキストは切り替わり、「This is why we can’t just stick to sports.(これこそが、我々がスポーツに専念できない理由だ)」、そして「Do you understand now?(これで理解できたかい)」へと移行し、メッセージが締めくくられている。

 まさにイングラハム氏やメディアに向けた強烈なメッセージといえる。

 本田選手ではないが、自分も日本でジェームス選手のようなアスリートが現れるのを待ち望んでいる。だが彼らのメッセージは強力な力を持っている分、それだけの社会的責任を伴うことは覚悟して欲しい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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