【徴用工問題現地反応】もう日本対策は決めた?「現金化、運命の日」に…文在寅大統領は「休みの予定」。
韓国では「最大の関心事ではなくとも、4日から話題に」
2020年8月4日の0時が過ぎ、韓国での「徴用工問題賠償裁判」による「現金問題化」の実効期間が始まった。
昨日は日本と比べ韓国メディアが静かだった点を報じたが、4日午前から少しずつ韓国側もこれを報じ始めた。
国内最大のポータルサイト「NAVER」は、トップページのコンテンツ最上部「ヘッドラインニュース」欄にこの「現金化」のトピックスを入れた。国内では「文在寅政権の不動産政策失敗」などの話題の方が大きく扱われ、リアルタイム検索ではベスト10には入らない。ただ午後の時点で87媒体がこれを報じている。
各紙で論点は様々。「現金化まで行くだろう」「手続きがじつは煩雑」など
その論点は様々だ。今月11日に日本企業側の控訴期限が定められているが、保守系媒体の”中央日報”は「もはや現金化まで行くだろう」というスタンスだ。
「’日本製鉄 株式差し押さえ’……現金化までどんな手続きが?」
いっぽう革新系の「ハンギョレ新聞」は、手続きの複雑さを説明した。
「’徴用企業財産差し押さえ’今日から効力…現金化までは’深い山奥’」
被害者が賠償金を受け取るまでに時間がかかる理由を説明している。現状は「今年の5月1日、原告の代理人が、韓国大邸地方裁判所の浦項裁判所に差し押さえられた株式の売却命令の申請をしている状態」。
この後、裁判所による売却の決定、さらに韓国内の外部専門家に依頼しての株式鑑定、日本製鉄に対する審問書送達の過程がある。
「ハンギョレ新聞」はこのなかでも「日本製鉄に対する送達に時間がかかる見込み」としている。
韓国政府はもうすでに「日本からの報復への対応準備済み」
また「国民日報」は「【スクープ】韓国、日本の追加報復対応策の準備終える」という記事を掲載した。
韓国政府内の雰囲気を「最悪の状況に備えなければならないという雰囲気が強い」と伝えた。具体的には外交関係者のコメントとして「関税引き上げ、ビザ発給制限、金融制裁による被害は、韓国政府としても受け入れられる水準だと判断したようだ」と紹介した。
同紙は「3月か4月にかけ、対象企業(日本製鉄)の本件での損失を韓国政府が保全する案を日本側に提案したが、断られた」結果としている。
その対応策は「日本が関税引き上げとビザ発給制限に出てきた場合は、韓国側も同等の対応。輸出規制(ホワイト国除外)に対しては、(従来の方針通り)WTOへの提訴」としている。
細かい点は記されなかったが、大統領官邸、外交部(外務省)、企画財政部(省)、産業通産支援部(省)の関連部署が、今年の1月から話し合い、細かい対策を決めていうのだから、もはや「現金化」から「その後の日本からの処置」までも織り込み済みということか。
「韓国経済新聞」は「日本製鉄、即時控訴へ。”無視”で一貫してきた日本の戦略を変えるか?」と報じた。
韓国日報は「目には目を」以外の対応も出来ている、と
いっぽう、「韓国日報」もスクープとして「戦犯企業財産売却、日本2次報復予告に…政府”プランB"の準備を終えた」と報じた。
「2次報復」とは、昨夏の日本による「ホワイト国除外」以来2度めということ。現在も続く処置を日本側は「韓国側の輸出管理の問題」としたが、韓国では完全に「徴用工判決への経済報復」とされている。
内容はじつのところ、上記の「国民日報」と大きく変わるものではいが、日本側の処置の予想をより多く行っている。
ビザ制限、関税引き上げ、輸出規制処置強化、日本内の韓国企業財産差し押さえ、国内企業に対する金融制裁。
プランBの詳細は明らかにされなかったが、ビザや関税で「日本が行う処置をそのまま返す」ことが「プランA」であり、それ以外の対応が「B」ということだ。
その時、文在寅大統領は…「休み」のはずだった。2019年の夏は「対日問題で休みを返上」も
では昨日と今日、国家のトップたる文在寅大統領はどう動いているのか。「本来は7月31日からの休暇中だったが、国内の集中豪雨のために休日返上」というものだった。
文大統領の4日の公務の様子。豪雨対策に務めた。大統領公式アカウントより。
いっぽうでこの件に関しては、昨日夕方に大統領官邸関係者が記者との談話のなかでこう立場を表明している。
「差し押さえ手続きは裁判所によって進行すること」「青瓦台(大統領官邸)が司法的決定に立場を明らかにするのは適切ではない」
要は、「タッチしません」とこれまでの立場を繰り返したのだ。また、関係者は韓国メディアとの談話のなかでこういった内容も口にした。
「公示送達効力発生(3日までの期限)は追加的な処置ではなく、すでに先の6月に裁判所が決めていたこと」
とはいえ、意味深な分析を口にしたとも報じられている。
「裁判所が本格的な手続きに着手するとは解析しづらい」
2日間の動きを見るに、文大統領は今回の期限をほとんど気にかけていない。
前述の通り、昨日・今日は国内での集中豪雨の対応に当たったが、本来は「1週間の休暇中」のはずだった。31日の午後の仕事を終え、慶尚南道の梁山市で静養していた。平日となる3日月曜日から正式に1週間の休みを取る予定だったが、ソウル市内の通勤道路が遮断されるほどの大雨により休みを返上したのだ。
ちなみに1年前、2019年の夏の休暇時期にも「返上」があった。7月末のことだ。
理由は何かと言うと「日本の輸出規制の状況注視」。
つまり”ホワイト国除外”の状況を見守ろうということ。秘書官の報告を待ち、関係部署のトップとランチミーティングを行った。この時は対日関係が超重要事項だったが、今回はそうではない。もはや「現金化」「日本からの外構処置」ともに、流れに任せる姿勢にすら感じられる。あるいは昨夏、ソウルでの日本製品不買運動のデモの際に「独立戦争は出来なかったが、今、経済戦争は出来る」というフレーズを聞いたが、その態勢に入ろうとしているということか。勝負どころはこの先と見ているのだろうか。
8月は「日韓関係の岐路」と言われるが、一本目は真っ向勝負とはならなかった。この先、韓国のほうが大きくこだわる問題が出てくるのだが。