大学受験ならSNS断ちがお勧めできない~コロナで情報遮断は損をする
◆共通テスト終了でいよいよ受験シーズンへ
16・17日に初めてとなる共通テストが終了しました。
実施前、関係者の間では、コロナ感染で実施そのものの可否が心配されていました。
しかし、結果としては、ほとんどの会場で無事に終了となっています。例外は北海道と稚内。
北海道稚内市の1日目が悪天候で中止、対象受験生は全員、再試験。
それから、東京の会場で、鼻出しマスクの受験生が6度にわたる試験監督の警告を無視したことによる失格。さらには退去を拒否しトイレに4時間立てこもり、受験会場で逮捕。
後者は、マスク着用の是非を含め、大きな話題となりました。
※上記のリンクは1月18日公開の私の解説記事です。経緯を知りたい方はどうぞ。
なお、参考までに、会場全体で再試験となったのも、受験会場で受験生本人が逮捕、というのも、センター試験の実施以降では、どちらも初となりました。
さて、これで受験生は志望校を選択し、受験シーズンが本格化します。
◆例年ならSNS断ちで勉強に集中、でいいはずなのに
受験勉強に集中、ということで、TwitterやInstagramなどSNSをしばらく断とう、という書き込みも目立つようになりました。
例年であれば、SNSから遠ざかるのは悪い戦略ではありません。むしろ勉強に集中する、という点で、お勧めできます。
これが、今年に限っては、情報が入ってこない、という意味でお勧めできません。
友人とのやり取りはしばらく抑えめにする、という意味でのSNS断ちはいいでしょう。
しかし、情報をインプットする、という意味においてはSNSはしばらく維持する方が無難です。
その理由はコロナ感染リスクを避けるための受験内容の変更にあります。
◆コロナが元で受験が変わりすぎる
そもそも、大学受験の内容詳細は入試要項に出たら、そこから変更されることはありません。
戦後の大学入試史でも、入試直前に変更・中止となったのは1969年の東大入試(1月20日に中止決定)、それに2011年の東日本大震災による後期試験中止くらいです(東北大・横浜国立大・一橋大など、首都圏・東北の国公立大)。
以降、大学入試は入試要項に出た内容通りに実施されてきました。
ところが、今年はコロナの影響は大学受験にも及んでいます。
仮に、変更となった場合、大学はサイトで公表しますし、Twitterの公式アカウントがあれば、そちらでも発表するでしょう。
関連ニュースもSNSを凍結していなければ、入りやすくなります。
そのため、今年に限っては、SNS断ちはしない方がいいのでは、と考える次第です。
◆山口東京理科が中止、東京外国語は変更
昨年8月時点で、前期・後期試験を実施しない、と発表したのは横浜国立大学です。
教育学部以外の4学部は共通テストのスコアで合否判定。
教育学部のみ2次試験を実施しますが、対面式の面接に相当するリポート・動画の提出となります。
その後、昨年12月に、東京外国語大学と愛媛大学、福井県立大学が変更を発表しました。
東京外国語大学は2月25日実施予定の前期試験について、試験時間を圧縮。午前開始予定だったものを、午後1時スタートに変更し、外国語(英語)の試験時間を150分から90分と短縮しました。
愛媛大学は、教育学部や医学部の一部学科の2次試験で、グループディスカッションを中止。飛沫感染防止のためです。
福井県立大学は、例年、東京で実施していた2次試験を今年は中止としました。
東京の受験者数は例年150人ほどだが、担当者は「東京会場には関東や東北の受験生が集まり、その分、感染リスクが高まる。今後の状況が見通せないことから、判断した」と語る。
※読売新聞2020年12月20日朝刊「大学 安全な入試へ対策 新型コロナ 会場減らす 英語の発声中止」より
共通テスト実施前には、山口県にある山陽小野田市立山口東京理科大学が前期・後期とも個別入試の中止(共通テストスコアで合否を判定)を発表しています。
◆文科省は一覧サイトを公表
各大学の変更を受けて、文部科学省は本日20日から、変更一覧のサイトを作成、公表するようになりました。
ただ、まず、トップページ(「令和3年度からの大学入試」)からしてごちゃごちゃしており、かなりわかりづらいです。
文部科学省としては、受験生に対してだけでなく、大学や教育委員会など関連情報は全部、ということなのでしょう。
それはそれで大切かもしれませんが、整理されておらず、実に見づらいです。
「令和3年度大学入学者選抜実施要項等について」の項目の真ん中あたりに「令和3年度入学者選抜における新型コロナウイルス感染症への対応等に関する変更について」とあり、これが変更一覧になります。
1月20日公表時点では、「(令和3年1月15日現在)」とあり、これが随時変わっていく、ということでしょう。
便利と言えば便利です。
ただ、たとえば、横浜国立大学は昨年8月にすでに公表済み、ということもあり、掲載していません。
それと文部科学省サイトが掲載していないのは、変更を示唆している大学です。
◆広島大などは変更を示唆
入試要項では、大半の大学が、変更の可能性を示唆しています。
さらに18日に北海道大学は、大学サイトで、この点に改めて触れました。
今後、入学者選抜方法に変更があれば速やかにお知らせいたしますが、令和3年度学生募集要項(一般選抜)表紙に記載のとおり、新型コロナウイルス感染症の拡大状況によっては、学生募集要項記載の内容を変更して入学者選抜を行うことがあり得ることについて、あらかじめご留意ください。
※北海道大学サイトより
18日には広島大学が、さらに踏み込んだ内容を公表しています。
広島大学では、みなさんが安心して受験できるよう、体調不良者等のための別室を例年から3倍程度増設し、前期日程では約370名、及び後期日程では約250名が受験できる態勢を整備しています。また、例年、約3,000名が受験する東広島キャンパスでは医師・看護師が7名、約1,000名が受験する霞キャンパスでは4名の医師・看護師が待機し、例年に比べて医療スタッフを2倍に拡充しています。
(中略)
上記の「広島大学試験会場での試験実施ができないと本学が判断した場合の一般選抜(前期日程・後期日程)における選抜方法の変更について」(別紙)は、万が一本学を試験会場としての試験実施ができない場合に備えて、事前に出願期間の前にお知らせするものです。現時点ではあくまで予定どおり一般選抜(前期日程・後期日程)の試験を実施することとしております。 なお、選抜方法を変更する場合は、本学ホームページでお知らせします。
※広島大学ホームページより
広島大学は、もし個別試験を中止とする場合は共通テストのスコアのみで合否判定をするとのこと。
19日には、京都工芸繊維大学が、関連の告知を出しました。
入学試験は、受験生にとって人生を左右する大きな節目であり、大学にとっても入学者に求める能力・適性を測る極めて重要な行事です。また、屋内で実施することから感染リスクを完全に否定することはできませんが、実施日の変更が非常に困難なものです。本学では、たとえ緊急事態宣言が継続されたとしても、最大限必要とされる対策をとった上で、来る 2 月 25 日・26 日の一般選抜(前期日程)および 3 月 12 日の一般選抜(後期日程)の個別学力検査を学生募集要項で公表しているとおり実施する予定です。
※京都工芸繊維大学サイトより
「入試は大学にとって重要な行事」「緊急事態宣言が継続されたとしても実施予定」というメッセージは熱いものがあります。
ただ、その京都工芸繊維大学にしても、やはり、変更の可能性を完全に排除しているわけではありません。
ただし、今後の政府等が発表する内容などによって、大学キャンパスが使用できなくなるなど著しく状況が悪化した場合、やむなく変更する可能性がありますので、ホームページで通知する内容を注視願います。
※同上
北海道大、広島大、京都工芸繊維大の3校だけでなく、他の大学も同様です。
◆変更か、どうか、いちいち確認する必要あり
こうした変更は受験生からすればストレス以外の何者でもありません。
実施するかどうか、さっさと決めてくれ、と思うことでしょう。
仮に私が受験生であれば、全く同じ思いです。
しかし、今年のコロナ感染は、大学教職員にとっても初めての事態です。
しかも、過去20年間で数少ない変更・中止事例である東日本大震災とも大きく異なります。
東日本大震災のときは、震災により、大学によっては交通手段がストップしていました。それから、首都圏では大規模な停電があるとされていたなど、だれの目にも、入試の円滑な実施には無理があったのです。
その点、今年のコロナ感染は、非常に分かりにくいものがあります。
交通機関はすべて動いていますし、政府も現時点では受験生の移動を認めています。
感染が収まってくれば、入試の実施は例年通りとなるでしょう。
しかし、逆に感染がさらに拡大していった場合、入試の円滑な実施ができない、という可能性はゼロではありません。
私は医療の専門家ではないので感染が今後、収束するのか、拡大するのか、現状維持か、そのあたりはここでは言及しません。
※Yahoo!ニュース個人であれば、忽那賢志さん、市川衛さん、國松淳和さんなどが関連記事を書かれているのでそちらをどうぞ。それぞれ、専門家の知見を活かした、分かりやすい記事を書かれています。
問題なのは、大学経営幹部の方は、私と同様、医療の専門家ではなく、コロナの感染状況が読めない中で、入試の是非を判断しなければならないところにあります。
京都工芸繊維大学のリリースにあるように、大学からすれば、入試は重要な行事であり、入試問題は受験生へのラブレターと言ってもいいでしょう。
その機会を守るのか、それとも感染リスクを避けるために取りやめるのか、ぎりぎりまで判断が迫られます。
話を、入試変更情報に戻すと、文部科学省サイトは変更の可能性を示唆するだけの大学は掲載していません。
そのため、受験生やそのご家族の方は、今年に限ってはSNS断ちをせず、随時、情報を確認することをお勧めします。
なお、ここまで国公立大学について書いてきましたが、私立大学についても同様です。急な変更や、追試の実施など、色々考えられる、それが今年の入試です。