2位に6打差の単独首位が突然、棄権を余儀なくされた、コロナ禍ゆえの「青天の霹靂」
「帝王ジャック・ニクラスの大会」と呼ばれる米ツアーのメモリアル・トーナメント3日目を終えたとき、2位に6打差をつけて単独首位に立っていたのは、スペイン出身のジョン・ラームだった。
しかし、スコアカード提出から数分後、ラームと同組で回ったスコッティ・シェフラーは、スコアリングテントの中でラームが「とんでもなくイライラした様子だったので変だと思って声をかけた」。
すると、ダントツ首位のラームは、彼から9打差で4位タイのシェフラーに「じゃあ、明日、頑張れよな」と一言だけ返し、去っていたそうだ。シェフラーは驚き、「僕も『サンキュー、キミも頑張ってね』と言ったけど、変だなあと思った」。
ちぐはぐなやり取りになった原因は、このときラームがPCR検査で陽性と告げられ、棄権を余儀なくされたばかりだったからだ。
ラームは世界ランキング3位、米ツアー通算5勝の実力者。ディフェンディング・チャンピオンとして今大会に臨んでおり、悪天候で不規則進行となった第2ラウンドでは16番でホールインワンを達成し、観衆を沸かせた。
そして、3日目終了後に大差で単独首位に立ち、タイガー・ウッズに続く史上2人目の同大会連覇のチャンスに迫っていた。
そこへ来ての陽性反応、そして棄権となったことは「青天の霹靂」。ラームはもちろんのこと、他選手たちも大会やツアー関係者からも非常にショッキングな出来事として受け止められている。
【どんな経緯だったのか?】
ラームが棄権に至るまでの経緯を振り返ると、彼は5月末に濃厚接触者となり、米ツアーから経過観察下に置かれた。
この経過観察下になってからも、一定の条件下で試合に出ることはできるのだが、毎日のPCR検査が義務づけられる。
そして、ラームの検査結果は、毎日、陰性だった。しかし、第2ラウンドと第3ラウンドの間で受けたPCR検査で初めて陽性反応が出て、同じサンプルで再度検査したところ、やはり陽性。そのため、即座の棄権を余儀なくされた。
米ツアーによれば、「濃厚接触者になっても、ワクチン接種を済ませていれば、毎日のPCR検査は免除される」という。つまりラームはワクチン未接種だったということになる。
米ツアーの大会期間中に陽性となったのはラームが4人目。濃厚接触者の経過観察下の選手に陽性反応が出たのは、ラームが初となった。米メディアによれば、米ツアーにおける現在のワクチン接種率は「ほぼ50%」とのことだ。
ラームは今のところ無症状だそうだが、少なくとも6月15日までは隔離生活となり、17日から開幕する全米オープンへの出場は微妙なところ。
コロナ禍ゆえに起こった何ともやるせない出来事だ。