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Suchmos 熱狂の初横アリライヴ 「音楽の力を信じてるかい?俺らはそれだけでここに来たんだ」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/Shun Komiyama

押し寄せる、極上のグルーヴの波

11月24日、Suchmos初のアリーナ単独公演『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA』の初日を観た。終始極上のグルーヴの波に包まれ、その気持ちよさは圧巻だった。YONCE(Vo)、HSU(Ba)、OK(Dr)、TAIKING(Gt)、KCEE(Dj)、TAIHEI(Key)の6人が紡ぐ“囚われない音楽”とメッセージが、心と体に響いてきた。

Photo/Kayo Sekiguchi
Photo/Kayo Sekiguchi

今年、Suchmosは3月から自身最大規模、2万人を動員した全国ホールツアー『YOU'VE GOT THE WORLD TOUR』を行い、4月28日、パシフィコ横浜での最終公演のアンコールで、今回の初のアリーナ単独公演「Suchmos THE LIVE YOKOHAMA」を行うことを発表した。そして6月20日には、7曲入りのミニアルバム『THE ASHTRAY』をリリース。何にも、何者からも縛られない、自由な音楽を奏でていくという、改めてバンドとしてのスタンスを意思表示。明確なメッセージを送った。夏には、フジロックをはじめ、大型フェスに出演し、各地で熱狂のステージを繰り広げた。どんなステージであろうと、自分達の音楽を自分達の方法で、自分達が楽しみながら届けるという軸がぶれなかった。

初の横浜アリーナ単独公演のチケットは即完売、2日間で25,000人動員

そして横浜アリーナ。チケットは即完売し、2日間で25,000人を動員するショウの幕開けの合図は、地元・横浜での凱旋ライヴとなるYONCEの、喜びと気合を感じさせてくれる「横浜、おはよう!」という叫びだった。オープニングナンバーは「A.G.I.T.」。「YMM」はHSUのベースがうなりを上げ、太いリズムを作り出す。体を揺らしてそのリズムを感じる客席。HSUとドラムのOKのリズム隊が作り出す、この強烈な「うねり」が骨太なグルーヴを作り出す源泉であり、Suchmosの音楽に強烈な意志を纏わせている。

心から音楽を楽しみ、そして楽しませ、何度も何度も「ありがとう」と伝えるYONCE

Photo/Kayo Sekiguchi
Photo/Kayo Sekiguchi

この日のセットリストは、『THE ASHTRAY』からの曲を中心に、新旧織り交ぜたまさに、ベスト・オブ・Suchmosという構成だった。熱狂する客席に向けYONCEが「深呼吸してみ?」といって、一旦クールダウンさせたあとはTAIHEIが奏でる表情のあるピアノの音色が、セクシーで、ロマンティックな雰囲気を作り出す「Get Lady」で気持ちよくさせる。TAIHEIのピアノは、Suchmosの音楽をより芳醇なものし、その輪郭を際立たせ、聴き手に届ける。TAIKINGの歪んだギターと、リズム隊の太いリズムが体に響く「Fallin’」では、宇宙空間を映し出したような映像と音とが相まって、サイケデリックな世界観を演出。「BURN」では、メンバーがアイコンタクトを取りながら、セッションを繰り広げた。音楽の楽しさを感じさせてくれる、ライヴの醍醐味が、バンドの遊び心溢れるセッションだと思う。

KCEEのスクラッチから「STAY TUNE」のイントロが始まると、まだライヴの中盤ながら、もの凄い熱気に。「こんな最高の雰囲気なかなかないでしょ」と、一体感を体で感じたYONCEは、集まったファンに感謝の気持ちを伝える。この日YONCEは、何度も何度も「ありがとう」という言葉を、客席向かって、丁寧に届けていた。この日、この場所に自分達の音楽をわざわざ聴きに来てくれた、そして自分達の音楽を愛し、ずっと応援してくれているファンに向け、心からの感謝の気持ちを届けていた。

おなじみの曲はアレンジをガラッと変え、バンドとしての力&遊び心を見せる

Photo/Shun Komiyama
Photo/Shun Komiyama

続いて新曲が投下される。組曲的な構成の70年代のロックを思わせる、強烈なメッセージソングだ。観客は一音も、ひと言も聴き逃すまいと聴き入っていた。そして「Pacific」は、前回のツアーの時とは全く違うアレンジが施され、これがSuchmosの真骨頂だ。今やりたい、今日出したい音を自由にアレンジし、自分達も楽しむ。それがグルーヴとなって客席に伝わる。「Pacific」では、茅ヶ崎でサンセットを見ているような赤い夕陽の映像が、曲の終わりでは、夜空に輝く満天の星が現れる演出になり、その美しさに会場からはため息がもれた。そしてまるで星降る夜をイメージさせてくれるような、ロマンティックなイントロの「FUNNY GOLD」へと続く。TAIKINGの、メロディに寄り添うようなタッチの繊細なギターが印象的だ。そしてドラムがリズムを刻み始めると歓声が起きたのは、「MINT」だ。サビの「周波数~」では大合唱が起こり、力強く、でもメロウなこの曲が多くの人から愛されていることが伝わってくる。

“2018 NHKサッカーテーマ”「VOLT-AGE」は、熱量の高い歌と演奏で、よりスリリングに、より骨太に

「YOU’VE GOT THE WORLD」、「SNOOZE」から、KCEEが、これから迎えるクライマックスを予告するかのようなダンストラックを投入。客席のテンションをさらに上げ、そこからCMソングとしてもおなじみの「808」のイントロが流れると、アリーナ全体が揺れる。「GAGA」ではその揺れはさらに大きくなり、YONCEも音楽に身を委ね、体を揺らす。そして客席エリアに降りていき、観客とハイタッチ。本編ラストは「2018 NHKサッカーテーマ」に起用され、注目を集めた「VOLT-AGE」だ。スリリングな展開が、ライヴではさらに迫力が増し、YONCEのボーカルが熱量を上げていき、強烈なメッセージをぶつける。

「音楽の力を信じてるかい?俺らはそれだけで今日ここに来たんだ」

Photo/Shun Komiyama
Photo/Shun Komiyama

アンコールからは写真・動画撮影がOKになり、メンバーがステージに戻ってくると、無数のスマホがメンバーに向けられる。ここで、YONCEからファンとの約束だった、横浜スタジアムでのライヴを2019年9月8日に行うことを発表すると、大きな拍手が起こり、さらに春にはニューアルバムをリリースすることも発表された。そして「大好きな曲を演って終わろうと思います。この幸せな時間を共有できて幸せでした」というYONCEの言葉から、TAIHEIの美しいピアノのイントロが鳴り響き、そこにYONCEがオフマイクで歌声を重ねていく。「LIFE EASY」だ。6人の思いのこもった素晴らしいバンドアンサンブルを聴かせてくれ、TAIKINGの泣きのギターソロなど、聴きどころ満載だったこの曲では、約10分間のセッション。全ての演奏が終わった瞬間、『THE AHSTRAY』についてメンバーにインタビューした際の、KCEEの言葉を思い出した。「何かを想像してライヴに来てくれる人たちの想像を、遥かに超えるライヴができていると思います。自分たちも、日常では絶対感じる事ができない昂揚感を感じていて、でもそこでいき過ぎずに、粘って、音楽にだけきちんとアプローチするという、コントロールする方法もわかっている。攻めるところは全員で攻めていく事ができるし、そういう瞬間もバンドの強さだと思う」―――。こんなにも音楽は楽しくて、美しいものなんだということを、改めて教えられた気がした。

Photo/Shun Komiyama
Photo/Shun Komiyama

この日YONCEは、メンバーを代表して、数々のメッセージをファンに伝えていた。「腐らずやっていれば、必ずいい事あるよ。それを俺らが証明してやるよ」、「音楽の力を信じてるかい?俺らはそれだけで今日ここに来たんだ」――そう語るYONCEの後ろ、ステージ中央に掲げられた「Suchmos」のロゴが、とても誇らし気に見えた。誰にも媚びることなく、自由に音楽を楽しみ、そしてメッセージを届ける。そんな“しなやかな強さ”を手に、Suchmosはさらに自らの手で道を切り拓いていく――そう感じさせてくれたライヴだった。

Suchmos オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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