日銀の金融正常化は始まったばかり
日銀の植田和男総裁は23日、米ワシントンで「我々の金融正常化への取り組みはまだ始まったばかりだ」と述べた(24日付日本経済新聞)。
日本の金融緩和策の一段の正常化の適切な規模とタイミングを考え出すことが自分にとって最重要の関心事だと述べ、さらなる利上げ実施の考えを示唆した(24日付ブルームバーグ)。
「先行きの正常化の適切な規模が全体でどうなるかや、利上げ全体を時間的にどのように配分するのかについて考えている」とも発言があった。
植田総裁の発言は、追加利上げの適切なタイミングを日銀が探っていることを示したともいえることで、市場ではそのタイミングを見極める必要もあろう。
総裁は「高度の不確実性がある局面では、通常は慎重かつ漸進的に進めたいと望むものだ」と指摘した上で、「だが、ここでの問題は、非常に漸進的に進めて、金利がとても長い期間にわたって低水準にとどまるとの見通しを生じさせた場合、これが極めて大きな投機的ポジションの形成につながる恐れがあり、後々問題になりかねないという点だ」と説明した。
あまり慎重にすぎて漸進的(物事を徐々に進めていく)に進めた場合には、金利は容易に上がらないとの認識の上で、低利回りにもかかわらず、日本国債のロングポジションを増加させてしまう。そうなると実際に利上げが行われた際に、そのポジション調整によって日本国債が急落するといった事態が起きかねない。
市場には徐々に政策金利を引き上げていくことを示し、市場参加者はそれに応じたポジション調整を行う必要がある。
ここにきて米国債の下落にもかかわらず、日本国債の下げは限定的になるなどしており、市場は日銀の利上げについて、かなり慎重に進めるとの見方を変えてはいない。
長期にわたり、政策金利がゼロやマイナスに抑えられており、それが当然のようなノルムが市場参加者の間でも形成されていたとしてもおかしくはない。
政策金利はもっと引き上げるべきとみている私自身も、それでも政策金利の0.75%や1.00%までの引き上げはなかなか大変な作業となると思ってしまっている。
2%台の物価上昇期にあるなか、1990年近辺のように政策金利が2%を大きく超えて上昇してもおかしくはない。しかし、2%まで政策金利を引き上げることすらの予想ができないのは、長期にわたる低金利に慣れてしまっているためであろう。