一流現役アスリートが小学生を直接指導! Bリーグ滋賀が開校したユニークなスポーツスクール
【シーズンに合わせて様々なスポーツを体験できる】
Bリーグの滋賀レイクスターズ(以下、レイクス)が今年4月から、小学生を対象に新たなスポーツスクールを開校している。
正式名称は「シーズンスポーツスクール」。スポーツ競技のシーズン制が明確な米国をモデルにしたスクールで、シーズンごとに様々なスポーツを体験してもらうことを目的にしたものだ。
改めて説明しておくと、米国では季節によって各競技が実施されている。例えば米国の4大スポーツといわれるNFL(8~1月)、MLB(4~10月)、NBA(11~6月)、NHL(11~6月)もそれぞれのスポーツの特性を生かし、シーズンの開催時期を分けている。
これはプロに限らずアマチュアも同様で、そのためジュニア期から子供たちは1年を通して様々なスポーツを体験することができるわけだ。このシステムを日本でも取り入れようとしたのが今回のスクールだ。
【5~7月は陸上、レスリング、カヌーを体験】
同スクールは4月の体験期間を経て、5月から本格的にカリキュラムに突入している。第1期となる5~7月では、受講者は陸上、レスリング、カヌーを体験できる。
スクールは毎週木曜日に2時間実施され、通常は1時間ごとに分けてレスリングと陸上を行い、不定期で2回だけカヌー教室を開講することになっている(その理由は後述)。
レスリングといっても本格的なものではなく、主にマット運動やレスリングの基礎技術を体験するもので、受講者の小学生たちが笑顔で楽しめる内容だった。陸上も背走、四足走り、片足飛びを交えながらリレー競争を行うなど、受賞者たちが最後まで興味を持ってメニューに取り組んでいた。
今後の競技はまだ確定していないが、バスケ、卓球、ダンス(チアダンス)、フラッグフットボール等を予定しているという。
【指導者は一流現役アスリートが揃う】
同スクールの最大の特徴は、各競技の指導者を現役アスリートが務めている点だ。
まずスクールの代表講師に就任しているのが、ロンドン五輪の出場経験も持ち、女子棒高跳びの日本記録保持者である我孫子智美選手だ。さらにカヌーを担当しているのが、現在カヌー男子カヤックの日本代表で、来年の東京五輪出場を目指している新岡浩陽選手で、錚々たるメンバーが指導者に名を連ねている(新岡選手は代表活動があるため、その合間を縫ってカヌー教室を実施している)。
これはレイクスのユニークな運営スタイルだからこそ、実現できたものだといっていい。レイクスは株式会社と公益財団法人の両輪で運営されており、公益財団法人には我孫子選手、新岡選手をはじめ複数のアスリートが在籍しているほか、有望アスリートのサポートも行っている。こうした活動を最大限に活用し、他では真似ができないような豪華な指導者を揃えることができるのだ。
【様々なスポーツを楽しみながら基礎運動能力を養う】
我孫子選手は今回のスクールの意義を、以下のように説明している。
「小さい時にどれだけ色々な身体の動かし方ができるかで、この後1つのスポーツに絞った時にうまさというか、巧みさというか、そういうものは大きくなってからも努力したらできるんですけど、小さい時からできるのとでは大きく違うと思うんですよね。
なので、いろんな動きを覚えてもらうというのと、あとは楽しくないと続けられないので、そのどっちもうまくできるのがこのスクールの魅力だと思うので、その両方をうまくやっていければと思っています。
自分も試行錯誤している状態なんですけど、ゲーム性のものを入れつつ、でもちゃんと学んで欲しいところは学んで欲しいので…。子供たちがやりたいものと、こっちがやりたいことがうまくできることをやっていきたいというか、ある程度メニューを立てていますけど、緩くやれたらいいのかなと思ってます」
同スクールでは、教室終了後に毎回子供たちにアンケートを提出させており、そこで彼らの個人目標や好きなメニューを確認しながら次回以降の教室に反映させている。
【子供だけでなく指導者も刺激を受ける相乗効果】
一流現役アスリートたちから直接指導を受けられるのは、受講する小学生にとってこれ程貴重な機会はないだろう。だがその一方で、アスリートたちが自分の競技活動を行いながら、子供たちを指導するのは決して簡単なことではない。
それでも子供たちと触れ合う機会が、いい意味でアスリートたちに刺激を与えているようだ。
「(このスクール以外に)陸上スクールを始めることになって、2016年のリオのオリンピックがダメで、その冬から陸上スクールが始まりました。(リオを目標に)4年間今まで一番練習してきてダメだったので結構引退しようか悩んでいた中で、子供たちと接しながら純粋に楽しさというか、再発見というか、初心に戻れた経験がありました。
どうしても(競技そのものは)勝ち負けを求めてやっていかないといけないですしやっていくんですけど、そういうものではないスポーツの純粋の楽しさというのをスクールを通して自分が学べたりできてます。それが自分に返ってくるところでやり甲斐があります」(我孫子選手)
「自分として(競技を通じて)このくらいの年代の子供たちと触れ合う機会がゼロなんです。だから実際子供たちと話していてもめちゃ緊張していますし、どこまでの言葉が通じて、どこまでが理解できないのかを分からない状態でやっていますし、カヌーはマイナーだけあって英語で表現している部分も多いんです。上からは将来的にカヌースクールもやってみたいといわれているので、そこに向けた1つの経験という部分があります。
それとこの後実際オリンピック選手になっていくと、必ずカヌーのイベントなどに呼ばれたりする機会もあると思うので、そういった時に『この人カヌーしかできないんだ』という印象を与えるのではなくて、こうしたこともうまくやっていけるんだなと思ってもらえるようにはなりたいです。その点では本当にいい経験だと思います」(新岡選手)
指導を受ける子供たちばかりではなく、指導するアスリートたちにも好影響をもたらすレイクスのスクール。こうした活動が全国に展開していくことを願うばかりだ。