まさかの遺言書トラブル~遺言書には「決まり文句」がある
遺言には残す相手に応じた「決まり文句」があります。曖昧な表現はトラブルの元です。十分注意しましょう。
遺言書が相続トラブルに!
武田豊さん(52歳)は、自宅から車で1時間ほどの実家に行き、先月亡くなった母・浩美さん(享年87歳)の遺品を整理していました。すると、仏壇の引き出しの奥から丁寧に三つ折りにされた1通の便せんが出てきました。豊さんが早速開いてみるとなんとそれは遺言書でした。
遺言書
私の全ての財産を長男 武田豊に任せる。 令和6年2月3日 武田浩美 印
※全文自書で押印されているとします。
浩美さんの相続人は長男の豊さんと長女・朋美さん(47歳)の2人です。豊さんは直ぐに朋美さんに遺言書を見つけたことを電話で伝えました。そして、次の日曜に実家で会う約束をしました。
「任せる」ってどういうこと?
約束の日、朋美さんに遺言書を見せると、開口一番「『任せる』ってどういう意味かしら?」と言うではありませんか。豊さんは「『任せる』だから俺に全財産残すってことだろう」と言うと「そうかしら、『管理させる』という意味だと思うわ。とにかくお兄ちゃんに全財産が行ってしまうことには納得いかないわ」と言い残して帰ってしまいました。
果たして、浩美さんはどういった意図で「任せる」という言葉を書いたのでしょうか。浩美さんの遺影に尋ねても微笑みが返ってくるだけでした。
トラブルを避けるにはどうすればよかった?
遺言書に曖昧な表現を書いてしまうと遺言の解釈をめぐるトラブルを引き起こしてしまいます。代表的な曖昧表現は、「任せる」「贈与する」「委託する」「委任する」「あげる」「やる」といった言葉です。
遺言では次のように、相続人に財産を残す場合には「相続させる」を、相続人以外に財産を残す場合には「遺贈する」を結びの言葉にしてください。そうすれば、解釈の余地なくその人に財産を残すことができます。
・相続人に財産を残す場合・・・相続させる
・相続人以外に財産を残す場合・・・遺贈する
実際に遺言書を書く場合は、次の「穴埋め式遺言テンプレート」を参考にしてみてください。
1.相続人に財産を残す場合
第〇条 遺言者は、遺言者の有する次の財産を、遺言者の(続柄)( 氏名 )( 年 月 日生)に相続させる。
2.相続人以外の人に財産を残す場合
第〇条 遺言者は、遺言者の有する次の財産を、( 氏名 )( 年 月 日生)に遺贈する。
曖昧な表現は書いてはいけない!
ご説明したように、結びの言葉は、相続人には「相続させる」、相続人以外には「遺贈する」と書くようにしてください。「任せる」「贈与する」「委託する」「委任する」「あげる」「やる」といった曖昧表現はトラブルの元です。絶対に書かないようにしましょう。