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蕁麻疹治療におけるステロイド薬の役割:効果と副作用のバランスを考える

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【蕁麻疹治療におけるステロイド薬の効果】

蕁麻疹は、皮膚に突然現れる蚊に噛まれた後のような膨らみ(膨疹)とかゆみを特徴とする皮膚疾患です。急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹があり、多くの方が一度は経験したことがあるのではないでしょうか。この蕁麻疹の治療において、ステロイド薬の使用効果が注目されています。

最新の研究結果によると、抗ヒスタミン薬だけでは十分な効果が得られない急性蕁麻疹や慢性蕁麻疹の急性増悪に対して、ステロイド薬を追加することで症状改善が期待できることがわかりました。具体的には、蕁麻疹の活動性(発疹やかゆみの程度)が改善する可能性が高まります。

この研究は12の無作為化比較試験を対象としたメタ解析で、合計944人の患者さんのデータが分析されました。結果として、ステロイド薬を追加することで、蕁麻疹の活動性が改善するオッズ比は2.17(95%信頼区間:1.43-3.31)でした。

ただし、この効果は患者さんの状態によって異なります。抗ヒスタミン薬だけで改善する可能性が低い場合(17.5%〜64%)は、ステロイド薬の追加で14〜15%の改善が見られ、7人に1人が効果を実感できる計算になります。一方、抗ヒスタミン薬で改善する可能性が高い場合(95.8%)は、ステロイド薬の追加効果は2.2%程度と比較的小さくなります。

【ステロイド薬使用の注意点と副作用】

ステロイド薬は効果が期待できる反面、副作用にも注意が必要です。この研究では、ステロイド薬を使用した患者さんの約15%で副作用が見られました。主な副作用には、胃腸障害(胃の不快感、消化不良、嘔吐など)、頭痛、不安、疲労感、眠気などがあります。

副作用のオッズ比は2.76(95%信頼区間:1.00-7.62)で、リスク増加は14.8%でした。つまり、7人に1人が何らかの副作用を経験する可能性があります。

これらの副作用は、短期間のステロイド薬使用でも起こる可能性があります。そのため、ステロイド薬の使用を検討する際は、効果と副作用のバランスを慎重に考慮する必要があります。

蕁麻疹の治療においてステロイド薬は有効な選択肢の一つですが、その使用には慎重な判断が求められます。患者さんの症状の程度や抗ヒスタミン薬への反応性、副作用のリスクなどを総合的に評価し、個々の患者さんに最適な治療法を選択することが重要です。

参考文献:

1. Chu X, et al. Efficacy and Safety of Systemic Corticosteroids for Urticaria: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials. J Allergy Clin Immunol Pract. 2024;12(7):1879-1889.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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