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膿疱性乾癬の最新治療2024年版|生物学的製剤の効果と安全性を徹底解説

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
Ideogramにて筆者作成

汎発性膿疱性乾癬(GPP)は、突然全身に無菌性の膿疱が出現し、重症化すると命に関わる可能性のある稀少な炎症性皮膚疾患です。

報告されている死亡率は4%から24%と幅があり、適切な治療が必要不可欠な疾患といえます。

この病気では、体中に痛みを伴う赤い発疹が出現し、その上に膿疱が多数形成されます。放置すると膿疱が融合して膿の湖のような状態になることもあります。

【生物学的製剤による治療効果の詳細】

従来の治療では、レチノイド(ビタミンA誘導体)、シクロスポリン、メトトレキサートなどが使用されてきましたが、副作用が強く、重症例では効果が不十分なことがありました。

そこで注目されているのが生物学的製剤です。これは、体内の特定の炎症を引き起こす物質だけを狙い撃ちにする治療薬で、大きく分けて4種類あります。

1. IL-36阻害薬:最も早く効果が現れ、2週間以内に40%の患者さんで症状が75%以上改善します。

2. IL-17阻害薬:効果の発現はやや遅いものの、8週から12週かけて着実に改善が見られ、長期的な効果が期待できます。

3. TNF-α阻害薬:中程度の効果を示し、約30%の患者さんで8週以内に症状が改善します。

4. IL-23阻害薬:効果の発現は緩やかですが、長期的な再発予防効果が高いとされています。

【再発率と長期予後の詳細分析】

52週間(約1年間)の経過観察では、薬剤によって再発率に興味深い違いが見られました。

・IL-23阻害薬:再発率5%(最も低い)

・IL-17阻害薬:再発率15%

・TNF-α阻害薬:再発率20%

・IL-36阻害薬:再発率21%(最も高い)

IL-36阻害薬は即効性に優れる一方で、長期的な再発予防にはIL-23阻害薬やIL-17阻害薬の方が適している可能性があります。急性期の重症例にはIL-36阻害薬、長期的な管理が必要な症例にはIL-23阻害薬やIL-17阻害薬を選択するなど、患者さんの状態に応じた使い分けが重要です。

【安全性と副作用の包括的解析】

生物学的製剤による治療を受けた329名の患者さんのうち、約75%に何らかの副作用が見られましたが、その多くは軽度で管理可能なものでした。

主な副作用の内訳:

・感染症:20.4%

・皮膚や皮下組織の異常:16.1%

・注射部位反応:12.5%

・粘膜の乾燥:12.2%

重篤な副作用の発生率は薬剤別に以下の通りです:

・IL-17阻害薬:4%

・IL-36阻害薬:5%

・IL-23阻害薬:6%

・TNF-α阻害薬:14%

この研究の特徴として、329名の患者さんのうち約70%がアジア人(主に日本人を含む)であることが挙げられます。欧米人と比べてアジア人に多い疾患とされており、日本人患者さんの治療選択に特に重要な示唆を与える研究といえます。

遺伝子変異との関連も調査されており、特にIL36RN遺伝子の変異が22.3%の患者さんで確認されています。この遺伝子変異は、特に若年発症の患者さんで多く見られることが知られています。

今後の研究課題として、各薬剤の長期的な効果や、特定の患者群における効果の違いなどについて、さらなる検討が必要とされています。

参考文献:

Chen B-l, Liu Q-w, Dong X-w and Bai Y-p (2024) Biologics for generalized pustular psoriasis: a systematic review and single-arm meta-analysis. Front. Immunol. 15:1462158. doi: 10.3389/fimmu.2024.1462158

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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